【2018年の話題3】有料座席指定サービス制の列車が増える
ここ数年で急速に各鉄道会社に普及しつつあるのが、有料座席指定サービス制の電車だ。これまでJR東日本の「湘南ライナー」や東海道線などのグリーン車、京浜急行「京急ウィング号」など固定式の座席を利用したサービスは見られた。
2008年に東武鉄道が座席の向きをロングシートからクロスシートに変更可能なデュアルシートを持つ車両を東上線に導入し、座席定員制の「TJライナー」を走らせた。同列車が登場した当時は各社、模様眺めという傾向が強かった。
ところが、2017年3月から西武鉄道の座席指定制の有料列車「S-Train」の運行を開始。2017年8月には京阪電気鉄道の特急用電車8000系に座席指定特別車両「プレミアムカー」を1両、連結して走り始めた。
各社とも、将来の予測される利用者の減少を念頭に置き、少しでも利益を上げるべくこうした有料サービスを行う列車の導入を図っている。
そして2018年には新たに2社の有料座席指定サービス制の電車が走り始めた。
◆京王ライナー(2018年2月22日サービス開始)
「京王ライナー」は京王電鉄が京王線、京王相模原線で始めたサービス。前年に座席の向きが変更できるデュアルシートを備えた5000系を導入し、今年の2月から全座席指定制の有料列車として運行を開始した。乗車時には乗車券と別に座席指定券400円が必要となる。
現在のところ、平日の20時以降、土曜・休日には17時以降、新宿駅発→橋本駅行きと、新宿駅発→京王八王子駅行きが運行されている。両行程とも、最初に停まる駅までが有料で、以降の乗車は座席指定券が不要となる。
下りのみの列車だったが、11月からは特定日のみ運行される上り有料臨時列車の「Mt.TAKAO」などの運転も行われている。
◆東急大井町線「Q SEAT」(2018年12月14日サービス開始)
東急の大井町線でも有料座席指定制サービスを導入。新型6020系にロングシートとクロスシートの切り替えが可能なデュアルシートを備えた「Q SEAT」車両が連結された(大井町駅から3両目)。「Q SEAT」とは品質(Quality)、迅速(Quick)のQに座席の「SEAT」を組み合わせ名付けられたとされる。
オレンジ色にラッピングされた車両が「Q SEAT」車で、計45席が用意されている。指定席料金は全区間一律で400円だ。
現在は平日の19時30分以降、大井町駅発→長津田駅行きの5列車が運行されている。大井町駅から自由が丘駅までは乗降が可能、二子玉川駅〜鷺沼駅間は降車専用駅、それより先はフリー乗降が可能となっている。
有料の車両を1両に限定した「Q SEAT」。現在は試行の段階とされるが、1両のみのため、柔軟な変更が可能のように思われる。
この座席指定制の有料列車、特急用の車両を使ったサービスまで含めると、すでに多くの鉄道会社で導入されている。京王と東急が導入したことにより、関東を走る大手私鉄では相模鉄道のみが走らせていないところまで“成長”した。
さらに、2019年春にはJR西日本の東海道・山陽本線を走る「新快速」にも同様のサービスが導入される予定だ。今後どのような有料サービス列車が走るか注目される。
【2018年の話題4】既存車両をリメイクした観光列車が多く出現
JR各社に加えて多くの鉄道会社で生み出されてきた「観光列車」。すでに出尽くした感があるなかで、2018年に登場した観光列車は既存の車両をリメイクして、個性的に仕立てた車両が目立った。
◆JR東日本BOSO BICYCLE BASE(2018年1月6日運行開始)
JR東日本が運転を開始した「BOSO BICYCLE BASE」。「B.B.BASE」の略称で親しまれている。房総地区で高まりつつあったサイクリング需要を念頭に、スポーツサイクルを分解せずに、そのまま積み込めるように車内にサイクルラックを用意、ペダルと一体化して便利なビンディングシューズを履いたままで乗車できるよう、すべり止め効果があるゴム床材が床面に使われている。
元になった車両は209系。南武線を走っていた通勤・通学用電車が改造され使われた。これまでにないタイプの観光列車を、本社でなく千葉支社が企画したことも画期的と言えるだろう。筆者の私事で恐縮だが、学生時代に自転車競技に打ち込んでいただけに、もう少し早く(だいぶ前かも?)生まれていたら良かったのに、と思える観光列車だ。
◆叡山電鉄 観光列車「ひえい」(2018年3月21日運行開始)
叡山電鉄の叡山本線(出町柳駅〜八瀬比叡山口駅間)用の車両として登場した観光列車「ひえい」。正面にゴールドの大きな楕円という思い切ったデザイン。この楕円は叡山電鉄が走る比叡山、鞍馬山が持つ神秘性をイメージしたものだとされている。同車両は2018年のグッドデザイン賞に輝いた。
利用された電車は叡山本線を長らく走ってきた700系。側面の窓も楕円にするなど、大きく造りなおされている。初めてその写真を見た時は、驚かされた。
だが、京都の街中を走る姿は、品が良く、車内は高級感が感じられた。実際に、同車両に出会い、また乗車してみて、違和感をまったくなかった。観光列車だが、特別な乗車料金が不要ということもうれしい。
今後、中小の民営鉄道が生き残っていくためには、このぐらい大胆な車両を採り入れないと生き残れない、という一例なのかもしれない。