【秩父再発見の旅1】関東平野の広さを感じる行田市の田園風景
ここまで話が車両中心になってしまったが、秩父鉄道秩父本線の再発見の旅に出かけよう。まずは秩父本線の起点となっている羽生駅(はにゅうえき)から旅をスタートする。
秩父鉄道といえば、SL列車や急行などの優等列車が走る熊谷駅〜三峰口駅間に注目が集まりがちだが、羽生駅〜熊谷駅間も見逃せない区間だ。
東武鉄道伊勢崎の改札を出て、秩父鉄道の改札へ向かう。秩父鉄道は交通系ICカードがまだ利用できない。そのため券売機で切符を購入して乗車する。
週末に秩父鉄道を旅する時には「秩父路遊々フリーきっぷ」(大人1,440円)を購入するとおトクで便利だ(土曜・休日・SL運転日のみ利用可能)。また西武鉄道からも、西武沿線内の主要駅から秩父鉄道の野上駅〜三峰口駅間の乗継ぎが可能な「秩父フリーきっぷ」が販売されている。
羽生駅発の電車の発車時刻は、時間帯でまちまちで、15〜30分間隔で電車が出ている。ちなみに平日と、土曜・休日では、発車時間が大きく異なるので、注意したい。筆者はネットで時刻と調べつつ乗り巡ろうとした時に、曜日の確認を疎かにして大失敗したことがあった。ご注意を。
羽生駅を出発した電車は、2つ先の新郷駅までは住宅地の中を走る。新郷駅を出ると景色が開ける。次の武州荒木駅(ぶしゅうあらきえき)までは、ほぼ田園風景となる。付近は行田市にあたり、とくに路線の南側の田園風景が見事だ。約1km先に国道125号の行田バイパスが見えるが、障害物がないために国道を走るクルマがくっきりと見えた。
関東地方を走る鉄道路線で、ここまで左右に、さらに遠くまで田園風景が広がる風景は記憶にない。これだけでも今となっては、お宝のように感じた。ちなみに北側は遠くに群馬県の赤城山に望むことができる。
【秩父再発見の旅2】広瀬川原駅という駅をご存知でしょうか?
熊谷駅の手前で上越新幹線の高架橋をくぐり、JR高崎線を立体交差で越えて、熊谷駅へ到着する。
羽生駅発の電車は秩父本線全線を通して三峰口まで走るものと、熊谷駅止まり、影森駅止まりの電車があるので注意したい。たとえ熊谷駅止まりの電車に乗っても、対面するホームから、熊谷駅より先へ行く電車が、適度な時間差で接続しているので便利だ。
熊谷駅から先は、やはり秩父本線のハイライト区間といって良いだろう。寄居駅までは、鉄道ファンにとって、心も浮き浮きするような区間だ。さらにその先は、風景が変化に富み、四季折々の風景が楽しめる。
なぜ、熊谷駅〜寄居駅間が鉄道ファンにとって浮き浮きする区間なのか。車両基地や、貨物線の分岐ポイント、撮影名所など、ご存知の方も多いかも知れないが、改めて紹介していこう。
熊谷駅を発車した電車は、上熊谷駅と石原駅の2駅ほど、JR高崎線と平行して走る。石原駅の先で、JR高崎線から分かれ、上越新幹線の高架橋をくぐり、西へ向かう。そして、しばらく熊谷市郊外のベッドタウンを見ながら進む。
ひろせ野鳥の森駅が過ぎたら北側の車窓に注目したい。次の大麻生駅の間に広瀬川原(ひろせがわら)車両基地が広がる。ここには秩父鉄道の電車と、色とりどりの貨物用電気機関車、さらに「SLパレオエクスプレス」用のC58形蒸気機関車や、12系客車が停められている。同基地内には熊谷車両区、そして検査を行う熊谷工場、また蒸気機関車用の転車台も設けられている。
実はこの場所、車両基地として知られているが、貨物駅の広瀬川原駅(ひろせがわらえき)も兼ねている。同区間は貨物列車が通らず(東武鉄道から委託される甲種輸送列車などのみ)、この場での貨物の取り扱いはほぼないのだが、今でも駅として同鉄道のダイヤグラムには掲載されている。
大麻生駅の一つ先、明戸駅(あけとえき)と武川駅(たけかわえき)間では、北側の車窓を注意しておきたい。
駅間で1本の線路が合流してくる。この路線は三ヶ尻線(みかじりせん)と呼ばれる貨物専用線だ。線路の先はJR高崎線の熊谷貨物ターミナル駅まで続いている。貨物列車が定期的に走り、鉄道好きにとっては興味深い路線でもある。
三ヶ尻線は武川駅まで秩父鉄道の秩父本線と平行して線路が続く。武川駅には機関車検修設備も設けられ、常に数両の貨物用機関車が停車している。