毎年夏にビッグサイトで開催されている国際文具・紙製品展、通称“ISOT”は、国内で最も注目度の高い文房具の展示会である。第31回となる今年は、コロナ禍のために開催自体危ぶまれたのだが、延期を経て、なんとかこの9月2日~4日という会期で無事に開催される運びとなった。
ただ、やはり出展メーカー数は大幅減。さらに海外ブースもゼロということで、例年と比べてもかなりコンパクトなイベントになってしまったのは、仕方のないところだろう。
それでも、他の展示会が軒並みリモート開催となっていたところに、ようやくのリアル展示会である。筆者としても、テンション高めでいろいろと注目の新製品を見つけてきたので、ご覧いただきたい。
1. 紙を自由に綴じられる新型ノート
まず興味を惹かれたのが、印刷会社の研恒社が新たに立ち上げたノートブランド 「PageBase(ページベース)」の「Slide Note」である。
“リングレスなルーズリーフ”を謳うこのノートは、金属クリップを用いたスライド式で、リング穴のない紙も、自由自在に挟んでノート化できるのが最大のポイントだ。
ノートのノド側(綴じられている側)にあるプラスチック製のフレームを、グイッと引いてスライドさせることによって、2個の金属クリップが開放。これで紙の抜き差しが自由に行えるようになり、フレームを戻せば、綴じた状態となる。
仕組みは、書類などを挟んでまとめる金具スライドクリップとほぼ同様のものだが、それをノートとしてまとめるために使う発想は新しい。(金属クリップを使わないレールファイルなどは、これに近い使い方も可能だ)
ノート用紙は、専用のオリジナル用紙オーダーシステム「Paper&Print」を通して、紙や罫線などを自在にカスタマイズできる、というのも面白い。方眼や横罫の罫幅なども選択可能なので、既存の製品にはなかったようなオリジナルノートも構成可能だ。
さらに、プリントアウトされた資料や他から切り離したメモなども、ノートと一体に綴じることができるので、ファイル兼用ノートとしてかなり運用幅の広い使い方ができそうだ。ちょっとページが足りない……なんて時は、手近なコピー用紙を挟んでしまえばそれで済む。
ただ、現状で出展されていたプロトタイプ(発売は年末の予定)を触ってみた感触としては、現状では綴じ枚数が少ないときのクリップ力不足や、スライドパーツが硬すぎてややページが開きにくいなどの課題は感じた。
それがいずれ解決されるようであれば、もしかしたら新しいノートのジャンルとしてちょっと面白い広まり方をするかもしれない。個人的には期待大の製品である。
2. バスで自分の絵を飾ればアーティスト気分?
もうひとつ紙モノで面白かったのは、店舗の紙什器やディスプレイのメーカー、太陽マークの「Fravas」。Frame(額)+Canvas(キャンバス)でFravasというネーミングである。
ベースとなる部分に絵を描いて、あとは箱状になるように組み立てれば、キャンバス風のアートボードが完成するというもの。
例えば、子どもが画用紙に描いた絵を部屋に貼って飾ろうか、なんてシーンは家庭でもよくあることだろう。そういう場合、だいたいは画用紙をそのまま画びょうやテープで壁面に貼るだけになりがちだが、それだとあまり見栄えがしない。とはいえ、額装までするのは大げさだし……。
ところが、描いた絵がキャンバスのような厚みのあるボードになるだけで、不思議とアートっぽさが大幅アップ。見た目もグッと立派になるのである。これは子どもに限らず、大人もテンション上がること間違いなしである。
組み立ては切り取り線から切り出して、折った部分を付属の両面テープで固定するだけとかなり簡単だ。ハサミやカッター、のりなどのツール類は一切不要。飾る場合も、裏面に壁掛け用の穴があるので、画びょうや壁面フックにひっかけるだけでいいし、スタンドを組んで装着すれば立てて飾るのもOK。至れり尽くせりだ。
紙自体はかなり厚手でしっかりとしているので、クレヨンでも貼り絵でも画材を選ばず、どうとでも使えそう。ただ、ザラッとした“目”の感じられる紙質は、水彩や色鉛筆画だと風合いが出て相性が良さそうだ。なにより、平面で展開図状態の紙に描いてから組むので、最初から厚みのあるカンバスよりも描きやすいのがいい。
仕組みは非常にシンプルだが、手軽にアーティスト気分を味わうにはなかなか面白い画材だと思う。
3. パキッと折って寝かせるとツールスタンドになるペンケース
主にバッグなどのOEMを手がける高波クリエイトが、自社ブランドとして発売しているオフィスツールブランド offistaの新製品として紹介していたのが、「Paccy(パッチー) スタンドペンケース」だ。
なんとなく牛乳パックを思わせる四角柱のセミハードタイプペンケースで、基本的にはジッパーを開けてから真後ろに折るようにフタを倒せば、自立型のペンスタンドとして使うことができるというもの。
それだけだと「あー、なんかそういうの、もういっぱい出てるよねー」くらいの印象なのだが、これが面白いのは、寝かせて使うことも想定されているというところ。
そして、開けたフタ側を下になるようにして横倒しにすると、ほどよく角度がついたツールスタンド風に早変わり。
この角度+横倒し状態のおかげで中の閲覧性も高まるし、試しに触ってみた感じでは、筆記具の出し入れが立てた時よりもスムーズだ。自立型ペンケースの難所である消しゴムなどの小物は、フタ裏のメッシュポケットに収納するように作られている。
ちなみに、同メーカーの製品としては、昨年のISOTで展示されていた「Me:kuruto(メクルト)」も、個人的にちょっとお気に入り。もし店頭で見かけることがあれば、これも手に取ってみて欲しい。
こちらは、本体を上からクルッとめくり降ろすと自立するスタンドペンケースなのだが、巾着袋のようにヒモで口を絞って閉める機構が、かなりユニーク。和小物っぽいシルエットで、かわいいのだ。
4. 描いて消せるシリコンメモがさらにシリーズ拡大
コスモテックの書いて消せるシリコン製メモ「wemo」は、腕に巻くバンドタイプや、 ノートPCなどに貼れるパッドタイプなど、すでに様々なシリーズが出ているが、今回はさらに新展開。
「さほど重要でないメモはサッと消しちゃおうぜ」という方向性を押し進めた「wemo Stock & Flow」シリーズと、情報をタグ付けする「wemo TAG」シリーズの2つ(どちらも非シリコン)が新たに紹介されていた。
「wemo Stock & Flow」は、ベースにPP合成紙……おなじみユポ紙などと同じ、ポリプロピレン製の樹脂ペーパーを使い、フリクションボールなどで書き込んだものを、消しゴムでこすったり水拭きしたりして消せるような仕様となっている。
なぜフリクション推奨かというと、おそらく紙面への浸透性の問題だろう。実際、熱で消すのではなくインクそのものを表面から拭き取っていたし。最終的にはゲルボールペン全般に対応できるようにしたいんだけど……という話も、現地で耳にした。
このシリーズで面白かったのは、シールタイプ。こちらは手帳やノートの表紙裏に貼って、何度も書き消しできるメモスペースとして使えるというもの。聞き取った電話番号やメールアドレスを一時的にメモるなど、再利用する確率の低い情報はここに書いて、いらなくなったらすぐ消して、というのが主な活用になるだろう。
このシールタイプ自体も貼り剥がしができるので、手帳を乗り替える際にはこれも一緒に連れて行くことができる。
「wemo TAG」は、ポリカーボネート製のハードタグ。油性マーカーなどで書き込み、再利用するときは消しゴムで消せるシリーズだ。
貼れるプレートはファイルボックスに貼って分類整理などに。フックで引っかけられるタグは、観葉植物の名前を書いて鉢にぶら下げたり、スナックでボトルキープするのに使ったりするのもありだろう。
ほんのちょっとした情報を掲示するのに最適といった感じで、用途の幅はかなり広そうである。
「きだてたく文房具レビュー」 バックナンバー
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