夏は文房具のシーズン……いや、正確には「文房具の展示会」シーズンである。この時期に発表された新製品が秋冬に発売される、というのがお定まりの流れなのだ。もちろん、そういった展示会のほとんどは、文房具の小売り・バイヤーといった事業者向け。
だが、われわれ一般人もウェルカムで開放されているものがある。なかでも最大規模なのが、大阪で毎年8月に開催されている「文紙MESSE(ぶんしメッセ)」だ。
こちらは在阪メーカーを中心に、会場内にずらりと新製品が並び、そこへ大人から子どもまでがワイワイと遊びにやってくるという、非常にお祭り感のあるイベントである。しかも今回は、コロナ禍を経て3年ぶりのリアル開催。非常に盛り上がりを見せている会場で、気になる新作文房具をチェックしてきた。
1.サクラクレパスの最新ボールペンは、初代のDNAを受け継ぐシンプルデザイン
最初に取り上げたいのが、サクラクレパスの新ボールペン。高級ラインで人気のシリーズから、最新作の「SAKURA craft_lab 007」(11月中旬発売予定)が、文紙MESSE初日に情報解禁となった。
サクラクレパス
SAKURA craft_lab 007
各4000円(税別/予価)
ここ数年は、重厚感や素材感など毎回いろいろな切り口を見せてくれたcraft_labシリーズだが、今作は原点回帰がテーマに。2017年に発売され大いに話題となった初代「001」をベースに、さらに今のテイストにあわせてリファインしたものになっている。
「001」はクラシカルさ・レトロさを多分に盛り込んだデザインだったが、「007」はそこからかなりスマートに。いわゆる“令和デザイン”と呼ばれる、余分な凹凸を減らしたシンプルな軸に近づけているように思う。
それでいて、きちんと高級感のある重厚さも備えており、「あー、これクリスマスシーズンにプレゼント用でめちゃ売れるヤツだな……」と判断せざるを得ない。
軸色は昨今の定番となっているくすみ系だが、アルミ梨地加工の“枯れ感”もあって、なんとも渋い。まさに“大人のかっこいいペン”という印象だ。
ちなみにインク色は、「ボールサインiD」シリーズでもお馴染みのカラーブラック系に加えて、特濃ブラックの「漆黒」もラインナップされている。
2.携帯性に優れたスティックタイプのホッチキスは、針をたっぷり収納
個人的にちょっと楽しみなのが、MAXの新しいホッチキス「MOTICK」(10月発売予定)だ。スリムなスティックタイプで収納に優れ、立つペンケースに入れても沈まないボディがポイントとなっている。
マックス
MOTICK
各750円(税別/予価)
これまでにもコンパクトな携帯型ホッチキスはいくつかあったが、ボディが小さい=針の容量が少ない、というデメリットがあった。つまり、持ち歩けても、うっかり針切れで使えないというケースがありうるわけだ。
対して「MOTICK」はスティック型ということで、マガジンにはきっちり針100本を収容。これなら出先でバチバチ使うにも安心できそう。
携帯するだけでなく、このフォルムならペン立てに立てての常備も問題なし。筆者のような整理下手は、毎回のように「ホッチキスどこいった!?」と引き出しや小物入れを探す手間が発生するため、ペン立てのように常に視界に入る場所に立てておけると、探す手間が確実に省けそう。これはなかなかにありがたいのだ。
3.工夫されたインクパッドで、赤ちゃんの手形が捺しやすい
シヤチハタのブースでは、スタンプパッド「パームカラーズ」(発売中)が面白かった。赤ちゃんの手足にインクをつけて紙や布に捺すための、手形・足形用インクパッドだが、この形状にちょっと工夫があるのだ。
シヤチハタ
パームカラーズ(布用) 全10色
各700円(税別)
実は赤ちゃんの手形を採るのは意外と難しい。というのも、彼らの手はキュッとグーの形に握っているのが基本姿勢。つまり、まずはこの手を開かせないことには、手形を捺すことができないのである。
しかし「パームカラーズ」には、フタを折り返すと端がナナメになる傾斜型ちょうつがいを採用。この傾斜を赤ちゃんの握った手にこじいれていくと、少しずつ手を開かせることができる仕組みなのだ。
あとはそのままインクパッドを手のひらにポンポンと当てて、色紙などにぎゅっと捺せば、かわいい手形が残せるわけだ。
もちろんインク(水性顔料)は肌に優しく、ウェットティッシュなどで簡単に拭き取れるタイプ。それでいて耐水・耐光性には優れているので、手形足形は長期間の保管が可能。
これは2021年秋に発売された製品だが、コロナのせいで生まれたばかりの孫と会う機会の少ない“じいじ・ばあば”たちに大ヒット中なのだそう。
4.伝統工芸とのコラボがユニーク! 全国の織物に触れられるボールペン
大阪市内でノベルティの製造販売をしている蝶屋物産は、日本全国の織物を軸に巻いたボールペンシリーズ「yuEN」を発表。西陣織や大島紬、小千谷縮など20種以上の伝統織物のホンモノを手作業で軸に巻いており、視覚だけでなく手触りまで楽しめるペンになっている。
蝶屋物産
yuEN
ボールペンシリーズ
発売時期・価格未定
実際に手に取ってみると、なるほど、織りの密度や絹糸の滑らかさなどが指に感じられて、かなりリッチな気分になれる。今や着物を着ることもないし、こういった織物に触れる機会なんてほとんどないわけで、筆記具の形からあらためて伝統織物を認識するというのも面白いのではないだろうか。
ちなみにペン自体の価格も、元の織物のお値段によってそれぞれ異なるそう。さすが高級な大島や西陣などはほかに比べてちょっとお高めになる、とのことだ。
5.子どものウッカリを減らす! 学童ペンケースは透明がトレンドに
学童文具メーカー(と言いつつ最近は大人向けも強いが)のソニックのブースでは、「うかサポ 両面筆入」(11月発売予定)を前面で大プッシュ。実は、ここ数年かなり激化している学童向けペンケースの新ジャンルとして「鉛筆先端の見える化」を提案してきた。
ソニック
うかサポ 両面筆入
各1700円(税別)
小学生のメイン筆記具といえばやはり鉛筆だが、子どもはうっかり削るのを忘れたり、芯がボッキリ折れたまま放置してあったりと、油断がならない。しかし、それはペンケースの外から芯の状態がチェックできないのが悪いんじゃないだろうか。芯が見えていれば、「あっ、折れてるから削らなきゃ」と気付けるはず。
そこで、ペンケースの先端を一部透明化。こうすることで、芯の状態が常に確認できるわけだ。
最近は学校側から「ペンケースは無柄で装飾のないものに限る」という指定も多いそうだが、一部透明は柄や装飾の範疇から外れるのでセーフ。鉛筆削りも搭載しているので、いざというときにも安心のペンケースなのである。
文紙メッセでは、これら新製品の展示発表だけでなく、一般ユーザーを対象にしたワークショップやイベントなどもいっぱいだ(もちろん、感染症対策は万全)。さすがにコロナ前と比較するとギュッとコンパクトになった感はあるが、それでもメーカーと文具ファンが一体となった盛り上がりは、以前と変わらない。
文房具好きなら行く価値めちゃ高なイベントなので、機会があれば来年以降、ぜひ行ってみてほしい。ほんと、楽しいから。