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2018/9/6 22:00

日産「セレナ e-POWER」が売れる本質って?

ベテラン自動車ライターの永福ランプとフリーエディターの安ドが、深いような浅いようなクルマ談義をするクルマ連載。今回は、今年の上半期に最も売れたミニバン・日産セレナの人気を牽引するe-POWERモデルの本質を分析してみました。

 

【登場人物】

永福ランプこと清水草一

日本中の貧乏フェラーリオーナーから絶大な人気を誇る大乗フェラーリ教の開祖。様々な自動車専門誌や一般誌、Webなどで、クルマを一刀両断しまくっています。2018年になってペンネームを「MJブロンディ」から「永福ランプ」へ変更。本連載をまとめた「清水草一の超偏愛クルマ語り」も発売中。

 

安ド

元ゲットナビ編集部員のフリーエディター。永福ランプを慕い「殿」と呼んでいます。

 

 

【今回のクルマ】日産 セレナ e-POWER

SPEC【ハイウェイスターV】●全長×全幅×全高:4770×1740×1865㎜●車両重量:1760㎏●パワーユニット:モーター+1198㏄直列3気筒DOHCエンジン●エンジン最高出力:84PS(62kW)/6000rpm●エンジン最大トルク:10.5㎏-m(103Nm)/3200〜5200rpm●JC08モード燃費:26.2㎞/ℓ●243万5400円〜382万1040円

 

ブレーキをほとんど踏まずに走れて楽しいと、一般ユーザーにも人気

安ド「殿! 日産のe-POWERシリーズ、売れてるみたいですね」

永福「うむ。ガソリンエンジンで発電してモーターで走る、シリーズハイブリッドというシステムだが、大変よく売れている」

安ド「トヨタのハイブリッドとは構造が違うんですね!」

永福「トヨタのハイブリッドは、エンジンとモーターの動力を合体して走るが、日産のe-POWERは、エンジンは発電することに徹し、モーターのみで走るわけだ」

安ド「それと売れ行きとは関係あるんでしょうか」

永福「あるらしい」

安ド「それはどんなワケで?」

永福「日産のe-POWERはモーターだけで走るので、回生ブレーキの効きをうんと強くできる。ガソリン車でいうエンジンブレーキだ。アクセルを離すだけでかなりブレーキがかかり、ブレーキペダルを踏む必要があまりない」

安ド「ワンペダルドライブというヤツですね!」

永福「ブレーキをほとんど踏まずに走れて楽しいと、一般ユーザーにもウケているようだ」

安ド「“ひと踏みぼれ”というヤツですね!」

永福「知っておるではないか」

安ド「知ってました! でも、モーター駆動でも走っていて違和感がないので、普通の人は言わなきゃモーターで走っているとわからないんじゃないですか?」

永福「回生ブレーキが強くかかるECOモードでは違いは歴然だが、ノーマルモードでは、音の静かなミニバンだなぁくらいの、自然な感じだ」

安ド「ECOモードとノーマルモード、どっちがいいんでしょう」

永福「一般道ではECOモード、高速道路ではノーマルモードがいい。高速道路でECOモードだと、アクセル操作に敏感に反応しすぎて、疲れてしまうのだ」

安ド「僕も高速道路ではノーマルで走りました!」

永福「ただし、高速道路で『プロパイロット』を使う場合は、ECOモードでOKだ」

安ド「『プロパイロット』というのは、日産の自動運転技術ですね!」

永福「自動運転とまではとても言えず、アダプティブ・クルーズ・コントロール+α程度だな。しかし、クルマまかせで前車に追従して走るときは、エンジンブレーキが強力にかかったほうが、速度をコントロールしやすいのだ」

安ド「なるほど!」

永福「総合的に見ると、セレナe-POWERは、ミニバンのなかではなかなか良いな」

安ド「僕もそう思いました! ライバル車と比べて走りに安定感があって、乗り心地も良かったです」

永福「しかし、ミニバンというヤツは決して安くない」

安ド「おいくらでしたっけ?」

永福「試乗車は、車両本体が約340万円。オプションは約80万円」

安ド「400万円オーバーですね! 実燃費は16㎞/ℓ以上でしたが」

永福「うーむ、焼け石に水だな」

 

 

【注目パーツ01】リアサイドスポイラー

低燃費に貢献するルーフ後端形状

ルーフの後端には両端がウネウネしたスポイラー(羽根)が付けられています。小さなウネウネですが、スポイラーは空力性能を向上させるためのアイテムですから、これも燃費性能の向上に少しは貢献しているのかもしれません。

 

 

【注目パーツ02】フロントブルーグリル

エコなイメージのブルーライン

フロント面積のうち大きな割合を占めるグリルには、ブルーのアクセントラインが施されています。内装にも各所にブルーのアクセントが採用されていて、これがエコなイメージと先進性を高める役割を果たしています。

 

 

【注目パーツ03】ハーフバックドア

上部だけ開けられるから便利

ミニバンのバックドアは巨大なので、開ける際に後方に気を使う必要があります。しかしセレナは上部だけ開けることが可能なので、全面を開けるのに比べてスペースを気にせずOK。軽いので力も小さくて済みます。

 

 

【注目パーツ04】15インチエアロアルミホイール

専用デザインで先進性アピール

不思議な紋様をあしらわれたホイールは、e-POWER専用装備。シルバーの面と黒の面を織り交ぜつつ、風切り線をつけることで、先進性とスピード感を感じさせるデザインに仕上がっています。知ってる人が見ればe-POWERだとすぐわかるはず。

 

 

【注目パーツ05】セカンドキャプテンシート

リラックスできる快適仕様

e-POWER専用装備として、2列目にはロングスライドが可能でアームレストもついたキャプテンシートが採用されています。セレナは室内スペースでもミニバントップクラスですが、このシートなら、さらにリラックスして乗れます。

 

 

【注目パーツ06】ヘッドレスト

ミニバン後席の閉塞感を打破

これは3列目シートからの眺めですが、気になるのは1、2列目シートのすべてのヘッドレストに穴が開いていること。その理由は、少しでも乗員に開放感を感じさせるためだとか。もちろん座面も高めに設定されています。

 

 

【注目パーツ07】スマートアップサードシート

できるだけ窓を隠さない設計

ミニバンの3列目シートは前倒し式や床下収納など様々なアレンジ方法がありますが、セレナは側面跳ね上げ式を採用しています。ただし、跳ね上げてもサイドのガラスをほとんど隠さない設計で、運転時の視界を妨げません。

 

 

【注目パーツ08】キャップレス給油口

手を汚さずに給油できる

フタを開けると中にはキャップのない給油口があります。これは日産としては初採用なんだとか。セルフガソリンスタンドが全盛の昨今ですし、給油時に手を汚したくないというドライバーからは、好評に違いありません。

 

 

【注目パーツ09】プロパイロット

“条件付き”自動運転システム

プロパイロットは、高速道路の同一車線内において、アクセルやブレーキ、ステアリングをクルマが自動操作してくれるシステム。セットすればアクセルやブレーキはほぼ自動ですが、ステアリングはあくまで補助です。

 

 

【これぞ感動の細部だ】e-POWER

ワンペダルのみの操作で加速から減速まで自在に走れる

エンジンで発電した電力を用いてモーターで駆動するのがe-POWERシステムです。モーターならではの強い制動力を持つ回生ブレーキの特徴を利用して、アクセルペダルの踏み戻しだけで、加速も減速もできてしまいます。一昨年にノートで初採用されましたが、ミニバンでもその魅力は健在。トルク感のあるEVらしい走りを味わえます。

 

 

撮影/池之平昌信