ボールペンとは、基本的に文字を書くための道具である。文字を書くことで、情報を後から読める形で残したり、他人に伝達することができるわけで……あらためて考えると、びっくりするくらい便利な道具なのだ。今さら驚くことでもないのだが。
情報として文字を残すためだけであれば、黒や青、赤といった視認性の良い色だけで事足りる。実際、昭和時代のボールペンは黒・青・赤の3色のみ! というラインナップがごく当たり前だった。
それが、発色の難しい油性インクでさえ、今や8色とか作れるようになっているうえ、インク内に大きな粒子を入れることが可能なゲルインクなら、白だのパステルだのラメ入りだの、まぁ好き放題、という感じ。
つまり現在のボールペンは、ただ文字情報を書き残すだけでなく、色や輝きといった、さらにリッチなデータも一緒に伝えられるようになっているのだ。
などと、やや面倒くさい調子の書き出しで始めてみたが、実のところは「また面白いラメインクのボールペンが出たから、紹介したいんですよ」と言いたいだけなのだ。なにが面白いって、フリクションボールのラメインクなのだから。
史上初! 消せる“ラメインク”ボールペン
この連載をいつも読んでくださっている皆さんには、もはや説明するまでもないことだろうが、「フリクションボール」というのは、パイロットのいわゆる“消せるボールペン”のこと。
65℃以上の熱で透明化する特殊なインクを搭載しているので、描線をこすって摩擦熱を加えると消えたように見える、という仕組みだ。
そして、2020年11月に数量限定で発売されたのが、“ラメフリクションボール”こと「ケセラメ」。名前通り、摩擦熱で消せるフリクションの技術を活用したラメインク搭載ボールペンなのである。
パイロット
ケセラメ
各230円(税別・全6色)
書いてみると、0.7mmの筆跡はたしかにラメだ。もちろん光の当たり方によって変化はあるが、ギラギラ光るというよりは、全体的に細かく光っている印象。ラメの粒子が小さいのだろうか? 正直、昨今のラメボールペンと比べると、ややおとなしいように感じた。
ついでにベース色も発色がやや薄い気もするが、とはいえその淡さと細かなラメの輝きは、うまくマッチしている。
とはいえ、実際にラメの筆跡を見ると「本当にこれが消えるのか?」と疑問に思うが、ペン軸後端のラバーで擦ってみると……おお、消えた! まさに従来のフリクションボールの消す感覚と同じで、きちんと線が見えなくなっている。
それにしても、インクが消えるのはもはや当たり前として、あのラメも一緒に透明化したのだろうか? なかなか不思議な感じだ。
そこであらためてよく観察してみると、消えたはずのラメが、ペン軸後端のラバーにくっついているのを発見した。なるほど、インクは透明化させて消し、ラメ粒子は物理的にラバーでこすり取るという方式なのだ。いわば化学+物理攻撃の二段構えである。
分かってみれば単純かつ豪快な解決法だが、実際に消えているのだから文句はない。ただ、紙にも多少はラメ粒子が残るし、消した後のラバーを触ると指もキラキラする。これはまぁ、しょうがないところだろうが。
ちなみに今回発売されたカラーは、ラメゴールド、ラメシルバー、ラメピンク、ラメバイオレット、ラメブルー、ラメグリーンの6色。
パッと見の印象では、ゴールド、ピンク、ブルー、グリーンといった明るめの色と、ラメの輝きが相性良さそうだ。逆にシルバーとバイオレットはベースがやや暗めな分、輝きがちょっと目立ちにくい。
フリクションインク自体が、隠蔽力(いんぺいりょく。下地の色を隠す発色の強さのこと)が弱めなので、ラメインクの楽しみのひとつである「黒の紙に書いてキラキラさせる」のはダメかも? と思っていたのだが、やってみると思ったよりも輝いている。
インク色よりもラメの輝きが優勢になるためか、雰囲気はややパール寄りに白っぽくなるが、これはこれできれいだ。
なによりラメインクが消せるというのは、他には絶対にないユニークな能力である。これからのクリスマスシーズンなど、失敗したくないカード作りなどにバリバリ効果を発揮するはず。なにしろミスっても消せるのだ。
なにより売り切りの限定製品ということなので、気になるという人は見つけたら即ゲットをおすすめする。
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