昨今、中高生の間でとにかく人気が高いのが、シャープペンシルだ。彼ら彼女らにとっては日常で最も使用頻度の高いツールだから、こだわりを持つのは当然だが、それにしたって我々大人からすると「えっ、そんなに!?」と驚くほどの注目度合いなのである。
実際、シャープペンシルの新製品が発売された直後にちょっと大きめの文房具店へ行くと、中高生(どらちかというと男子が多いが、女子もいる)が、「売り場にあのシャープペンシルが無いが、売り切れか?」「次の入荷日はいつか?」「予約は可能か?」「取り寄せは可能か?」……などと店員に詰め寄っているシーンをほぼ確実に見ることができる。あまりにアツすぎて、製品によっては1人1本制限は普通だし、店頭で抽選販売となっているケースだってザラなのだ。
このシャープペンシルブームの火付け役はといえば、それはまず間違いなく2008年に発売された三菱鉛筆「クルトガ」シリーズと言って間違いないだろう。書く度に少しずつ自動で芯先を回転させる「クルトガエンジン」を搭載し、偏減りなく鋭い筆跡が得られるこのシャープペンシルは、今でもとにかく人気が高い。
そんなクルトガシリーズに新たに金属軸モデルがラインアップしたということで、今回は(筆者が発売日の朝から店頭に並んでなんとかゲットしてきた)その最新版クルトガを紹介しよう。
クルトガにハイグレードなフルメタル軸登場
4月に発売された「クルトガメタル」は、その名の通り、フルメタル軸を採用した高級モデルだ。
クルトガの高級モデルといえば、2022年に発売された「クルトガダイブ」を思い出す人も多いだろうが、正直なところ「ダイブ」は本来のクルトガシリーズよりはるかに高度な機構を搭載しており、系統的にちょっと別物では? といった感もある。対してこの「クルトガメタル」は、機構やルックスも含めて“現行クルトガの正統ハイエンド”と言えるものだ。
三菱鉛筆
クルトガメタル 0.5mm
2,500円(税別)
ルックスは、2023年発売の新しいスタンダード版「クルトガKSモデル」の雰囲気を継承しつつ、金属軸ならではのスリムさがあり、さらにクリップ部は「クルトガダイブ」と同様のシンプルな板バネクリップを採用。このあたりは、端的に「スタンダードに高級感をプラス」という方向性のデザインなのだと思われる。
加えて、軸表面には全体に微細な溝の切削とブラスト加工が施されており、これが程よく光を拡散させることでテカテカ感を打ち消し、ドッシリとした重厚感の演出になっているようだ。
グリップは一見するとシンプルに溝を彫っただけのようだが、握るとその見た目以上にがっちりとすべり止めが効いている。これは、先に述べた微細溝加工がグリップにまで入っており、大きな溝と組み合わさることで、まるで指紋に食い込むかのような強いグリップ感を生んでいるのだ。
筆者はメタルグリップとはとにかく相性が悪い(手汗でスルスルとすべる)のだが、これは文句の付けようがない安定感で、今まで握った金属軸の中でも間違いなくトップクラスに握りよいグリップだと感じた。
握った際の重心位置は、「KSモデル」と比べるとわずかに前重心気味といったところ。バランス的には特に不満はなく(もうちょっと低くてもいいが)、グリップ感の良さと相まって、手の中にしっとりと収まる感じがとても心地よい。
「KS モデル」以降はクルトガエンジンが軸後方に配置されているため、やや重心位置が上がるのだが、対抗して口金に真ちゅうを使うなどして重さを調えているようだ。重量は17.6gと重めだが、コントロールも十分に利いて、握り心地の満足度は非常に高いように感じた。
「これこそクルトガの完成形では!?」と驚く筆記感
肝心の筆記感はどうかというと、これがまた想像以上に良かった。クルトガは芯を自動回転させる構造上、どうしても書く度に微妙なカチャカチャとしたブレが発生してしまう。正直、筆者はこの芯先のブレが苦手で、クルトガを長らく避けていたぐらいだ。
しかし、新スタンダードこと「KSモデル」はこのブレをかなり抑制できており、筆記感は大幅に向上していた。
では「メタル」はというと、ブレの抑制具合は「KSモデル」以上で、体感的にはほぼ普通のシャープペンシルといった感じ。ブレによる不快感もほぼ無く、これはかなり驚かされた。機構的に「KSモデル」と同じクルトガエンジンを積んでいるのは間違いないだろうが、それに加えて、口金とペン先の間に挟まれた樹脂製の“ニブダンパー”というパーツが効果を発揮しているらしい。
正直なところ、このパーツがどういう理屈で効いているのかはハッキリ分からないが……おそらくはパーツ間の隙間をほどよく埋めることでカチャつきを伝わりづらくしているのではないだろうか。
バランス良く、握りやすく、筆記感も文句なし。かつ、クルトガならではの芯先の鋭さのおかげで、整った文字が書きやすいというメリットも確実に享受できるんだから、とても優秀な筆記具であることは間違いない。
超人気製品ということでしばらく品薄は続きそうだが、ともあれ見つけたら即確保すべきだろう。