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2018/12/9 17:30

130年の歴史を持つ伊予鉄道 — オレンジ電車に乗って松山郊外のおもしろ発見を楽しんだ

 

【伊予鉄の発見4】ホーム上に橋の構造物が突き出た不思議な駅

松山市駅に戻り、次はその先の、横河原(よこがわら)線に乗車することにしよう。

 

横河原線は伊予鉄では最も長い距離を持つ路線で1899(明治32)年10月4日に現在の松山市駅〜横河原駅間の全線が開業している。長年にわたり採算が取れず、SL列車やディーゼル車両が走り続けた。1967(昭和42)年にようやく電化が完了している。その後は、松山市と、松山のベッドタウンとなった東温市(とうおんし)を結ぶ重要な路線となっている。

 

この路線でおもしろいのは松山市駅の次の駅、石手川公園駅(いしてがわこうえんえき)だろう。ちょっと不思議な駅だ。まずは写真を見ていただこう。

↑石手川の上にある石手川公園駅。橋の構造物がホーム上に突き出ている。2両編成ならば問題は無いが、3両編成の松山市駅側に乗車した人は、下車の際、少し面食らうことになる

 

↑同トラス橋は1893年の製造。鉄道用トラス橋としては日本最古のもの(移設されたものを除く)。橋には「土木学会選奨土木遺産」に認定されたことを示すプレートが付けられる

 

写真を見ると分かるように、トラス橋(鉄道橋に多い)の橋の構造物がホーム上に突き出ている。下車しようとすると、運悪くこの構造物が目の前に、なんてことも。ちょっと面食らうホームだ。ただ、トラス橋独特の三角の編み目状の構造物のすき間をかがんで通る、といった不思議な体験が楽しめる。

 

歴史的な橋で、そのことを示すプレートも付けられる。日本最古の鉄道用のトラス橋でもあるのだ(移設されたものを除く)。今も現役、さらに日本最古の橋が横河原線で、今も使われていたことに驚かされた。

↑見奈良駅(みならえき)付近を走る700系。同駅のそばには東温市役所があるものの、田畑が広がる一帯だ

 

福音寺駅(ふくおんじえき)付近からは沿線に田畑が多く広がるようになる。より松山市の郊外といった印象が強くなる。松山市駅からちょうど30分で終点の横河原駅に到着した。2016年3月に建て替えられた新駅が迎えてくれる。

↑横河原駅はホーム1面、線路1線のシンプルな構造。100年以上たった古い駅舎が建て替えられ、2016年からは快適な新駅舎となっている。今となっては貴重な旧塗装の3000系がホームに停車中。8分間停車した後に、松山市方面へ折り返していく

 

【伊予鉄の発見5】JR駅のすぐ目の前なのに駅名が異なる不思議

松山市駅に戻り最後に郡中線(ぐんちゅうせん)に乗車してみよう。郡中線は松山市駅と終点・郡中港駅(ぐんちゅうこうえき)間、11.3kmを24分で結ぶ。列車は早朝と深夜を除き15分間隔で運転される。ただし、松山市発が朝7時台5本あるのに対して、朝8時台の松山市駅発が2本に減るので気をつけたい。

↑松山市駅を発車した電車は半径201mという急カーブを抜けて郡中線へ入る。同カーブの右には高浜線などの路線への連絡線が設けられている

 

郡中線の歴史も古い。1896(明治29)年に南予鉄道(なんよてつどう)の手により開業(現・松山市駅〜郡中駅間)、1900(明治33)年には伊予鉄道の路線となっている。こうした歴史を持つ路線ということもあり、古い重厚な造りの駅舎に出会うことができる。建物好きには、なかなか興味深い路線と言って良いだろう。

↑松山市駅構内の急カーブを通り抜けた後は一転、余戸駅(ようごえき)付近まで3kmにわたり直線路が続く

 

↑郡中線の松前駅(まさきえき)。玄関口が古風な木造駅舎が残る。資料が伊予鉄に残っていないので断言できないが、かなり古いことは確かだろう

 

郡中線の古い駅舎は岡田駅と松前駅(まさきえき)が代表的。岡田駅は1910(明治43)年に開業、1896(明治29)年に開業した古い駅だ。

 

それぞれ何年に建てられた駅舎が残っているのか、伊予鉄に資料が残っていないのが残念なところ。明治期の木造駅舎が残っていたら、それこそ大変なことだ。筆者の推測ながら松前駅の駅舎は、昭和初期の建築様式に近いと思われる。1937(昭和12)年に線路が762mmから1067mmに改軌された時に、建て直されたものではないのだろうか。

 

昭和初期の建築としても、かなり貴重だ。歴史の重み、風情を感じられる駅舎だけに、大事にしていただけたらと思う。

 

↑郡中線の終点、郡中港駅。ホームは1本、線路1線で5分ほど停車して、折り返していく。郡中線は開業当初、一つ手前の郡中駅までの路線だった

 

そうした古い駅舎をじっくり楽しみつつ終点の郡中港駅を目指す。郡中線は当初は、郡中駅が終点だった。1939(昭和14)年に、0.6kmほど延ばされ、郡中港駅が終点となっている。

 

この駅も、ちょっとしたおもしろい発見がある。駅前を出て、目の前の交差点へ向かうと、道路の向かい側にJR予讃線の伊予市駅がある。だが、至近距離にありながらも駅名が異なっている。

 

1930(昭和5)年、開業当時のJR伊予市駅は「南郡中駅」という駅名だった。その後の1957(昭和32)年4月に「伊予市駅」と改名されている。実は駅がある地域は、かつて郡中町(ぐんちゅうちょう)だった。その名を元にして駅名が付けられていた。

 

ところが1955(昭和30)年、付近の町村が合併し、伊予市となる。それにあわせてJR(当時は国鉄)は駅名を伊予市駅に改名、一方、伊予鉄は、旧来の郡中という名が入った駅名を残したという経緯があった。

↑郡中港駅前(伊予市駅前)にある手づくり交流市場「町家」。複数のテナント店が入り特産品販売コーナーがある。広場では定期的にクラシックやジャズの演奏会などが開かれていて楽しめる。伊予鉄の旅の最後にぜひ立ち寄りたいスポットだ

 

こうした駅名の変遷もおもしろい。さまざまなところで、おもしろい発見が楽しめた伊予鉄の旅。

 

それこそ伊予鉄“いーよ!”と思うのだった。

 

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