“見本市ビジネス”が見直される中、国際文具・紙製品展(ISOT)も年々、規模の縮小が指摘されてきた。だが一方で、文具ファンからの注目度は増し、中小の文具メーカーによる新しいアイデアや、ずっと作り続けてきた製品などの紹介の場として、面白いイベントに変貌してきている。そんな2019年のISOTで、筆者が面白い! と目を止めた製品を紹介していきたい。
1.台湾の注目万年筆ブランドから登場したプレミアムなシャープペンシル
長らく著名な筆記具ブランドのOEMを担ってきた台湾メーカーが立ち上げた、万年筆を中心にした筆記具ブランド「TWISBI(ツイスビー)」が、初めてISOTに出展。独自のインク吸入機構を持つ万年筆や、インク吸入機構内蔵式ながら5000円台で買えるモデルなどで、数年前から注目されているブランドだ。
ブースでもメインの展示は「エコ」「ダイヤモンド」「ゴー」といった定番万年筆が中心なのだが、ボールペンやシャープペンシルも展示されていた。そのシャープペンシルが、とても良い物だったのでここで紹介しておきたい。
シャープペンシルは樹脂軸のタイプと金属軸のタイプの2種類を展示。どちらも鉛筆のような六角形の軸が印象的な、大人向けの製品に仕上がっていた。中でも樹脂軸のシャープペンシルは、ラバーが貼られたグリップ部分がとても握りやすく、また筆記時のウエイトバランスが良好なため、書いていて疲れにくい。ステッドラーの製図用シャープペンシルをカジュアルにしたようなデザインも好印象。軸色はブルー、マーマレード、ホワイトの3色、芯は0.5mm、0.7mmの2種。
2.コンクリート製なのに侘び寂びを感じさせる茶器のようなペンスタンド
色鮮やかなシリコンを使った小物で知られるピージーデザインが2016年から始めたプロジェクト「蔵前コンクリート」は、コンクリートという素材の質感や触り心地に着目したブランド。
コンクリート製の小さなペンホルダーとコンクリート軸のボールペンをセットにした製品で、今年の日本文具大賞を受賞したのだが、筆者が注目したのは、まるで湯飲みのような形のペンスタンドの方だ。つるりとした外観と触感はコンクリートそのものなのに、武骨な印象が全くないデザインがとても面白い。
普段目にする事は多いもののあまり触ることのないコンクリートを、徹底して角をなくした丸みを帯びたデザインに仕上げ、外側と内側の色を変える程度の最小限のデザインを施して作られたペンスタンド。素材からくるクールさと形の柔らかさが、上手い具合にバランスを取っていて、良くできた茶器を思わせる。
良い湯呑みをペンスタンドとして使うような感覚で、こういう“侘び寂び”が良い方向に作用した製品というのは意外に少ないのではないだろうか。これに挿す筆記具は、トンボ鉛筆の「Zoom 砂紋」がぴったりだ。