ノートを選ぶとき、大抵の人は「判型」と「罫線」で検討するのではないだろうか。そして、それ以外のことは、まず考えないような気がする。
もちろん、それが間違いだという話ではない。判型と罫線のタイプを自分の用途に合わせて選ぶのであれば、それで必要充分に役には立つはずだし。(逆に、そこを考えずにノートを選ぶなとも思う)
実のところ、ノートを選ぶのにもうひとつ、考えてみてもいい要素というのがあるのだ。それが「色」。
ただし「色」といっても、表紙の色のことではない。例えば、用紙の色は白でいいのか? とか、罫線の色はグレーでいいのか? とか、そういう部分である。今回は、それらの色が違うことで何が変わってくるのかを、実際の製品を見ながら考えてみよう。
“緑色のノート”で筆記ストレスが軽減!?
まずは、用紙の色について。そもそも紙と言えば白、というイメージは強い。ではなぜ白なのか? と言えば、鉛筆などのカーボンブラックと対極にある色なので、書いた文字や線が最もくっきり見えるから、というのが大きな理由だろう。
ただ、白というのは光が乱反射して見えている色である。つまり目への入射光量が大きいわけで、端的に言えば「白=まぶしい」のである。夏の日差しを思い出してもらえば分かると思うが、まぶしすぎる光は、目の疲れに直結する。
それなら紙は白くなくてもいいんじゃないか、ということで提案したいのが、緑色の用紙を採用したアックスコーポレーションの「グリーンノート」だ。
アックスコーポレーション
グリーンノート(無線綴じタイプ)
ドット入り罫/5mm方眼
各170円(税別)
人間の目は、だいたい380~780nm(ナノメートル)の波長範囲の光を見ることができる。いわゆる可視光という領域だ。
その中でももっとも見やすいのが、波長507~555nm。色でいうと、明るい緑や黄緑色にあたる。これが人間の目にもっとも負担の少ない色というわけ。
長々と面倒くさい話をしたけれど、要するに「緑色は目に優しい」とだけ理解してもらえればOKだ。
「グリーンノート」は、白い用紙と比較して光の反射を14%カット、と謳っている(メーカー公称値)。この14%がどれほどの数値かは、体感で推し量るしかない。
しかし実際に30分ほど筆記していると、確かに目の疲労は少ない。というより、集中力が途切れず長続きするような気がする。実は正直なところ、それほどの期待はしていなかったのだが……予想していた以上に、効果があると感じられた。
筆跡の見え方については、上の通り。もちろん白い用紙に書いた場合ほどパッキリとするわけではないが、それでも見づらさを感じるほどではない。この高すぎず低すぎずの適度なコントラストも、目に優しいのだ。
ただ、鉛筆・シャープペンシルの薄い芯(~HBぐらい)だと、中高年の目にはうっすらして見えるので、逆に目が疲れるかもしれない。なので、筆記具は自分の読みやすさに合わせたものを選んだ方が良さそうだ。
カラフルすぎる73色の方眼ノート
紙色の次は、罫線の色について考えてみよう。5mm方眼の色は、何色がいいんだろうか?
基本的には、罫線といえば薄い青やグレーがお馴染みだ。うっすらして筆跡の邪魔にならず、かといって書くガイドにならないほど視認性が悪いのも困る。そういった部分でノートを選ぶ人もいるだろう。
しかし、それはだいたい彩度の高低だけの話で、罫線色そのもの(色相)にこだわったことって、あまりないのでは。
kaku souvenir
73色の風景を包んだノート
1760円
紙色は白・淡クリーム・ホワイトクリームの3タイプがある。
kaku souvenirの「73色の風景を包んだノート」は、その名の通り73色の方眼罫を印刷した特殊なノートだ。めくっていくと、用紙1枚ごとに違うカラーで印刷された方眼が現れる。それも、蛍光色や金・銀・銅色あり、もはや無地なのでは? ってぐらい視認できない薄い色ありで、かなり驚かされる。
ちなみに色のタイプは、
1. マンセル表色系
色相・明度・彩度に基づくマンセル表色系の基本5色相(赤・黄・緑・青・紫)をベースに20色
2. 蛍光色
蛍光グリーン・オレンジ・イエロー・ピンクの4色
3. プロセスカラー
色の3原色(シアン・マゼンタ・イエロー)+黒×極薄・薄・標準の3種で12色
4. ゴールド・シルバー・ブロンズ
金・銀・銅の3色
5. 適正8色
ノート罫線として適正と思われる8色×薄濃3種で24色
6. 黒と白
黒にシアン・マゼンタ・イエローを混ぜた深みのある黒を、配合を変えて9色+黒い紙に白罫線1色
……で、合計73色という構成になっている。
蛍光色ははなから罫線向きではないのは分かるし、視認できない極薄罫線が役に立たないことだって、おそらく見るまでもないだろう。
そこへ予想外に、暗めの紫色やオリーブドラブの罫線、使いやすいかも! みたいな発見もちょくちょくあったりするから、油断がならない。色に関しては好みの問題も大きいが、その自分の好みを確認するためにも、使ってみると楽しいのだ。
また、色によって「累日の睡蓮」や「傲慢なるマジェンタ」「純真無垢な好奇心」といったリリカルな色名が付けられているのもユニーク。ちなみに蛍光オレンジの色名は「24.5561の電磁」。24.5561Kはネオンの温度定点だな、というように、色名の元ネタをいちいち探っていくのも面白い。
先にも述べたとおり、用紙1枚ごとに罫線色が違うので、もし気に入った罫線があったとしても、それをずっと使い続けることはできない。そういう意味で、このノートに「グリーンノート」のような実用性はないと言える。あくまでもさまざまな色の罫線を試して楽しむだけの、ファンツールとして捉えるのが正解だろう。
しかし、できればこの73色罫線から気に入った色を1つ選んでノートが作れたらいいなー、とも思うのだ。(個人的には「深雪に恋息吹」色で1冊作りたい。)「73色の風景を包んだノート」が罫線の色見本として使えるようになれば、より楽しめるんじゃないだろうか。
「きだてたく文房具レビュー」 バックナンバー
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