【夕張支線の現状①】日に5往復で特急との接続も今一つだった
夕張支線の乗車ルポからまずお届けしよう。
それは、かなり手間のかかる旅となった。
筆者は前の日、釧路にいて「SL冬の湿原号」に乗車、また撮影をしていた。翌日は札幌に用事があり、夕張支線も消えることだし途中にある夕張に寄ってみようと、それこそ思いつきで立ち寄ろうとした。
ただ、それほど気軽に立ち寄れるほど甘い旅ではなかったのである。
行くのに手間取る理由の一つは、まず夕張駅まで走る列車が少ないこと。日に5往復の普通列車しか走っていない。さらに最終列車が走る時刻が非常に早い。
最終列車は新夕張駅発が18時58分、夕張駅着が19時20分だ。
釧路方面からこの列車に乗り継げる特急スーパーおおぞらがないかを調べる。すると、スーパーおおぞら10号が新夕張駅に停車するのだが19時12分の着で、夕張支線の最終列車にわずかに間に合わない。その前に新夕張駅に停まる特急を調べると、なんと釧路駅を朝6時45分に出発する列車以外にないことが分かった。
これではその日に釧路で何もできない。ということで次の行程をとる。
スーパーおおぞら8号/釧路駅13時39分発 → 南千歳駅17時22分着 → 2633D列車/南千歳駅17時35分発 → 夕張駅19時20分着
かかった運賃が6790円+特急券3110円。結局のところ新夕張駅で下車できなかったために、南千歳駅〜夕張駅間を往復せざるをえず、特急券と運賃で1930円も余分に負担することとなった。“えっー!”と驚かざるをえない。
3月16日のダイヤ改正後には、新夕張駅を停車する特急が増えるというものの、3月末で夕張支線はなくなるのだから、時すでに遅しという印象だ。
【夕張支線の現状②】南千歳駅から最終列車に乗車したものの
釧路駅から特急列車に乗車することほぼ4時間。長時間の乗車に飽きつつ南千歳駅に到着した。特急がやや遅れて到着したこともあり、1番線ホームへ急ぎ移動すると17時35分発の夕張駅行きの最終列車がすぐに入ってくる。
最終列車が17時台発とは。都会の暮らしに慣れてしまっている筆者には、ちょっと不思議な世界に感じられた。さらに列車の運行はのんびりしたものだった。
ホームに入ってきた車両は1両のディーゼルカー。1977年から1982年にかけて国鉄時代に大量に造られたキハ40系だ。乗車したのはその1786号車。昭和54年富士重工製とあり、人間でいえば今年でちょうど40歳となる。
やや古参車両ながらも北海道仕様で2重窓。デッキがあり外がマイナス10度以下の気温でも車内はぽかぽかしている。そんな車両に乗るのは20人弱の人たち。空いていたこともあり4人掛けボックス席を独り占め。リラックスできた。
南千歳駅から石勝線をスムーズに駆けていく。さて次の追分駅。室蘭本線との接続駅だ。この駅で半分の乗客がおりてしまう。
さらにこの駅で列車は24分間の停車となる。そうした車内アナウンスを聞いて“えっー!”という思いに。北海道を走る普通列車なのだから、驚いてはいけないのかも知れない。だが、やはり都会の感覚だと驚かされる。
ただし、鉄道ファンとしては喜ぶべき待ち時間なのかも知れない。ゆっくりと写真撮影が楽しめる。もちろん筆者もホームに降りて撮影に勤しんだのだった。
追分駅での停車中に運転士が交代、室蘭本線の上り下り列車と連絡し、さらに下り特急「スーパーおおぞら9号」が先行していく。
最高時速はキハ40系がいくら頑張っても90km台。一方の特急列車が石勝線内を最高120km/hで飛ばす。普通列車は途中の駅や信号場でひたすら待避せざるを得ないわけである。
追分駅から各駅に停車しつつ30分で新夕張駅に到着する。新夕張駅の一つ手前の石勝線の滝ノ上駅から夕張市内へ入るが、住まいは夕張支線の沿線に多く、市の中心は終点の夕張駅の先にある。とはいえ新夕張駅まで乗客の多少の乗り降りがあったものの、夕張支線に入ると乗客は10人以下となってしまう。
車両を漆黒の闇が包む。途中の駅でまた1人、2人と下車していく。終点の夕張駅に到着した列車に乗車していたのは6人だった。しかし、あれ〜?乗車しているのは、鉄道ファンらしき人たちばかり! 要は終点の夕張駅までは、一般の乗客が誰も乗っていなかったわけだ。まさしく“えっー!”という状況だった。
現在の夕張駅は3代目にあたる。開業当初、夕張駅は現在の位置から2.1km先にあった(現「夕張市石炭博物館」付近)。その後に路線が1.3kmほど短縮され、2代目が夕張市役所近くに移る。現在の駅は3代目で2代目の駅からさらに0.8kmほど路線が短くなった。
最終列車に乗車してきたのは鉄道ファンばかりだったが、ほとんどが折り返す上り列車に乗って帰ってしまう。残されたのは自分1人? これまた“えっー!”という思いになる。乗るだけでなく、町の雰囲気も味わった方が鉄道の旅は楽しいのではないだろうか、と思う。これは個人的な感想なのだが。