文房具
筆記用具
2023/1/5 19:00

メタルペンが5世紀ぶりに復活! 開発者が語る「無限鉛筆」の “無限” の可能性

かつてルネサンス期に芸術家たちが使っていたのが、金属製チップですり減らずに無限に書けるメタルペン。その最新進化版がなんと令和の世に登場し、世間を騒がせている。今回は話題の文房具「メタシル」の開発者にインタビューし、誕生秘話を聞いた。

※こちらは「GetNavi」 2022年12月号に掲載された記事を再編集したものです

 

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無限鉛筆

鉛筆と言えば、書くほどに芯がすり減るのが当たり前。そんな常識を覆し、鉛筆削りで削らずにどこまでも書き続けられる「無限鉛筆」が話題を呼んでいる。

 

プレミアム感を演出した “大人でも欲しくなる鉛筆”

サンスター文具

metacil

990円

黒鉛と金属を含む特殊な芯を、先端チップの金属軸に搭載。芯の硬度が高く摩耗しにくいため、約16kmの距離を書き続けられる。筆跡は2H鉛筆相当の濃さで、消しゴムで消すことも可能。黒鉛の粉が出ないので手を汚さず筆記できる。

※写真の「metacil(Blue)」は限定カラーのため完売の可能性あり

 

GetNavi編集部・金子が使ってみました!

“無限” ということで円周率を1時間ひたすら書き続けました。削る作業が必要ないので筆記に全集中。心地良い時間でした!

 

この人に聞きました!

サンスター文具
クリエイティブ本部 イノベーション部

大杉祐太さん

日本大学芸術学部卒業。玩具メーカーを経てサンスター文具に入社。人々を “楽しませる” “驚かせる” 商品作りに日々奮闘する。「『メタシル』の新たな展開も考え中です! 乞うご期待!!」

 

ダ・ヴィンチが使ったペンが令和の世にアップデート!

現在の鉛筆が発明される以前、ダ・ヴィンチやミケランジェロらがスケッチに用いていたのが、鉛や銀の合金でできた「メタルペン」と呼ばれる筆記具だ。先端がすり減ることなく半永久的に書けるのがメリットだが、筆跡が薄く見えづらいため、次第に黒鉛を使った鉛筆に取って代わられていった。

 

そのメタルペンを現代版としてアップデートさせたのが、サンスター文具の「メタシル」だ。だが、なぜそんなレガシーな筆記具をあえて令和の世に蘇らせたのか。開発者であるサンスター文具の大杉祐太さんは「私はデザイン科出身なのですが、デッサンなどで鉛筆をすごく消費し、毎回削るのも大変でした。就職した際、それを解決する何かを作れないかと思ったんです」と語る。

 

着想する際、かつて雑貨店で見かけたメタルペンを思い出し、改良できないかと考えたそう。

 

「黒鉛に金属を配合することで、長く筆記できるチップは早いうちに完成しました。ただ、黒鉛が多いと筆跡は濃くなりますが、すり減るのは早い。金属が多いとその逆になり……。黒鉛と金属のバランス決めに半年かかりました」(大杉さん)

 

鉛筆でもメタルペンでもない新世代の筆記具が誕生

芯の濃さについては社内でも様々な意見が出たが、最終的に鉛筆芯2H相当の濃さで約16kmが書けるというチップに仕上がった。

 

また、チップだけでなく軸のデザインやカラーリングにも大杉さんのこだわりが含まれている。

 

「一般的な鉛筆の六角軸に対して『メタシル』は八角軸。鉛筆っぽさを残しつつ、∞(無限)を想起させる8を取り入れました」(大杉さん)

 

鉛筆のようで、削らず長距離筆記が可能。メタルペンのようで、濃い筆跡。復刻に見えて、これはこれまでなかった筆記具なのである。

 

“無限鉛筆” は言い過ぎとして “削らず16km” はホントなのか!?

[Point 1]チップ構造のひと工夫で! 芯が完全になくなるまで書ける

先端チップは黒鉛+金属のかたまりをネジ台座で支える構造で、チップ自体がすり減ってなくなるまで書き続けられる。ただ強い衝撃で折れることはあるので丁寧に扱おう。

 

[Point 2] 一定の濃さでひたすら線を描く手作業でも “16km筆記” を確認

筆記可能距離は専用の機械にて計測されているが、手作業でも16km以上の筆記が可能かを検証した(ホワイトの鉛筆は1km筆記後の状態)。使用したコピー用紙はA4サイズ500枚以上!

 

筆記具の進化を感じられるこだわりポイントはココだ!

【Point 1】芯の “減りにくさ” を追求した黒鉛+金属の新チップ

チップは合金の化学反応が筆跡となる従来のメタルペンとは別物。黒鉛と金属を混ぜて硬度を高めた、 “究極に減りにくい” 鉛筆なのだ。

 

【Point 2】黒鉛の粒子だけが残るため筆跡は消しゴムで消去可能

筆跡として紙に残るのは黒鉛の粒子なので、消しゴムでこすって消せる。ここもレガシーなメタルペンとは大きく違うポイントだ。

 

【Point 3】絵の具を塗ってもにじまず画材としても重宝される

ボールペンなどと違い、上から水性マーカーや絵の具を重ねてもにじまない。削り不要という利点を合わせ、屋外写生の画材にも便利そうだ。

 

まだある! 注目の “無限鉛筆”

【その1】2種類のチップが使えるオールインワンタイプ

stilform

stilform AEON

1万2100円〜

スタイリッシュな軸に内蔵したネオジム磁石によって、半永久に筆記できる「エターナルチップ」と、濃い筆跡が残せる黒鉛配合の「グラファイトチップ」を切り替えられる。書き味の好みに合わせて使い分けられるのが魅力だ。

 

↑筆跡は薄いが手が汚れない酸化メタルのエターナルチップ(左)と、鉛筆感のあるグラファイトチップ(右)を切り替え可

 

【その2】お手ごろ価格で入手しやすいベーシックなメタルペン

axel weinbrecht design

ベータペン

3500円~

メタルペンの中では、お手ごろ価格のベーシックモデル。ドイツ製の滑らかなチップでシュルシュルと紙をこする感触は非常に心地良い。筆記具の歴史を知る意味でも、文房具マニアなら1本は持っておきたいかも?

 

↑先端チップは特殊合金製。紙との摩擦により、紙の繊維の間に金属粉が移ることで筆跡になる