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2018/8/28 17:00

自動車評論家に衝撃走る! 「シングルタイヤ」が日本のベビーカーに革命を起こす

モータージャーナリストの私には、2歳の長男と6か月の長女がいます。長男はそろそろベビーカーを卒業し、かわってこれから長女が使う機会が増えていきますが、思えばベビーカーというのは、それなりに長い期間を毎日のように使うもの。

 

わが家は、メインで使う妻の要望で、ネットの情報を参考にしながら、とにかく軽いベビーカーを選びました。妻はこのバギーに対してあまり不満もなく、軽くてよいと感じている様子。しかし、筆者は、職業柄か、4つのタイヤが付いているものならなんでも走りを分析したくなります。わが家のベビーカーについても、走行性能についてはいろいろ思うところもありました。たしかに軽い点では重宝しているものの、走行性能については不満を覚える点も多々あります。そんな折、今回ピジョンのベビーカーを取材することができたのですが、もしこれから述べる話をもっと前に知っていたら、迷わずピジョンのベビーカーを選んだのにと少し悔しく思っています。

 

ベビーカーのタイヤってどうなっているの?

↑シングルタイヤ(左)とダブルタイヤ

 

「Runfee」や「Bingle」をはじめ、ピジョンのベビーカーの最大のポイントは「シングルタイヤ」を採用していること。そして、シングルタイヤは「走行性」に優れていることが特徴です。ベビーカーにダブルタイヤとシングルタイヤがあることは、普段、街中で見かけてなんとなく認識していましたが、両者の間に大きな違いがあることはまったく知りませんでした。そこが、ピジョン開発本部の主任研究員である加藤義之さん(写真下)からお話を伺って思い知らされた点です。

日本製のベビーカーではダブルタイヤが多い一方、海外製品ではシングルタイヤが主流。それぞれ一長一短あります。シングルタイヤは走行性能において優れていますが、どうしても重くなりがち。対するダブルタイヤは軽くできる反面、走行性能に劣ります。

 

また、工業製品というのは生産上どうしてもある程度のバラツキが生じるものですが、しっかり走らせるためにはシングルタイヤのほうが高い精度が求められるのに対して、ダブルタイヤは「ごまかし」が利くとのこと。さらには、車体の骨格や車輪の取り付け部の剛性や角度の設計など、シングルタイヤのほうがはるかにシビアだそうなのです。このような理由でシングルタイヤのほうが作るのが難しくなっていますが、それでも、走行性能を重視する地域、特に欧州ではシングルタイヤが主流。対照的に、日本では軽さが一番に求められるうえ、色やデザインの可愛らしさでベビーカーは選ばれています。

走りのよさを追求するとは、まさしく筆者の専門分野である自動車に通じる話。最近では日本車もレベルアップして、欧州車とりわけドイツ車との差というのは、かつてよりもだいぶ小さくなったように感じていますが、欧州では走りが重視されるのに対して、日本ではそれがなおざりにされているというような話は、まさしくクルマの世界でもよく耳にしてきました。そしてベビーカーの世界でも、欧州の人は走りのよさを求める傾向が強く、それに応えるべく、これから述べるとおり走りの面で有利なシングルタイヤが一般的となっているのです。

 

「ベビーカーの使用期間は一般的に3年です。それなりに長い期間使うものになるので、軽さやデザインなどで選ぶ方も多くいらっしゃいますが、そうした表面的なものだけではなく、ちょっと視点を変えて、使いやすさを基準にして選んでいただいたほうがよいのかなと思っています。競合他社と差別化を図るのはなかなか難しいところですが、そこで私たちが着目したのがシングルタイヤです」(加藤さん)

 

開発にあたって加藤さんは最初、とにかく数多くの競合ベビーカーを試し、特に海外の製品をたくさん押して歩いたと言います。すると、シングルタイヤを採用した海外製品が概ね押しやすかったのに対して、ダブルタイヤを備えた日本製は押しにくいうえ、作りが粗いと感じるようになりました。

↑Runfee RA8

 

「ベビーカーは海外と日本では棲み分けが全然違います。日本製は剛性感に乏しく、ぐらつきがあったりして、押しにくく感じたものばかりで、単に運べればよいと考えているように見受けられたものが少なくありませんでした。それはママさんにとっても赤ちゃんにとっても好ましくない状況でしょう。しかし、海外製のものは非常に重いので、日本市場におけるニーズとかけ離れています。どうやったらこのような壁を打破できるのかと考えていました」(加藤さん)

 

ちょっとクルマに乗せて目的地まで移動するなど、ベビーカーを頻繁に畳んだり開いたりせざるをえないような場面が多々ある日本では、むろん軽いに越したことはありません。日本では軽さが重視されることにも、それなりの理由があるわけです。

 

そこで加藤さんはRunfeeを開発するにあたって、海外製と日本製の優れたところを掛け合わせると面白いものができるのではないかと考え、シングルタイヤながらも日本市場にマッチするように軽さを追求する方針を打ち出しました。

「シングルタイヤにすると走行性能が改善するのはよいけれど、普通にやると絶対に重くなるというのは当初から分かっていました。よくタイヤの数が減る分軽くなると思われがちなのですが、シングルタイヤを成立させるための構造面のことを考えると、実際にはその逆。そこでタイヤの代わりに躯体や車体の部分、赤ちゃんを乗せる部分で重量をできる限り落としました」と加藤さんは言います。

他社のシングルタイヤ製品は8kg台のものが多く、10kgを超える製品も多々見受けられるのに対し、Runfee RA8の重量は5.3kgと圧倒的に軽くなっています。また、Runfee RA8をダブルタイヤと比較してみても、ピジョンの「PATTAN」が4.7kgなので、両者の差は小さいといえるでしょう。シングルタイヤでこれほど軽量で押しやすいベビーカーというのは、現状では唯一ピジョンのランフィだけと加藤さんは胸を張ります。

Runfeeのお出かけレポートを読んでみよう!

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