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2018/12/22 18:00

これだけ多彩な魅力が潜む路線も珍しい — 祝SL復活!乗って見て遊ぶ「秩父再発見」の旅

おもしろローカル線の旅26 〜〜秩父鉄道(埼玉県)〜〜

羽生から、熊谷、寄居、さらに秩父と埼玉県内を東西に縦断するように走る秩父鉄道。東京に一番近いSL列車が走る路線としても人気が高い。

 

秩父鉄道の魅力はSL列車だけでない。乗れば乗るほど、新たな発見がある。四季折々、沿線を彩る自然に加え、観光も魅力いっぱい。さらに鉄道好きには見逃せない貨物列車も走る。さあ、秩父鉄道「再発見の旅」に出かけよう。

↑現在の主力車両は7500系(元東急8090系)や7000系(元東急8500系)。ほか5000系(元都営地下鉄三田線6000形)といった東京を走った車両が多く使われている。写真は大麻生駅〜ひろせ野鳥の森駅間を走る7500系。春は荒川堤防の桜が見事に花開く

 

【秩父鉄道の歴史と概要】絹や木材輸送のため路線が計画された

まず路線開業の歴史および、路線の概要を見ておこう。秩父鉄道の歴史は関東地方を走る民営鉄道の中では、古参の部類に入る。

路線開業上武鉄道(じょうぶてつどう)により1901(明治34)年10月7日に熊谷駅〜寄居駅間が開業
現在の路線と距離秩父鉄道秩父本線・羽生駅〜三峰口駅間71.7km、三ヶ尻線7.6km(貨物専用路線)
駅数37駅(ほか貨物駅4駅あり)

 

開業は明治期だったものの、当時の日本は日清戦争後の不況が重なり、同会社も資金難に陥った。創業に携わった人たちが私財を投じるほどまで状況は厳しく、路線の延ばせない状況だった。1911(明治44)年に金崎(皆野町)までようやく延伸する。

 

さらに荒川を渡る橋梁の工事を進めるなどして、ようやく1914(大正3)年に現在の秩父駅まで路線が延ばされた。1916(大正5)年には社名が秩父鉄道となる。

 

一方、熊谷駅〜羽生駅(はにゅうえき)間の開業は北武鉄道(ほくぶてつどう)という会社により進められた。1922(大正11)年8月1日に羽生駅〜熊谷駅間の路線が全通している。同年の9月18日に秩父鉄道が北武鉄道を合併した。

 

最終的に、現在の三峰口駅まで路線が通じたのは1930(昭和5)年のことだった。実に30年近い歳月をかけて徐々に路線が延ばされていったわけだ。

↑太平洋戦争後は車両不足を補うために元国鉄のクハニ20形(写真左)などの車両を利用。昭和30年代に入り300形、500形、600形といった自社製の車両も導入された。クハニ20形ほか古い車両は三峰口駅に隣接する「秩父鉄道車両公園」で保存される

 

↑1986年以降には国鉄の近代化に貢献した101系車両が秩父鉄道に導入された。2014年3月まで30年近く、秩父路を走り続けた

 

路線の延伸は長い歳月がかかったものの、それまで筏に頼っていた秩父の木材の切り出しに鉄道が利用されるようになり、特産品の絹の輸送にも鉄道が使われた。

 

また武甲山からの石灰石の輸送も行われるようになり、秩父鉄道に大きな利益をもたらした。1922(大正11)年には熊谷駅〜影森駅間の全線が電化される。これは地方の民営鉄道としては最も古いとされている。

 

大正期の電化後と、昭和30年代には300系といった地方私鉄としては、意欲的な車両を自社発注したものの、その後は国鉄や、大手私鉄で使われた車両を導入して輸送力を確保している。国鉄の近代化に大きく貢献した101系もつい最近まで走っていた。引退する前に最後の雄姿に見ておきたいと多くの鉄道ファンが沿線を訪れた。

 

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