ベテラン自動車ライターの永福ランプとフリーエディターの安ドが、深いような浅いようなクルマ談義をするクルマ連載。今回は、VIP御用達で知られる高級SUVのGクラスを試乗! 超ロングセラーだった先代モデルとの違いとは?
【この方に聞きました!】
永福ランプ(清水草一)
日本中の貧乏フェラーリオーナーから絶大な人気を誇る大乗フェラーリ教の開祖。様々な自動車専門誌や一般誌、Webなどで、クルマを一刀両断しまくっています。2018年になってペンネームを「MJブロンディ」から「永福ランプ」へ変更。
安ド
元ゲットナビ編集部員のフリーエディター。永福ランプを慕い「殿」と呼んでいます。
【今月のクルマ】メルセデス・ベンツ/Gクラス
SPEC【AMG G63】
●全長×全幅×全高:4666×1985×1975㎜●車両重量:2530㎏●パワーユニット: 3982㏄V型8気筒DOHCツインターボエンジン●最高出力:585PS(430kW)/6000rpm●最大トルク:86.7㎏-m(850Nm)/2500〜3500rpm●JC08モード燃費:6.6㎞/ℓ
1562万円〜2035万円
安ド 「新しいGクラス、乗り心地がスゴく良くなっていてビックリしました!」
永福 「うむ。先代モデルは乗り心地がメチャメチャ悪かったけれど……ということだな」
安ド 「はい! あれはトラックみたいでしたけど、新型は現代の高級SUVです!」
永福 「トラックみたいなラダーフレーム構造で、この良好な乗り心地や直進安定性を実現するのは、並大抵のことではなかったらしいな」
安ド 「えっ、新しいGクラスも、構造はそのままなんですか!?」
永福 「Gクラスは極限の悪路走破性を持たねばならないクルマ。そのためには、頑丈なラダーフレーム構造は絶対条件だ。そのうえで、これほどの快適性を実現したクルマは、この新型Gクラス以外にあるまい」
安ド 「一体どうやって実現したんでしょうか!?」
永福 「詳しいことは知らん」
安ド 「ガクー!」
永福 「とにかく、いっぱいお金をかけたのだ」
安ド 「上位クラスだと2000万円オーバーですもんね!」
永福 「オフロード四駆のスーパーカーだな」
安ド 「でも、新型Gクラスは、先代モデルのイメージを残そうと、かなり頑張っていますね!」
永福 「そのようだ」
安ド 「板みたいなドアや、ドアノブの形、ドアの閉まり方まで、同じフィーリングを目指したそうです。顔もソックリですよね!」
永福 「ソックリと言えばソックリだが、違うと言えば違う」
安ド 「それはまぁ……」
永福 「先代モデルは、それこそ軍用車みたいに真四角だったが、新型の顔は、微妙に丸くなった。そこが好きになれない」
安ド 「実は僕もです!(笑)」
永福 「デザインに、先代モデルのイメージがしっかり残っているだけに、微妙な違いが気になってしまうのだ。ホンモノとニセモノのように」
安ド 「なるほど……」
永福 「それに、新型はあまりにも幅が広すぎる。何せ2m近くもあるのだ」
安ド 「道路の狭い住宅街では気を使いますね!」
永福 「真四角だから見切りはいいかと思ったが、オーバーフェンダーが大きく出っ張っていて、歩行者を引っ掛けそうで怖かった」
安ド 「それはオーバーでは……」
永福 「先代モデルは、ものすごくデカいように見えて、実はそうでもなかったのだ。やはり前のGクラスは傑作だったな」
安ド 「もう少し新型の良いところはないんでしょうか?」
永福 「ある。燃費が良くなった」
安ド 「そうなんですね!?」
永福 「前のG63AMGは、エンジンが5・5ℓターボで、実燃費ではたったの3㎞/ℓ程度だった。しかし新型は4ℓターボになり、5㎞/ℓくらい走るぞ」
安ド 「五十歩百歩ですね……」
【注目パーツ01】フロントウィンドウ
空力より大切なものがある
最近の高級SUVは窓を寝かせたクーペっぽいスタイルがトレンドですが、Gクラスは従来どおり垂直に近い角度をキープ。走行中の空気抵抗は間違いなく大きくなるものの、ツッパることは男らしくてカッコいいです。
【注目パーツ02】ドア
雰囲気作りのために残された音
ヒンジ部分が外側にあるなど先代の無骨な印象を引き継いでいます。閉めたときの「バシャン」という野暮ったい音も先代譲り。現代の技術ならもっと静かにできたところを、雰囲気作りのためにあえて残したそうです。
【注目パーツ03】オーバーフェンダー
日本の道路事情では厳しい幅広すぎる全幅
タイヤを取り囲むように前後のフェンダーが張り出しています。これもGクラスらしさでありますが、ボディが大型化した新型ではこのフェンダーのおかげで全幅が2m近くに! 日本の道路事情を考えると不便です。
【注目パーツ04】フロントフェイス
“らしさ”を残しつつも柔和に
Gクラスらしさを強調すべく、丸型ヘッドライトや角ばったバンパー&グリルなどを残しています。ただ、どの部分も微妙に丸みを帯びていて従来のゴツさが和らぎ、愛らしい雰囲気になっているのが残念なところ。
【注目パーツ05】リアシート
↓
座面引き上げでしっかり前倒して荷室が広大に
内装は現代的な高級SUVらしく豪華な仕様。リアシートは肉厚でフカフカですが、前方へ倒して荷室を拡大することもできます。このとき、座面を引き上げてからシートバックを倒すため、荷室をより効率的に使えるのです。
【注目パーツ06】4.0ℓV型8気筒ツインターボエンジン
ハイパワーモデルの強烈な馬力
今回取材したのは“スゴいほう”のAMGモデルですが、エンジンはスタンダードモデルもAMGもどちらも4.0ℓV8ツインターボです。何が違うのかといえばパワフルさ。最高出力は約160馬力、つまり軽自動車2.5台ぶんもの差があるのです。
【注目パーツ07】スペアタイヤ
バックのしにくさも解消
ボディ後端にスペアタイヤを装着することは、クロカン系SUVのアイデンティティになっています。そのぶん全長が伸びるためバックしにくいのですが、スペアタイヤの下側にはこっそりバックカメラが付いています。
【注目パーツ08】サスペンション
現代的になった乗り心地
フロントにダブルウィッシュボーン式が採用されるなど、サスペンションは前後とも一新されて驚くほど乗り心地が良くなりました。先代モデルは軍用車がベースでしたから乗り心地が悪かったのは当然ですが。
【注目パーツ09】ウィンカー
ボンネットに残された特徴
ボンネット上のウインカーは同車のデザインの特徴。ここに突起物があると事故で歩行者と衝突した際に危険度が増しますが、新型では衝撃を感知するとウィンカーが自然に外れる構造になっているそうです。
【これぞ感動の細部だ】電子制御ディファレンシャルロック
デフギア切り替えでオフロード性能を極める
伝統的なオフローダーであるGクラスはフルタイム4WD方式を採用していますが、その駆動力を最適に配分することで、現代的な燃費や効率の良さを実現しているのです。インパネ中央部に設置されたスイッチで、フロント、センター、リア各所に搭載されたディファレンシャルロックを切り替えられ、さらに悪路走破性能を高めることができます。
撮影/我妻慶一