「用途に合わせてボールペンを使い分けよう」と聞いてピン! ときた人は、“文房具リテラシー”がとても高い人だと思う。
もちろん、基本的にはお気に入りの書き味のペンが1本あれば充分なのだが、例えば、手帳に細かくみっちり書き込むには極細かつ、滲みにくいペンが便利だ。場合によっては多色が欲しいし、消せた方が便利かもしれない。対してハガキの宛名書きをするなら、太めでサラサラ書けるものがいいし、インクの耐水性も気になるだろう。
こういった用途すべてをお気に入りの1本でまかなうというのは、やっぱり難しい。だって、求められる要素がまったく異なるから。
といっても、その様々な用途にそれぞれ対応できるペンがある、という状況自体がごく最近の話。ひと昔前であれば、ボールペン=もったりした油性インクでボール径も0.7mmのみだったし、それですべての筆記作業をこなすのが普通だったわけで。
つまり、近年のボールペンの進化というのは、ざっくり言えば「環境に合わせた細分化」であり、「機能の先鋭・専用化」と言える。であれば現代において、ボールペンは用途によって使い分けたほうが便利、というのはご理解いただけるのではないか。
超極細字専用ボールペン「ジェットストリーム エッジ」が待望の多色化!
で、その機能の先鋭化した最先端のひとつとして挙げられるのが、三菱鉛筆から2019年末に発売された「ジェットストリーム エッジ」だろう。お馴染みの低粘度油性インクで0.28mmの超極細字がサラサラ書ける、まさに“すごく細い線を書くための専用ツール”である。
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発売された当初は、その機能的なトンガリ具合に驚いたものだが、そこから1年も経たないうちに登場した多色タイプの「ジェットストリーム エッジ 3」(以下、エッジ3)に、また驚かされたのである。これ、見た目からしてすごい”変態ペン“なのだ。
三菱鉛筆
JETSTREAM EDGE 3(ジェットストリーム エッジ 3)
2500円(税別)
黒・赤・青の3色のインクを搭載する。 2020年11月25日発売。
見た目は、ワイヤークリップや六角の金属軸、タテ溝の入ったグリップなど、単色エッジの特徴的な要素をピンポイントに継承。ただ、単色エッジが軸後部に向かって細くなる独特な形状をしているのに対して、エッジ3は全体的に真っ直ぐ。
ただ、驚かされたのはそこじゃない。先端をよく見ると、芯先が出てくる穴が、コーンごと軸中心から大きくズレているのである。え、なにこれ、すっごく変だぞ!?
いかにも”変態“チックな“偏心コーン”ことポイントノーズには、もちろん理由がある。これは、従来の多色ペンが誕生以来ずっと抱え続けてきた、“芯先ナナメ問題”を解決するためのカタチなのだ。
これまでの多色ペンは構造的に、内部のリフィルを軸中央にまっすぐ降ろすことができない。先端がコーンの内壁を沿って露出するため、わずかに芯先がナナメに傾いてしまうのである。つまり、芯が普通よりも“寝た”状態になる→ボールが正常に回転しにくい→インクがかすれるなどの症状が出やすい、というわけだ。
これはもちろんわずかなものなので、気にならない人にはまったく問題ない。だが、気になる人には「多色ペンはなんか気持ち悪い」と感じさせる要因にすらなり得るだろう。
なにより、芯先がナナメになって起きるトラブルは、ボールが小さいほど発生しやすくなる。それが0.28mmの超極細ともなれば、やはり芯先はナナメにならないほうが安心。
そこで、ポイントノーズである。エッジ3は、軸後端のダイヤルでリフィルを選ぶ回転繰り出し方式なのだが、このダイヤルを回転させるとリフィルが軸内部で回転しつつ、ある位置で前方にグイッと押し出されるようになっている。この押し出される位置が、ちょうどポイントノーズの口に当たるのだ。
動きを見てみよう。
つまり、芯先はコーン内壁に当たることなく真っ直ぐに露出する。これで、多色ペンの“芯先ナナメ問題”は解決だ!
スピロテック機構は本当に快適な書き心地をもたらすのか?
ただ、正直なところ筆者は、多色ペンに対して不快な書き味を体感したことはあまりない。このスピロテック機構から、そこまでメリットを享受できるかしら? と訝しんでいた。
そこで、エッジ用0.28mmリフィルを従来の「ジェットストリーム」多色タイプに装填(エッジリフィルは共有可能)して試してみたのだが……あれ? ちょっと書きにくい?
普通に60度ほどの適正角度で握って書けばなんの問題もないが、少し寝かせ気味に持つと、途端にカスレや引っかかりを感じるようになった。確かにボールが小さいほど角度による回転不良は発生しやすくなるので、これくらいのささいなナナメでもトラブルにつながるようだ。
対して、エッジ3はとても快適。たったいま従来の多色ペンでは不良が出た角度でも、きちんとサラサラ書くことができる。なるほど、径が超極細にまでなると、わずかな差が大きく響くようだ。
また、ポイントノーズの特殊なフォルムも、使ってみれば違和感はほとんどなし。特に慣れるような手間もかからず快適だ。先端がニードルのように細いポイントチップは、筆記点がよく見えるし、超極細由来のカリカリ感と低粘度油性のなめらかさが上手い具合に噛み合って、とても気持ちよく書くことができる。
この書き味のバランスはなかなか秀逸で、ここまで極細でも、比較的紙を選ばない。特に手帳用の薄い紙でもひっかかりなく、細かい字がサラッと書けるので、多色と合わせて手帳用筆記具として重宝しそうだ。
単色エッジと違って軸がストレートなのも、手帳カバーのペンホルダーにすんなり入れて持ち運べるように考えてのことだろう(単色エッジは形状的に、ペンホルダーには入れづらかった)。
なにより、0.28mmの細い線と3mm方眼の相性は抜群なので、「ジブン手帳」ユーザーにはマストなペンとして人気が出るんじゃないだろうか。
「きだてたく文房具レビュー」 バックナンバー
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