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2018/3/5 6:00

次元が違った… “冬の怪物”を謳う「横浜ゴムの最新スタッドレス」を雪上&氷上で試乗

冬まっただなかの某日、自動車メディアを対象とした横浜ゴム「スタッドレスタイヤ勉強会」が北海道・旭川市神居町にある「北海道タイヤテストセンター(TTCH)」で開催された。特に今回は昨年新設した屋内試験場も初披露。同社の自信作「ice GUARD6」(IG60)のほか、この日のために特別に用意したタイヤを使い、圧雪路と氷上という特別な場でタイヤが持つ面白さを体験することができた。その内容をご紹介しよう。

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↑“冬の怪物”を標榜するヨコハマの最新スタッドレスタイヤ「ice GUARD6」

 

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↑横浜ゴム「スタッドレスタイヤ勉強会」は、晴天に恵まれる良好なコンディションの中で行われた

 

溝なしスリックタイヤで雪上走行!?

勉強会で用意されたメニューは、「コンパウンド(ゴム)比較」「パターン比較」「冬用タイヤ3種の屋内氷盤比較」「冬用タイヤ3種のハンドリング比較」の4項目。冬用タイヤの主流となっているスタッドレスタイヤの特性を学習することを目的に、それぞれを自らの運転で体験しながら進められた。体験試乗の場となったのは、新設された屋内試験場と、圧雪された広場の2つ。ここでの試乗車はトヨタプリウス(4WD)であった。

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↑今年1月、旭川にある横浜ゴムの「北海道タイヤテストセンター(TTCH)」に建設された屋内試験場。全長119m、全幅24m、室内高(最高部)8.8m、延床面積は約2,860㎡

 

最初に体験したのは「コンパウンド比較」。実はこれが1番面白かった。なんと溝が一切ないスリックタイヤでの比較だったのだ。「スリックタイヤで雪上を走れるの?」そう思われがちだが、体験してみると驚いたことにきちんとグリップする。その理由は気温が低いためにタイヤと圧雪路のすき間にスリップの元となる水膜ができないからで、厳寒地の北海道ならではの走行だから可能となった体験なのだ。

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↑興味深かった「コンパウンド比較」。溝なしのスリックタイヤでコンパウンドの違いによるグリップ力の差を体感した

 

ここで用意されたスリックタイヤは、欧州で普及しているウインタータイヤ用と、日本で一般的なスタッドレスタイヤ(IG60)用のコンパウンドで作った2組。どちらもグリップはするわけだが、8の字走行を繰り返していくとやはり外側へのふくらみ方が明らかに違ってくる。当然ながらIG60用のほうがふくらみが小さい。これはIG60の柔らかいゴム素材が路面を包む込むようにしていることに着実なトラクションにつながっているからだ。

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↑スリックタイヤ同士で比較するとコンパウンドの違いで、明らかなグリップ力の差が出た

 

また、屋内試験場ではスリックタイヤのまま氷上でのブレーキ性能を試した。当然ながらウインタータイヤよりもIG60スタッドレスのコンパウンドのほうが制動距離は短く済んだ。これはスタッドレス用のゴムが、氷上での巻き上げた水を排出できる特性を備えているためで、コンパウンドの違いでタイヤ性能はこんなにも差が出るのかと思い知らされた。

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↑屋内試験場ではスリックタイヤのまま氷上でのブレーキ性能を比較した

 

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↑IG60とウインタータイヤを氷上で比較した結果。制動距離でこれだけの違いが出た

 

タイヤパターンによる「排水性」の違いで制動距離に差

次に行った体験試乗は「パターン比較」。IG60に採用されたタイヤパターンのメリットを体感するための試乗だ。前モデル「IG50 Plus」のコンパウンドで作ったIG60を用意し、これを製品版であるIG50 Plusと比較した。これはコンパウンドであるゴムの性能を同一とし、パターンの違いでどれだけの性能差が出るかを体験するものだ。ただ、圧雪路での8の字走行では、正直この違いがわかりにくかった。加速して制動することを繰り返すと、IG50 Plusでもしっかりとしたハンドリングを伝えてきたからだ。

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↑「パターン比較」では、前モデル「IG50 Plus」のコンパウンドで作ったIG60を用意し、これを製品版であるIG50 Plusと比較した

 

違いがハッキリしたのは氷上での制動テストだった。実際に氷上でのブレーキは制動のタイミングや速度の一時が難しかったが、印象として明らかにIG60のパターンのほうが制動距離は短かった。横浜ゴムによればIG60はIG50 Plusに対して15%の制動距離短縮を実現しているのだそうだ。パターンごとの排水性の違いが制動距離に明らかな差をもたらしたのだ。

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↑パターンによる違いを氷上で比較。IG60では排水性を高めており、それが好結果を生み出した

 

ちなみに、この屋内試験場は大型車の走行試験も行える。勉強会の後半では大型車による制動テストの様子も公開された。ABSを効かせながら制動していくのは迫力満点だ。ぜひ次の動画をご覧いただきたい。

冬用タイヤ3種比較ではウインタータイヤが健闘するもIG60が圧勝

最後に体験したのが、「冬用タイヤ3種のハンドリング比較」「冬用タイヤ3種の屋内氷盤比較」だ。ここでは、IG60のほか、ウインタータイヤ「BluEarth WINTER V905」、ヨコハマが北米向けに発売するオールシーズンタイヤ「Avid ASCEND S323」を加えた3種類のタイヤで、圧雪路と氷上の2パターンを体験した。ともに日本では未発売のタイヤだ。試乗車はトヨタのミニバン「NOAH」。これを約1kmの圧雪路と屋内氷盤試験路で行った。

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↑「冬用タイヤ3種のハンドリング比較」はミニバンのトヨタNOAHで行った

 

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↑3種の冬用タイヤ。左からウインタータイヤ「BluEarth WINTER V905」、最新スタッドレスタイヤ「ice GUARD6」、オールシーズンタイヤ「Avid ASCEND S323」

 

結果はIG60の圧勝だった。圧雪路での安定した走り、氷上での制動力の高さ、このいずれもが能力で他を上回ったのだ。ただ、これは当初より予想できたこと。横浜ゴムがわざわざ最新のスタッドレスタイヤを体験走行させて、それが性能的に劣っていたのでは話にならない。そんななか、想像以上に高い走破性を実感させたのがウインタータイヤだった。これは欧州で普及が進んでいるタイヤで、それが雪上でもしっかりとしたグリップ力を示したのだ。

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↑最も大きな差となったのが氷上性能。これだけ違うと「ice GUARD6」の安心度が魅力となる

 

もちろんIG60と比較して氷上での性能差は大きかった。しかし、このタイヤは降雪地帯で使うタイヤではなく、むしろ高速走行性能にも気を配った冬用タイヤとして現地では販売されている。東京のように普段は降らない雪が突然襲ったときなどに効果的なタイヤと言っていい。それだけに絶対的なグリップ力ではIG60よりも劣るが、このグリップ力は雨天時などのウェットな路面ではメリットを発揮するだろう。

 

一方のオールシーズンタイヤ。主として北米で普及しているタイヤで、横浜ゴムによれば雪上や氷上性能よりも耐摩耗性を重視して開発されているタイヤなのだという。つまり、除雪が行われている幹線道路までゆっくり走ることさえできれば十分というニーズに応えているのがオールシーズンタイヤなのだ。それだけに3種の中でも最も走破性で見劣りがした。もちろん夏タイヤよりは効果はあるけれど、少しでも雪深い場所を走るとなれば、オールシーズンタイヤでは役不足となることを思い知らされた。

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↑冬タイヤとは言え、雪上走行での安心感はタイプによって大きな違いが出た

 

最後にIG60の走行フィーリングだが、圧雪路では路面に対する密着度が高いためにかなり安心して走れる。特にステアリングを切った時の追従性はかなり高く、これが安心感につながっているのは間違いない。しかも圧雪路での突き上げ感もしなやかな印象で、乗り心地はかなり良好な印象だ。スタッドレスタイヤは何かと乗り心地が悪いと言われがちだが、IG60に限ってはそんなことはない。横浜ゴムが自ら“冬の怪物”としてPRしているように、IG60はこれまでと次元の違ったスタッドレスタイヤであることは間違いないようだ。

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