ベテラン自動車ライターの永福ランプとフリーエディターの安ドが、深いような浅いようなクルマ談義をするクルマ連載。今回は、アメリカでも高い人気を誇る大型セダン・カムリに追加された新グレード「WS」を取り上げます!
【登場人物】
永福ランプ(清水草一)
日本中の貧乏フェラーリオーナーから絶大な人気を誇る大乗フェラーリ教の開祖。様々な自動車専門誌や一般誌、Webなどで、クルマを一刀両断しまくっています。2018年にペンネームを「MJブロンディ」から「永福ランプ」へ変更しました。
安ド
元ゲットナビ編集部員のフリーエディター。永福ランプを慕い「殿」と呼んでいます。
【今月のクルマ】トヨタ/カムリ WS
SPEC●全長×全幅×全高:4910×1840×1445㎜●車両重量:1570㎏●パワーユニット: 2487㏄直列4気筒エンジン●最高出力:178PS(131kW)/5700rpm●最大トルク:22.5㎏-m(221Nm)/3600〜5200rpm●JC08モード燃費:28.4㎞/ℓ●価格:329万8320円〜434万1600円
安ド「殿! カムリ WSの『WS』って、何の略かご存知ですか?」
永福「うーむ。ワイルド・スポーツか?」
安ド「惜しい! ワールドワイド・スポーティです!」
永福「何と! さすがワールドワイドなカムリだな!」
安ド「えっ、何がワールドワイドなんですか?」
永福「ワールドワイドと言うよりアメリカンかな。何しろアメリカでは2002年から15年連続で乗用車販売台数ナンバーワンだった」
安ド「カムリってそんなに売れてるんですか!」
永福「正確には、ワールドワイドではカローラがナンバーワンだが、アメリカではカムリなのだ」
安ド「なら、ワールドワイド・スポーティっていうのは、ちょっと違うんじゃ……」
永福「まあいいじゃないか。『アメリカ=ワールド』で。世界の超大国なのだから」
安ド「とにかく、日本ではあんまり売れてないカムリが、アメリカでは一番売れてるんですね!」
永福「正確には、真のアメリカ販売台数ナンバーワンはフォードのピックアップトラック Fシリーズだが、あれはトラック扱い。あくまで乗用車の中の1位だ」
安ド「なるほど……」
永福「とにかくカムリは、アメリカではカローラ的存在なのだ」
安ド「超ベストセラーですね!」
永福「日本で見るとこんなにデカいセダンが、アメリカでは普通のサイズ。それだけで、アメリカの大きさがわかるだろう?」
安ド「はい! でも、デザインは結構攻めている印象です!」
永福「このデザインは、アメリカではパワフルなV6モデルに採用されているのだ」
安ド「その顔を移植したのが、このWSってわけですね!」
永福「うむ。日本ではパワーユニットはハイブリッドのままだからな。ただし足まわりはスポーティになっている」
安ド「確かに、走りがしっかりしていて、スポーティでした!」
永福「カムリもアグレッシブになったものだ。15年くらい前、LAでレンタカーを利用したときカムリに乗ったが、本当に平凡で退屈なクルマだった。特に足まわりは、驚くほどブワンブワンに柔らかかったぞ」
安ド「そうなんですか!」
永福「まさにアメリカの太ったカローラって感じだった。それがいまやこんなにスポーティになったのだから、アメリカ人の好みが変わったのだろう」
安ド「僕がビックリしたのは、後席に座ると、意外と天井が低かったこと。アメリカ人でも結構なストレスを感じそうですが……」
永福「それも、スポーティなのが流行りってことだろう。日本にもそんな時代があったじゃないか」
安ド「ありましたね! カリーナEDみたいなクルマがバカ売れした時代が!」
永福「懐かしいな」
【注目パーツ01/リアまわり】スポーティな専用装備が多数
2本出しのマフラーで、すごくパワフルそうです(実際はスタンダード車と同パワー)。中央下部には空気を調整して“くれそう”な板が、バンパー角の上方には“ダミー”の排気口がそれぞれあり、スポーティに見えます。
【注目パーツ02/ツートーンカラー】違う色の屋根でアピール
WS専用色として3種類のツートーンカラーが設定されています。写真のように黒/青ではあまり目立ちませんが、黒/白や黒/赤だとそれなりにアピール度が高いです。ノーマルとは違うのだよ、と、ドヤ顔できるでしょう。
【注目パーツ03/足まわり】スポーティさの秘密はここにあり
専用デザインの18インチアルミホイールが素敵な足まわりですが、このWSの最大の特徴とも言えるのはスポーティなサスペンション。クイックなハンドリングに対応できる、少し硬めの味付けとなっています。
【注目パーツ04/専用シート】スポーティかつ上質
WSには専用デザインのスポーティなシートが搭載されています。素材は合成皮革とファブリックの組み合わせで、スポーティなだけでなく高級感も併せ持ちます。「レザーパッケージ」で本革仕様も選択可能です。
【注目パーツ05/ハイブリッドシステム】譲れないのは燃費性能
スタンダードグレードと同じハイブリッドシステムです。どうせなら大排気量のガソリンエンジンを設定するとか、パワーを増強してほしかったところですが、仕方ありません。ユーザーは燃費性能を求めているのですから。
【注目パーツ06/JBLプレミアムサウンドシステム】オーディオは大迫力のスペシャル仕様
高性能な8chアンプを採用した高音質システム。後席の後方にはサブウーファーも搭載し、迫力ある音を響かせます。ちなみに、今回のWS追加と同時に一部改良されたスタンダードグレードでも搭載できるようになりました。
【注目パーツ07/ヘッドライト】シンプルだけどゴージャス
形としては非常にシンプルな吊り目型ヘッドライトは、スタンダードグレードと同じ仕様。しかし、クリアカバーの中の造形はなかなか立派で、シンプルななかにもゴージャス感をしっかり演出しています。
【注目パーツ08/パドルシフト】付いてることに意義がある
ちょっとした“ラグジュアリーセダン”であるカムリには、パドルなど付いていませんでしたが、このWSは違います。走行中に変速してスポーティに走れます。多くの人がいずれ使わなくなると思われますが。
【注目パーツ09/リアスポイラー】リアデザインにアクセント
スポーティさを醸し出すためには、スポイラー(羽)類の装着は欠かせません。WSのお尻には、このようにちんまりしたリアスポイラーが付けられていて、おとなしいリアデザインのアクセントになってます。
【これが感動の細部/フロント開口部】たくさんの穴でアグレッシブな雰囲気
フロントまわりも専用デザインが施されており、スタンダードグレードとはまったく異なる印象を受けます。エッジの効いた感じがあって、個人的にはこちらのほうが好みです。ボンネット内に空気を取り入れる穴がたくさん、そして大きく空いていますが、ヘッドライト下の黒い部分はダミーで、穴の空いていない段があるだけです。
撮影/我妻慶一