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2019/1/25 19:00

3年待った甲斐がありました。「コペン クーペ」を丸裸にする10のディテール

2019年は現行のコペンが登場して5周年になる。昨年、こちらの記事ではコペンの歩みと進化について、かなりの私見に加えて担当者へのインタビューも交えながら紹介。記事の最後で、コペンに何かが起きるティザーサイトが立ち上がったことについて触れた。

 

そのサイトで公開されたのが、コペン クーペ。2016年のオートサロンに出展されたコンセプトカーが実車化されたモデルである。そのコペン クーペが東京オートサロン2019で初お目見えとなった。本記事では、限定200台、コペンの常識を覆したスペシャルモデルを細部にわたって紹介していく。解説はモータージャーナリストの岡本幸一郎さん。

 

↑画像をクリックするとコペン クーペのオフィシャルサイトに移動します。

ダイハツ

コペン クーペ

248万4000円〜250万5600円(パールホワイトⅢは250万5600円〜252万7200円)

「コペン セロ」をベースにクーペボディ化したモデル。今回紹介するディテール【01】〜【10】以外では、フロントガラスにくもりにくい特性を持つAGC製「eXeview」を世界初採用する。これは、フロントガラス(車内側)の一部に吸水タイプ樹脂膜を特殊コーティング。コート部が車内の空気中の水分を吸収することで、コート部のくもりを一定時間防ぎ、クリアな視界を確保する効果がある。ボディカラーは写真のブリティッシュグリーンマイカのほか、パールホワイトⅢを用意している。

 

限定200台となる本車は、2月11日18:00まで商談権申込を実施。200台以上の申し込みがあった場合、2月中旬に抽選を行う。当選した人にはダイハツから連絡が来て、2月下旬以降指定されたディーラーで商談、成約後、4月中旬以降順次納車される予定だ。

●SPEC【CVT】●全長×全幅×全高:3395×1475×1280㎜●車両重量:850㎏●パワーユニット:658㏄直列3気筒DOHC+ターボ●最高出力:64PS/6400rpm●最大トルク:9.4㎏-m/3200rpm

 

【ディテール01】ルーフライン

「エレガント&エモーショナル」なデザインをテーマとした、ルーフからトランク、リアエンドまでが一体となった流麗なエクステリアこそ、コペン クーペの最大の特徴だ。

 

「2016年のコンセプトモデルの評判がよかったので、できるだけそのままの意匠にしたいと考え、ほぼ同じシルエットを実現しました」と述べるのは、開発を担当した松下和彦さん。造形上で最もこだわったのは、横から見たときのシルエットとのことで、「ルーフから下にかけて流れるラインに、取って付けた感じがないようにした」との言葉どおり、非常にキレイに仕上がっている。

また、斜め後方や真後ろから眺めると、後ろにいくにつれて絞り込みの具合が絶妙で、非常に美しい表情を見せていることにも感心させられる。なお、2016年のコンセプトモデルに対して、保安基準への適合を図るためハイマウントストップランプの位置が若干変更されている。

 

【ディテール02】Bピラー

2016年のコンセプトモデルでは明確なBピラーがなく、フロントサイドウインドウ以降の部分がガラス一体になっていたのに対し、今回のクーペではBピラーをしっかりと見せるようなデザインにされた。Bピラー後方のクオーターウインドウにはガラスではなくダイハツ初となるポリカーボネートを採用。

 

【ディテール03】HKS製マフラー

初代コペンのチューニングを手がけた実績もあり、ダイハツがかねてから厚い信頼を置いているHKSとの共同開発により生まれた、大口径のスポーツマフラーをディーラーオプション設定。街乗りでの快適性を保ちつつ、適度な低音をバランスさせた、低音域から中高音域にかけての心地良いスポーツサウンドが、エンジンの吹け上がりをリニアに演出する。SUS304製で、高耐久グラスウールを採用しており、3年6万kmの保証付き。

 

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【ディテール04】BBS製ホイール

既存のコペンにメーカーオプションで用意されているものと同じメッシュタイプのBBS製鍛造16インチアルミホイールを標準装備。足まわりはグレード「S」用のビルシュタインではなく、新たにHKS製サスペンションキットをディーラーオプションで用意。

 

もともとコペンの足まわりはノーマルでもスポーティで、その性格をさらに強調したのがビルシュタインであるのに対し、同キットでは差別化を図るべく快適性を重視してノーマルよりもバネレートやダンパー減衰力をマイルドに変更。街乗りをエレガントにこなせるようにしている。純正形状の単筒式でフロントには倒立式ショックアブソーバーを採用し、減衰力固定式。3年6万km保証。

 

【ディテール05】ガラスハッチ

「トランクをどうするかには相当に悩みました」と振り返るのは、企画担当の和田秀之さん。取捨選択した上で、やはり意匠を最優先に考え、オリジナルのラインを崩さないガラスハッチを採用するに至ったという。開口部の位置や面積が制約されるため使い勝手の面で影響があるのは仕方がないが、実はラゲッジスペース自体の容量としてはアクティブトップよりも3割ほど大きくなっている

 

【ディテール06】インパネ

インテリア自体にベース車からの変更はなく、グレード「S」と同じく巻メッキオーナメントやシルバー加飾の付くMOMO製革巻ステアリングホイールが標準装備され、CVT車であればパドルシフトも備わる。なお、インテリアカラーは、ボディカラーが「ブリティッシュグリーンマイカ」の場合はベージュ、「パールホワイトⅢ」の場合はブラックの組み合わせとなる。

 

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【ディテール07】シリアルナンバー入りバッヂ

限定200台の特別なモデルらしく、全車のセンターコンソールにシリアルナンバー入りバッジが与えられる。シンプルながら、存在感を放っており、所有する満足度が高い。なお、シリアルナンバーは生産の順番にかかわらず、ランダムに設定されるとのことだ。

 

【ディテール08】シート

シートはベース車と共通で、グレード「S」のレカロシートではなく、標準のフルファブリック製スポーツシートとなる。

 

【ディテール09】ヘッドクリアランス

オープンにかかわる機構がなくなったことで、アクティブトップでは頭部からもっと近かったはずの横方向のクリアランスが広くなっている。ハードルーフのインナーの前側はアクティブトップを流用したFRP(Fiber Reinforced Plastic)製で、後ろ側は専用のカーボン製となる。また、クーペながらオープン時の風の巻き込みを抑えるディフレクターが装着されているのは、なくすと両サイドの出っ張りの見栄えがよろしくないので、「あえて残しました」と松下さんは語ってくれた。

 

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【ディテール10】オープン機構

ハードルーフの構造としては、もともとアクティブトップの部分からトランクフードまでを、ひとつのカーボンで成形したもの。これだけ大きな一体の部品CFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastic)でつくるのは大変だったとのことで、「実際にできあがったときには感動しました」と前出の和田さん。限定車ならではのこだわりを感じさせる部分である。

 

前側のラッチはアクティブトップと共通で、後ろ側は純正のトランクのストライカーを活かしたロック機構を設けるとともに、左右2か所ずつを一般ユーザーには外せない特殊なボルトで固定している。「カーボン(CFRPのこと)を使ったのはダイハツでは初めて。アクティブトップは3分割なのでばらつきを上手く吸収できるところ、ハードルーフは一体なので、出っ張ったり隙間が広かったりすると見栄えがよくないので、高い精度が求められます。最後の最後まで本当に気を使いましたが、上手くできたと自負しています」(前出 和田さん)

 

また、アクティブトップよりも薄くなったが剛性面では向上しており、車両重量はアクティブトップ付きのコペンよりも20kg軽くなっているため、走りが向上していることにも期待できそうだ。

 

【まとめ】

今年、コペンは発売から5年目を迎えるにあたり、もう一度ここで盛り上げんとばかりに、上質さを極めた「コペン セロ スポーツプレミアム Ver.」と、サプライズで披露された「COPEN GR SPORT CONCEPT」とともに壇上に展示され、開催当日の14時から受注が開始された「コペン クーペ」をひとめ見ようと、多くの人が訪れていた。

↑COPEN GR SPORT CONCEPT

国内企画部の榊原さんによると、「やっぱりオープンであってこそコペン」という声もあるそうだが、当日取材した印象ではそれをずっと上回る「かわいい!」、「欲しい!」といったうれしい声もあるという。

 

ダイハツブース全体も活気があり、「遊びゴコロをみんなのものに。」をテーマに、コペンや発売まもないミラ トコット、小型乗用車のトールやブーン、軽商用車のハイゼット トラックなど、それぞれの持つ世界観を生かしながらカスタマイズされたオリジナルバージョンを展示。

 

一般的に発売がある程度経ったモデルは、小変更やマイチェンをしながら、トピックを形成していくもの。しかしコペンは、これほどの力作を出してきた。ダイハツの注力具合が伺える内容である。オーナーにとってはもちろん、コペンファンにとっても特別な一台となる「コペン クーペ」。街中を走る、見かけるのが非常に楽しみなモデルとなること間違いない。

 

【本記事で紹介していないディテールやブース全体のギャラリーはコチラ】

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撮影/小関一尚