「遮断かん」は折れにくいカーボンファイバー製が主流に
通常、私たちが遮断機と呼んでいる、踏切を遮断するシステム。実は遮断機は、踏切を遮るさおを下ろす機械「電気踏切遮断機」と、遮るさお「踏切遮断かん」(「かん」は漢字ならば「桿」)で構成されている。
この踏切遮断かんには、以前は竹ざおが利用されることが多かったが、いまはFRP(繊維強化プラスチック)が広く普及するようになっている。カーボンファイバーとも呼ばれる素材で、軽くて強い。
強いとはいえ、踏切内に閉じこめられたクルマが脱出しようとしたときには折れることもある。そのために踏切遮断かんと電気踏切遮断機の間に、遮断かん折損防止器という装置が付けられることが多い。これで、多少の角度までならば、遮断かんが折れないように工夫されている。
電子音が主体の「警報音発生器」。珍しい音色が聞ける路線も
踏切では踏切警報灯と、音で電車や列車の接近を伝えている。この音を発生させる装置は「警報音発生器」と呼ばれる。
いま、全国の多くの踏切の警報音は「電子音式」になっている。カンカンカンカン……という良く耳にするあの音だ。踏切警報器柱の上に取り付けられたスピーカーで、この音が流されている。
いまや電子音が大半を占めるなか、レトロな音色が聞ける線区がまだ残っている。例えば千葉県内を走る小湊鐵道。始発・五井駅すぐそばの踏切・五井踏切では「電鈴(でんれい)式」とよばれる警報音を聞くことができる。柱の上に鐘がついていて、この鐘を鳴らすことで警報音が生まれる。「チンチンチンチン……」という郷愁あふれる音色が楽しめる。
この鐘を鳴らす方式には、「電鐘(でんしょう)式」とタイプもある。鐘を鳴らす方式はおなじだが、電鐘式のほうが柱の上にのる鐘が大きく、音はやや重め。三重県内を走る三岐鉄道三岐線の踏切などで見ることができる。
警報音は電子音だが、近づく電車の動きに合わせて音のスピードが変わる踏切がある。それは京成電鉄の踏切。上りか下り、どちらかの一方の電車が通過するときは、通常の電子音での警報のみ。一方の電車が通過、さらに逆側からの電車が近づいたときは、電子音のスピードが早まる。まだ電車は来ますよ、という注意をうながし、また切迫感が伝わるように工夫されている。
踏切に欠かせない標識、そして線路部分の説明
踏切部分の設備ではないものの、踏切になくてはならないのが踏切標識。踏切の50〜120m手前に立つ標識で、この先に「踏切あり」ということを示している。この標識、1986(昭和61)年よりも前と後で、立てられた標識の絵が違うことをご存知だろうか。
次の写真が古いものと新しいものの違い。左は1986年以前のもので、右が以降に立てられた標識だ。蒸気機関車の運行が減ったことで、描かれた絵が電車に変更された。電車が走らない地域では、気動車の絵も使われている。
最後に踏切の足元にも目を向けておこう。踏切を通る道路上には特別な仕組みが用意されている。レールの内側に踏切ガードレールというレールが付けられているのだ。レールと踏切ガードレールの間にはすき間がある。このすき間は車輪のフチにある出っぱり部分、フランジを通すためのものだ。踏切ガードレールがあり、その中には踏み板が付けられていて、人やクルマの通行に支障が生まれないように工夫されている。
このように、踏切には必要不可欠な機器や設備が多く用意されている。次回は、安全への備え、さらに、走行中の電車への情報の伝わり方、そしてもしものことに出くわしたらどうしたら良いかなど、踏切をめぐる安全に関して目を向けていきたい。