乗り物
2017/10/17 6:00

台湾ベンチャーが仕掛ける新発想のシェアリングサービスが斬新! 電動スクーターを最短6秒でフルチャージ

いま、日本で身近な交通手段として人気急上昇中なのが「電動アシスト付き自転車」だ。都市部ではシェアリングサービスの実証実験も始まっており、その人気はますます高まっていくものと思われる。そんな日本市場の活況を受け、台湾のベンチャー企業「Gogoro」社が自社の電動スクーター「Gogoro2」を使ったシェアリングサービスを、今年度中にも石垣島でスタートさせる。

20171012_y-koba8 (1)
↑石垣島から始まる電動スクーターシェアリングサービス。今年度中のスタートを予定する

 

台湾で広まった独自のシェアリングサービス

Gogoro社は2011年に台湾・桃園市に設立。2015年からは台湾国内で電動スクーター「Gogoro1」を発売し、その後に発売した「Gogoro2」を含めると、これまでに3万4000台以上の電動スクーターを販売した実績をもつ。わずか数年でこの実績をもたらした背景には、同社が作り上げた独自のシェアリングサービスが受け入れられたからだ。“独自の”というのは、シェアリングサービスの対象を車両本体ではなくバッテリーとした点にある。

20171012_y-koba8 (4)
↑愛らしいデザインの電動スクーター「Gogoro2」

 

もともと台湾ではスクーターの人気が高いが、これを電動化に置き換えるには充電する方法をまず解決しなければならない。「Gogoro1」「Gogoro2」ともにフルチャージで100kmほど走れるというが、自前で充電システムを用意するのは大変だし、充電中は走ることすらできなくなってしまう。そこでGogora社は、一定範囲の距離ごとに充電済みバッテリーと交換できる「ゴーステーション(GoStation)」を用意した。

20171012_y-koba8 (2)
↑バッテリーチャージャー機能をもつ「ゴーステーション」と電動スクーター「Gogoro2」

 

20171012_y-koba8 (5)
↑フルカラー液晶で表示される「Gogoro2」のコックピット。バッテリーの残量も確認できる

 

ユーザーは車両本体を購入すると同時に、このステーションを利用する会員登録をする。これによってユーザーは自分でイチから充電しなくても、いつでも満充電されたバッテリーと交換できるようになる。

20171012_y-koba8 (6)
↑シートを上げるとバッテリーとヘルメットなどが入る収納ボックスが現れる

 

20171012_y-koba8 (7)
↑バッテリーはパナソニック製。満充電で約100kmが走行できるという

 

ステーションでのバッテリー交換は実に簡単だ。ステーションに着いたら車両側からバッテリーを抜いてステーションのホルダーにセット。すると、満充電された代わりのバッテリーが自動的にポップアップされる。これを抜いて再び車両にセットすればいい。この作業に要する時間は最短で6秒。驚くほど簡単でアッという間にバッテリーがフルチャージ状態となる。その手軽っぷりは次の動画をご覧いただくとわかるだろう。

このステーションは台湾全土に400か所、おおよそ20km四方に1か所の割合で整備。「Gogoro1」「Gogoro2」共通の愛らしいデザインもさることながら、このスマートな取り扱いが人気を呼び、多くのユーザーを生み出したというわけだ。

 

観光客の急増する石垣島にピタリとはまる

そんなシステムを作り上げたGogora社が、次のターゲットとしているのが海外市場。2016年秋にはドイツ・ベルリンで、2017年はじめにはフランス・パリでこのシェアリングサービスをスタートさせた。ただ、台湾と違って車両本体もシェアリングする。石垣島でのサービスもこれに倣い、その実績を踏まえたうえで日本国内の他都市へ進出する計画だ。

 

発表によれば、2017年度中のサービス開始を目指し、車体は第2世代の「Gogoro2」を採用する。日本人が馴染みやすい50ccクラスに相当するものと、台湾で展開している125ccクラスに相当する2タイプを用意し、125ccクラスのほうは2人乗りも可能だ。

 

シェアリングサービスの利用者の大半は石垣島を訪れる観光客が対象となるが、地元民の利用も想定はしているという。運転免許資格は、日本人なら50ccタイプなら普通免許か原付免許で、125ccタイプなら小型自動二輪免許で運転できる。外国人はジュネーブ条約加盟国であれば国外免許証とパスポートの所持で運転できるが、ジュネーブ条約に非加盟国から来日した場合は、その国で発行された運転免許証と和訳文が必要となる。これについて日本での事業を手掛ける住友商事の担当者は、「石垣島だけの“特区”という位置づけでそれを免除してもらえないか働きかけたい」とする。

 

また、シェアリングとなれば、ヘルメットやグローブも準備しなければならない。ここで課題となりそうなのが衛生面での管理方法だ。特にヘルメットについては、肌に密着するだけに気遣いが必要となるだろう。住友商事の担当者は「石垣島にはステーションを4か所設ける予定だが、利用者がスマートフォンでステーションに訪れることがわかった時点で有人配置をする必要があると思っている。利用者の利便性を損なわない方法を検討中で、そのためのコストなども踏まえて料金設定を考えたい」とした。

20171012_y-koba8 (8)
↑スマホ連携によって、バッテリー残量やゴーステーションの場所などを表示する

 

20171012_y-koba8 (9)
↑スマホを介してスクーターの状態は常にサーバー上で管理されている

 

これまでほとんどの人が、石垣島での島内移動にはクルマを使うことしか頭にはなかったと思う。しかし、石垣島は観光客の急増で駐車場の確保やレンタカー増加による環境悪化の問題に直面している。Gogora社のシェアリングサービスはこうした石垣島の状況にもマッチするだろう。これから石垣島を訪れた際には、電動スクーターを使ったこのサービスも念頭に置いておくと良いと思う。