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2021/3/1 20:00

ペン回しの世界チャンピオンを直撃! 完全監修したペンスピナー垂涎の「Gyro pro」の出来は?

“ペン回し”と聞いて、どういうものを想像するだろうか? 誰もが中高生の頃に一度くらいはチャレンジしたことがあるだろう、ボールペンを指で弾いたりして手の中でクルッと回す、あれだ。

 

ただ、おそらく今あなたの脳内で思い描いたペン回しとは次元の違うペン回しが、いま世界で人気となっており、さらには世界大会がある……なんてことまでは、さすがに想像の域を超えていたはずだ。「次元が違うってなんだよ、しょせんはペン回しだろ?」という人には、実際どんな感じか、動画を見てもらったほうが手っ取り早いかもしれない。

 

 

これが世界レベルの、いや実は、世界チャンピオンによるペン回しである。これを見てまだ「しょせんはペン回し」と言ってしまうのは、どう考えても無理筋だろう。凄すぎる!

 

ちなみにこの世界チャンピオンというのが、日本人プロパフォーマーのKayさん。2019年に中国で開催されたWPSAL(World Pen Spinning Alliance League)において、厳しい国内予選を勝ち上がった9か国16人のペンスピナー(ペン回し競技者)たちの頂点に立った、まさにトップ・オブ・ペンスピナーなのである。

↑世界大会のステージでパフォーマンスを行うKayさん

 

そしてこのKayさんが完全監修した「ペン回し最強のボールペン」が、クラウドファンディングサイト、Makuakeにおいて現在展開中だという。ひとまずそれがどういうものなのか、Kayさん本人にお話を伺ってきた。

※取材は感染症対策のもとで行っています

 

ペンスピナーが求める回し心地最強のペンとは?

その前に、世界チャンプ監修の「ペン回し最強ボールペン」が開発されることになった、その流れを説明しておこう。

 

まず2018年、精密部品加工メーカーの湯本電機が、ペン回しに最適化されたボールペン「Gyro(ジャイロ)」を発売。しかしこれを見たKayさんが、「これではまだ甘い! もっと凄いものができるはずだ」と湯本電機側に連絡を取り、タッグを組むことに。

 

そこから2年以上の月日をかけて開発されたのが、いまクラウドファンディングで展開されている「Gyro pro」というわけだ。

↑世界チャンプが「これが、ペンスピナーにとって最強のペンです」と豪語する。もう確実に凄いやつだ

 

湯本電機
Gyro pro
Gold/Silver/Platinum
各1万3200円(税別・クラウドファンディング価格)

 

Kay「先代『Gyro』は、僕らペンスピナーから見るとまだ微妙な部分がいくつかあったんです。まず、長さが足りなかった。ペンスピナーは既存のペンを改造して、20センチ前後まで伸ばすことが多い。あとは重心の分布も重要で、両端が重くなっているほうが回しやすいんだけど、先代はそれも違ったんです」

 

↑2018年に発売された先代「Gyro」。筆者も当時しっかり購入していた

 

もちろん、基本的な技(くるりと指で一回転させるなど)を繰り出すにはそれでも充分だが、最初の動画にあったようなレベルの高いパフォーマンス用としては厳しかった、とのこと。

 

そこで「Gyro pro」では、企画段階からKayさんが関わることで、ペンスピナーが求めるスペックを満たす製品に仕上がったのである。

 

長さは先代の約150mmから大きく伸びて、鉛筆よりも少し長い約190mmのABS製樹脂軸に。同時にペンの筆記機構も、重心が微妙に狂いやすい繰り出し式から、双頭タイプのキャップ式に変更された。

 

さらに、キャップの両端には金属製の重りを搭載することで、回転時の遠心力をフルに活かせるようになっている。

↑先端の重り(金属パーツ)は素材によってわずかに重量が違う。この微妙な差でも、回転フィールは大きく違ってくる

 

ラインナップは重りの素材別で、ベーシックなステンレスの「Gyro pro Silver」、重量感のある真鍮(しんちゅう)の「Gyro pro Gold」、軽量なアルミの「Gyro pro Platinum」の3タイプ(アルミはカラー3色あり)。それぞれ好みの重さでモデルを選ぶ方式だ。

 

重りの重量差は、各モデル間で1個辺り1g前後(両端で2個搭載するので、全体的な重量差は約2g)だが、実際に回してみると違いははっきり感じられるという。

↑リフィルを搭載した状態のSilver(ステンレス)モデルで、重さは約20g。重量の1/3が両端に偏っているので、非常に回しやすい

 

Kayオススメはベーシックなステンレスの『Gyro pro Silver』です。全体的なバランスが抜群なので、迷ったらこれで大丈夫。ペン回し初心者の人にも、これが最も回しやすいはずです。最終的には好みの問題なんですけどね(笑)。真鍮は重さを使って回転させる大技向け、軽いアルミは小回りが効く感じになっています

↑回しやすさだけでなく、書き味にもこだわったパーカーリフィル。「金属製のリフィルは2g以上あるため、搭載時の重心バランスを取るのにも苦労しました」とKayさんは話す

 

軽い樹脂軸の両端に重りということで、正直なところ、筆記用としてはかなりアンバランス。書く握りで持つと明らかにリアヘビーで、後ろに持って行かれる感じが強い。

 

しかし、本製品はあくまでもペン回し専用に作られているので、回すためにはこれが正しいバランス。ボールペンも用途によって正解・不正解の要素が大きく違ってくるのが、なかなかに面白い。

 

ちなみにリフィルも、先代がややレガシーな油性「SA-7N」だったのを、書き味向上を求めてパーカータイプのジェットストリーム「SXR-600-07」に変更されている……のだが正直なところ、そもそもこのバランスだし、書きやすさを求めてもしようがないような気はするのだが。

↑書いてる間中、ずっと後ろに引っぱられる感覚すら覚えるリアヘビーさ。筆記機能はあくまでも“おまけ”レベルと考えた方が良さそうだ

 

Kay「あと、特にこだわったのは軸のラバー塗装でした。軸に最適なグリップ力があると、技の出しやすさが全然違ってくるんですよ。湯本電機さんと何度もしつこくサンプルのやり取りをして、ようやくこのベストな摩擦感のあるラバー加工の軸が完成しました」

↑指に吸い付くような印象のラバー軸。さすがにこだわっただけはある安定感だ

 

インタビュー時には、決定する前のサンプル(ボツバージョン)とも触り比べさせてもらったが、確かに安定感は天地ほどの差があった。なるほど、ここまで差が出るなら、監修としてもこだわりどころだというのは納得できる。

 

質感だけでなく塗装の厚みなども考慮されているようで、しっかり回ってピタッと止まる、ペンスピナーにとっては完璧なグリップになっているそうだ。

 

Kay「ペンが1回2回ぐらい回せるかな? というペン回し初心者の方にも、ラバー軸のメリットは感じられると思います。なので、基本的な技の練習用にもぜひ使ってみてもらいたい。実際、確実に回しやすく感じてもらえるはずです」

 

 

まさに筆者は「ノーマルを1回2回ぐらい回せるかな?」レベルなのだが、それでも回したときの成功率は、普通のペンと比較してもかなり違うように思えた。

 

とはいえ、さすがに世界チャンプの目の前で「わー、回せた!」とはしゃぐのも恥ずかしい(こんなレベルで!)ので、コッソリと回していたんだけど。

 

実は昨今、自宅にこもってできる趣味として、ペン回しの人気は高まっているようだ。テレワークなら、休憩中にクルクル回していても上司ににらまれることもないし。

 

また、指先を使うことで、仕事疲れした脳のリフレッシュにもなるとのこと(Kayさんが脳科学者に確認済み)。あのレベルまで到達できるかはさておき、息抜き程度に気持ちよく回せるペンを1本持っておくというのは、悪くないのかもしれない。

 

 

「きだてたく文房具レビュー」 バックナンバー
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