仏教は、わたしたち日本人にとって深い関わりがあります。日本には、仏教由来のモノやコトがたくさんあるからです。
『精選 ブッダのことば 初期仏典を中心に厳選した、お釈迦さま珠玉の語録集』(大森義成・著/学研プラス・刊)は、ブッダの生涯、ブッダの教え、経典の成り立ちについて、わかりやすく解説しているガイドブックです。
正しい人ほど「生きづらい」
恥じる心なく、烏(カラス)のようにあつかましく、他人を傷つけて省みるところのない人の生活は、なしやすい。謙遜の心があり、敬いを知り、執着を離れ、清らかに行い、智慧明らかな人の生活は、なし難い。『法句経』
(『精選 ブッダのことば』から引用)
もしも「生きづらさ」を感じているならば、あなたが「謙遜」や「恥」を知っているからです。痛みや苦しみを感じてしまうのは、他者の心を踏みにじらずに生きているからこそ。日々の悩みや苦しみは、あなたの「正しさ」を証明するものです。
『法句経(ほっくきょう)』は、「真理のことば」を意味する「ダンマパダ」という経典を漢訳したものです。鴨長明が著した『方丈記』における序文「行く川のながれは絶えずして〜よどみに浮ぶうたかたは〜」は、『法句経』の一節から影響を受けています。
神仏や運命のせいにしない
この世の中には三つの誤った見方がある。
一つには、ある人は、人間がこの世で経験するどのようなことも、すべて運命であると主張する。二つには、ある人は、それはすべて神のみ業(わざ)であるという。三つには、またある人は、すべて因も縁もないものであるという。『華厳経』
(『精選 ブッダのことば』から引用)
『華厳経(けごんきょう)』は、仏教における一派「華厳宗」の経典です。「奈良の大仏」は、華厳経が好きだった聖武天皇の発願によって、平城京の時代(752年)に建立されました。東大寺にある大仏坐像は、華厳経に登場する「毘盧舎那仏(びるしゃなぶつ)」を具象化したものです。
宗教といえば、運命論が支配していると思いがちです。審判の日におけるキリスト再臨。56億7千万年後に弥勒菩薩が現れるなど。しかし、仏教の経典のひとつである「華厳経」は、運命論を否定しています。「人生を左右するのは、運命でも神仏でもない」と説いており、縁(えん)や努力によって道は開けるのです。
仏教は「努力の効用」を認めています。ただし、ブッダは「がむしゃらに努力するのはダメ」とも言いました。