自動運転は各社が実用化に向け開発を進める分野。非常に高度な制御を要求されることから、その開発には非凡な技術力が求められます。そんななか、日産は、蜂と魚に注目し研究を進行中。最新状況を同社の自動運転技術開発のキーマン・日産自動車 電子技術開発本部 IT&ITS開発部 エキスパートリーダー二見 徹さんに直撃取材しました。
衝突しないクルマのベースに、
「蜂と魚」は最適だった
自動運転には非常に高度な制御が要求されます。素人的には、そんなものでなぜ「蜂」と「魚」なのかという疑問を持つでしょう。しかし、日産に入社以来、ずっと電装関係を担当してきたという二見さんは次のように語ります。
「人間の行為を機械に代行させる際に重要なのは、仕組みをシンプルにすることです。その意味で、人に通じる行動をする生き物の最小単位である『昆虫』、加えて広い視野角を持ち自分の身体の周囲に外敵を近づけない『蜂』の習性は、『衝突しないクルマ』を実現するベースに最適でした。ただ、現実のクルマの周囲はほかの車や歩行者をはじめとする障害物、つまり外敵だらけなので、それだけだと移動できなくなってしまいます。そこで一定のリスクを許容する、具体的には群れで行動する『魚』の習性を活用しているわけです」
自動運転は走る歓びを否定するものではない!
では、そんな生き物じみた日産の自動運転はいつごろまでに体感できるのでしょうか?「16年までに渋滞と単一レーン、18年には高速道路と複数レーン、そして20年には市街地や交差点に対応するものを商品化する予定です」そうなると、オリンピックの年には運転という行為が人の手を離れる可能性もあるわけで、そうなるとクルマ好きは居心地が悪くなるような気がして心配ですが、二見さんはそれを否定しました。
「自動運転は、決してクルマを操る歓びを否定するものではありません。原因の9割以上がドライバーにあるという事故を根絶するための安全技術のひとつです。人間である以上、どんなにクルマが好きでも事故を起こす危険はゼロではありません。運転するという行為は認知と判断、操作で成り立っていますが、自動運転の技術はそうした各項目で高い精度を実現することによって、人間の能力(の限界)を補完してくれるのです。そうした点では、クルマがロボット化することは確かでしょう。その究極がアトムなのかガンダムなのかは、まだわかりませんが(笑)」