ゲルインクボールペンの主戦場は、どうやら“書き味”から“色”へとシフトしたようだ。
というのも、ここ1〜2年のうちに発売されたゲルインクボールペンの大多数が、インクのカラーラインナップや発色性を最も強く打ち出しているのである。
以前にもこの連載で「ゲルインクボールペンのインク沼化」という話をしたが、その傾向は(ざっと見渡した限りは)一時的なものではないようで、しばらくはカラーインク千紫万紅(せんしばんこう)の時代が続くんじゃないだろうか。
このゲルインク沼のきっかけのひとつして挙げられるのが、三菱鉛筆「ユニボールワン」だ。
カラーラインナップは、限定色も含めて発売から1年で35色と、すごい勢いで増えているが、なによりポイントとなるのは、その発色性。新開発の顔料インクは非常にクッキリとしており、特に黒は、現時点で最も真っ黒なゲルインクと言っても過言ではない。
実はこれ、油性インクの覇者「ジェットストリーム」を擁する三菱鉛筆が、今度は「ワシら、ゲルでも王座獲ったりますけん」と打ち出してきたペンではないかと推測(邪推とも言う)されていた。つまり、ゲルインクボールペンの売上で9年連続トップを誇るゼブラ「サラサ」シリーズへの刺客である。
実際、ゲルインクボールペンのメインユーザー層である中高生の間でも、ユニボールワン人気は徐々に高まっているように感じる。
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ゼブラが打ち出した、クッキリ発色のカウンターパンチ「サラサR」
しかし、ゼブラもやられるばかりではない。ユニボールワン・カウンターとして(と思われる)、次の一手をすかさず打ち出してきたのである。それが、2021年3月に発売された新シリーズ「サラサR」だ。
ゼブラ
サラサR
0.4mm・0.5mm
各100円(税別)
ローンチのカラーラインナップは、0.4mmが14色、0.5mmが黒・赤・青の3色。これまでと違って、主軸が0.5mmから0.4mmに移行しているのも、おそらく0.38mmにカラーを集中させたユニボールワンに対抗してのことではないだろうか。
ちなみにこの14色は、中高生のノート筆記に最適という視点で選ばれているようで、初回限定として国・英・数・社・理の5教科向けにそれぞれカラーコーディネーターが配色した、科目別の5色セットも発売されている。
従来のサラサクリップとの違いは、インクの濃さ
ゼブラによれば「黒で従来インクより27%濃く書ける」とのこと。やはりクッキリした発色を謳っているわけだ。
比較してみると、確かにパッと見た印象でも「お、濃いな」という感じ。ただ、インクフローがややダクダク気味で線が太るのも、クッキリとした濃さを演出しているのかもしれない。個人的には、インクたっぷりなこの書き味はなかなか好ましいし、ダーッと早書きする板書にはマッチしそうではある。
「ユニボールワン」と比べてみるとどうか?
さて、やはり気になるのは「じゃあ、ユニボールワンと比べてどうなの?」というところ。
ということで書き比べてみると……正直、黒さで言えば、ユニボールワンのほうが正しく「黒色」だろう。サラサRは従来のサラサシリーズと同じく「赤黒色」傾向、かつ光の反射もあるため、並べてみるとやはり浅く感じられる。
とはいえ、赤黒でもかなり強い色なので、視認性という点ではさほど差はないかもしれない。しっかり読み返しやすい黒なのだ。
“出色”の出来は明るめの色。速乾性も見逃せない!
ラインナップの中で気に入ったのが、ライトブルー・フレッシュグリーン・ピンクといった明るめの色。明るいのだが浅くなく、どっしりした発色なので、目に痛くない。これは確かに、カラフルなノート作りに使うと、色分けがきちんと活かされた読みやすいものに仕上がりそう。
逆にカラーブラック系は、少しアッサリし過ぎて物足りなかった。あくまでも筆者の好みだが、もうちょっとダーク方向に振ってくれたほうが使いやすい。
ところで、実際に書いていて気付いたのだが、このサラサRのインク、やたらと速乾性が高い。筆記直後に指で擦っても、かすれることがないのだ。
速乾性が高く、インクがダクダク気味な書き味のサラサ……なにか覚えがあるような。そう、2016年に発売された「サラサドライ」である。もしかして? と思って、手元にあるサラサシリーズ(サラサクリップ・サラサマークオン・サラサドライ・サラサR)を並べて書き比べてみると、うーん、ドライとR、発色まで非常によく似ているような。さすがに全く同じものとは思わないが、同系統のインクを使っている可能性はありそうだ。
それにしても、クッキリ発色や速乾性を備えながら、価格は従来のサラサと同じ100円(税別)! というのは、なかなか面白い判断だと思う。おそらく120円(税別)のユニボールワンに対するカウンターなのだろう。特に、カラーをあれこれ揃えたい中高生にとっては、1本につき20円は軽視できない差だろう。
ゼブラ VS 三菱鉛筆の“ゲル抗争”が今後どうなっていくのか、まだ目が離せない。これが激化すれば、ユーザーはより進化したペンを手にできるわけで。みんなももっとガンガン煽っていこう!
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