【きだてたく文房具レビュー】超速乾性をもつ筆ペン
かつて一時期、ノートをとるのに太字の筆記具を使ってみよう! とあれこれ試していたことがあった。サインペンや油性マーカー、クレヨンなど、手当たり次第である。使ってみると、それぞれに「面白いところ」「ノートに向かないところ」がはっきり見えてきて興味深いトライアルだった(最終的にサインペンに落ち着いた)のだが、中でも使って楽しかったのが、筆ペンだった。
筆ペンと言えば、ほとんどの人が年に一度、年賀状で使うぐらい……という程度の使用頻度だろう。しかしこれが、アイデアスケッチや議事録に使うと、意外とスピーディーにさらさら書けるし、強弱もつけやすいので紙面にインパクトが出る。なるほど、筆ペンはもうちょっと普段使いしてもいいかもな-、と思わぬ再評価となったのだ。
ただ、問題なのは「乾かない」という一点。
筆ペンって、いつまでたっても乾かない。筆先からたっぷりインクが出るので、とにかく乾燥に時間がかかる。その間にうっかり筆記跡に触れようものなら、手に黒々としたインクがべったりついたり、擦れてそこらを汚したり、隣のページに移ったりと大変なのである。なるほど、筆ペンはこういうところが普段使いに向かなかったのか、と再確認だ。確かに年賀状を書くときも、ハガキを汚さないように気を遣うもんな。
ところが、つい先日パイロットから発売された新しい筆ペン「瞬筆」は、その乾燥時間がたった1秒というのである。えー、マジで?
乾燥1秒!の爆速筆ペン
ということでまず入手してみたのが、普段使いにも使えそうな「瞬筆 小筆タイプ」。樹脂チップを搭載した、いわゆるサインペンタイプの筆ペンである。
この小筆は、毛筆に近い書き味の「やわらかめ」と、“とめはねはらいが可能なサインペン”というような使い心地の「かため」の、2種類がラインナップ。
「やわらかめ」の筆先チップはかなりふわふわなので、毛筆を使い慣れている人向き。「かため」は同社の入門用筆ペン「筆ごこち」寄りのテイストで、チップの弾力を活かして誰でも手軽に筆っぽい文字が楽しめるため、宛名書きから普段使いまで万人向けで使いやすいと思う。
それよりも気になるのは、例の「乾燥時間1秒」というのが本当か?というところ。書いてみると、筆先チップを紙に置いた瞬間にたっぷりとインクが出て、紙面もぬらっと濡れた感じになる。ところが、「うーん、これは乾かないだろ?」の「うーん、これ…」ぐらいまで思ったところで、インクの濡れた感じがスッと紙に吸われたように消えてしまったのである。
えっ!?と慌てて筆記跡を指で撫でてみると、インクがまったく指に付かない。これは……乾いて……るなぁ……。あれだけインクたっぷりに書いたのに、本当に乾いてるぞ!
「乾燥1秒」とは言うものの、筆は一画一画をわりと丁寧に書くので、文字の書き終わりにはもうすでに乾燥が終わっている感じ。つまり体感としては1秒どころか乾燥時間ゼロである。
秘密は新開発の速乾インクとのことだが、書き味やインクフロー、筆跡の黒々とした感じまで、書いてすぐ乾く以外は従来の筆ペンと比べても全く違和感がない(いや、この爆速乾燥は違和感以外の何ものでもないが)。つまり、買い替えてもメリットしかないやつなのだ。
「筆ペンは乾くのに時間がかかる」というのが当たり前のように思っていたが、その乾燥を待たなくていいだけで、ここまで気持ちよく使えるとは思ってもなかった。筆ペンという地味なジャンルなのでどうしても注目度は低いが、これ、もしかしたら2019年のベスト・イノベーション文房具として挙げてもいいレベルな気がする。
こうなると、同時に発売された毛筆タイプの「瞬筆 本格毛筆」はどうなのだろうか? がぜん気になってくる。
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毛筆タイプも爆速乾燥
毛筆タイプは中字と細字の2種。中字は宛名書きに、細字は手紙の本文に使いやすい太さになっている。こちらも書き味は従来の毛筆タイプ筆ペンと変わらないが、サラサラっと書いて筆を止めると、スッとインク溜まりが消えて乾いてしまう。一画書く、スッ(乾燥)、一画書く、スッ(乾燥)と次々に乾いていくので、中字筆でも実質的な乾燥待ちが発生しない印象だ。
ハガキや和紙便せんなど紙も選ばずあっという間に乾くので、使いやすいことこの上ない。本当にストレスフリーだ。時期的にまずは暑中見舞いに使いたいし、なにより筆ペンの本番となる年賀状シーズンには絶対に話題になるはず。これまでに一度でも筆ペンでハガキや手を汚したことがある人なら、とにかく急いで買っておくべし。
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