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2021/8/22 18:45

「BICオレンジEG」廃盤! その後継ボールペン「クリスタルオリジナルファイン」はファンを納得させられる出来なのか?

2021年7月、文房具業界に大きな衝撃が走った。

 

こんな書き方をしているトピックほど、実際はそう“大きな衝撃”でもないものだが、この衝撃の度合いは、かなり大きかったように思う。それが、フランスの筆記具メーカー、BIC(ビック)が発表した「『オレンジEG』廃番」の報である。

↑名前は知らないまでも、一度はどこかで見たことあるだろう「BIC オレンジEG」。非常にアイコニックなボールペンだ

 

BICのオレンジと言えば、オレンジ色の軸に黒のキャップ式というお馴染みのアレ。1961年に発売されて以来、「世界中で最も販売本数の多いボールペン」とされている製品だ。

 

「オレンジEG」は、そのオレンジのボディに独自の「EG(イージーグライド)インキ」という低粘度油性インクを搭載したモデルで、2011年に発売されて以来、特に低粘度油性ファンの多い日本を中心に売られてきたもの。ただ、海外では売り上げでかなり苦戦をしていたようで、10年目の今年、廃番という結果になってしまった。

 

ちなみに、EGじゃない、1961年発売のオレンジは世界中でまだまだ販売継続中なので、誤解なきよう。

 

オレンジEGの後継、現る!

愛嬌のあるルックスに軽いタッチの「オレンジEG」にはファンも多く、冒頭で述べたように大きな衝撃を受けた人もかなりいたようだ。しかし皆さん、ご安心を。廃番の報とほぼ同時に、後継製品の発表も行われたのである。


BIC
クリスタル オリジナル ファイン0.8(ボール径0.8mm)
100円(税別)

 

その後継製品というのが、BIC「クリスタル オリジナル ファイン」(以下、クリスタルファイン)である。

 

BICが1950年に発売した世界初の使い切り透明軸ボールペン「ビック・クリスタル」と「オレンジ・ビック」をミックスしたような、透明オレンジのボディが特徴となっている。見た目にもすっきりと軽快な印象で、まさに“オレンジの後継”というにふさわしいイメージだ。

↑見た目の変化は、口プラ(リフィルを固定するペン先の蓋)の色と、ボディの透明度が違う程度。グリップ感や重心バランスなども変わらない

 

インクについてはリリース情報では公開されていないが、低粘度油性のEGインキから、従来型の油性インキに戻されているとのこと。※メーカーに確認済み

 

ただ、意外にも筆記感はけっこう軽く、スルスルに近い。あれ、低粘度じゃないBICのインクってこんなに軽かったっけ? と何度か確認してしまったほどだ。

↑レガシーな油性インクながら、書き味のなめらかさはなかなか。ダマも出ず、快適な書き心地といえる

 

書き味に加えて、0.8mmという太めのボール径にも関わらず、ダマが出にくいのもポイント。どうやら、インクフローをかなり上手く調整しているようで(理由は後述)、30分ほどの連続試筆中、一度もダマが発生せずに書き続けることができた。

 

この辺りの性能はさすが、見た目とインクはレガシーでも、機能的には最新のペン! という感じだ。

↑使い切りボールペンではあるが、先端の隙間に爪を入れて引けば、リフィルを抜き出して交換が可能。昔の文房具店には、BICのリフィル抜き用器具が備えてあったという

 

もうひとつ「クリスタルファイン」の特徴となるのが、筆記距離の長さ。なんと従来と比較して1.75倍、線距離にして3.5kmも書き続けられるとのこと。

 

正直、これまで「オレンジEG」を使っていた際にも、「あれ? もうインク切れたけど、早くない?」なんて感じたことはない。というか、分類するとしたら、むしろかなり長持ちするボールペンだったはず。そこからさらに1.75倍というのは、なかなかに驚きの数字だと言えるだろう。

 

実はこの“長距離筆記”こそが、先にも述べた「インクフローを上手く調整」したことで達成されているのだ。無駄なインクを抑制することで筆記距離が伸び、ダマの発生も抑える。これは見事な進化と言えるだろう。

 

↑リフィルも、EGとクリスタルファインは同じサイズ。むしろインクはクリスタルファインの方が少なく見える

 

↑「BICにビックリ!」とバーコードシールまで誇らしげ

 

JIS規格においては、油性ボールペンの筆記距離は300m以上、とされている。つまり、JIS規格で定められた10倍以上の筆記距離が可能というわけだ。

 

ちなみに、これは筆者のざっくり感覚なので正確な数字ではないが、だいたい線距離500mで1万5000文字ぐらい、と換算している。であれば3.5kmは、10万文字以上書けることになる。

 

それでいて価格は100円(税込110円)ということで、単純なコスパの面で言えば、日本で購入できるボールペンとしてはおそらく最強クラスということになりそうだ。

 

 

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