乗り物
自転車
2019/3/10 19:30

プジョーの「新エンジン」は良いのか? 308で考察してみた

ベテラン自動車ライターの永福ランプとフリーエディターの安ドが、深いような浅いようなクルマ談義をするクルマ連載。今回は、フランスを代表するブランド・プジョーの、新エンジンを搭載した売れ筋ハッチバックを試乗しました!

 

【登場人物】

永福ランプ(清水草一)

日本中の貧乏フェラーリオーナーから絶大な人気を誇る大乗フェラーリ教の開祖。様々な自動車専門誌や一般誌、Webなどで、クルマを一刀両断しまくっています。2018年になってペンネームを「MJブロンディ」から「永福ランプ」へ変更。

 

安ド

元ゲットナビ編集部員のフリーエディター。永福ランプを慕い「殿」と呼んでいます。

 

 

【今月のクルマ】プジョー/308

SPEC【Allure BlueHDi】●全長×全幅×全高:4275×1805×1470㎜●車両重量:1330㎏●パワーユニット: 1498㏄直列4気筒ターボディーゼルエンジン●最高出力:130PS(96kW)/3750rpm●最大トルク:30.6㎏f-m(300Nm)/1750rpm●JC08モード燃費:24.3㎞/ℓ●283万9000円〜359万円

 

安ド「殿! プジョー308を取り上げるのはこれが2回目ですね!」

永福「なにぃ!?」

安ド「2年半ほど前に、ワゴン版のSWを取り上げてます」

永福「なんと!」

安ド「殿はよっぽどプジョー308がお好きなんですね」

永福「いや、それほど好きではない。しかし、いつも真剣に購入を検討している」

安ド「な、なぜですか!?」

永福「ちょうどいいサイズと価格の実用的なハッチバック車で、走りは軽快。そしてクリーンディーゼルモデルがある。これが理由だ」

安ド「つまり、いいクルマだっていうことですね!」

永福「いいクルマなのだが、フランス車としてはデザインが地味すぎる」

安ド「確かに、フランス車なのにドイツ車っぽいと思います!」

永福「なのであまり好きではないが、実用的には欲しくなる」

安ド「それにしても、登場から4年も経ったプジョー308を、なぜまた?」

永福「今回、ディーゼルエンジンが1.6ℓから1.5ℓにダウンサイジングされたからだ」

安ド「それは一大事……でもないですね。たった100㏄ですか!?」

永福「うむ。いま欧州では、ディーゼルへの風当たりが強いのは聞いているだろう」

安ド「はい! VWのディーゼル不正問題がきっかけとか」

永福「それで、ディーゼルの排ガス規制が徐々に厳しくなっていて、小排気量のディーゼルは、コスト的に非常に厳しくなっている」

安ド「そうなんですか!」

永福「そんななかプジョーは、あえて排気量を小さくして、厳しい規制をクリアした。さすがはディーゼルの本場・フランス車だ」

安ド「で、乗った感じはどうだったんですか?」

永福「前と大差なかった」

安ド「ガクー!」

永福「微妙にレスポンスが悪くなったのは、排ガス規制対策だろう。しかし全体としては、しっかり性能を維持している。値段も300万円くらいからで、輸入ディーゼル車としては非常に手頃だ」

安ド「今回はATが6速から8速になってますしね!」

永福「ATは日本のアイシン製。信頼性は高いぞ」

安ド「それはポイントですか?」

永福「大事なポイントだ。プジョー車のアキレス腱はATの故障と言われていたからな」

安ド「そうなんですか!」

永福「なにせフランス人はATが嫌いで、需要があまりなかった。だから開発も進まなかった。ATを日本製にしたのは、本当に正解だ」

安ド「日本では99%がAT車ですもんね! フランスではどうなんですか?」

永福「かつては99%、MTだったと思うが、今はAT率が30%くらいに増えたらしい」

安ド「それでも30%ですか……」

 

【注目パーツ01/モード切り替えスイッチ】気分に合わせて走りを変える

走行モードは、ノーマルのほか、スポーツ、エコと3種類から自由に選ぶことができます。それぞれシフトタイミングやステアリングフィーリングなども変わるので、そのときの気分に合わせてドライブを楽しめます。

 

【注目パーツ02/制限速度表示】高級車のような安全装備

走行中、メーターの間にある小型ディスプレイには、制限速度が表示されます。これは、道路脇に立てられている速度標識をカメラが読み込むことによって実現しているシステムですが、まるで日本やドイツの高級車のようです。

 

【注目パーツ03/小径ステアリングホイール】運転が上手くなった気がする

ステアリングの形状は真円ではなく、楕円形になっています。非常に扱いやすく、運転が上手くなったような気がしてきます。ちなみに、メーターがステアリングの上側から見えるというのも、このクルマの特徴です。

 

【注目パーツ04/8速AT】信頼性も実力も高レベル

一部グレードにのみ搭載されていた8速ATが全グレードに拡大採用されました。日本製ということで信頼性が高いのが特徴です。シフトタイミングも自然で、力不足を感じることもなく、クセのない走りを味わえます。

 

【注目パーツ05/ヘッドライト】精悍な雰囲気はまるでドイツ車

世界的に流行っているLEDが埋め込まれているヘッドライトは、これだけ見るとなんだか精巧なドイツ車のようです。本来、奇抜な形状などで特徴を主張してきたフランス車だけにもう少し遊び心が欲しいところではあります。

 

【注目パーツ06/カメラ&レーダー】本場の大衆車も採用する時代

自動車界の最新トレンドに沿って、308にもレーダーとカメラが、それぞれフロントウインドウ中央上部とフロントバンパー中央部に装着されています。ユーザーは走りの良さより安全性能を優先する時代ですから当然でしょう。

 

【注目パーツ07/1.5ℓ クリーンディーゼルエンジン】排気量ダウンも出力はアップ

規制対策で排気量は従来より100cc少なくなりましたが、最高出力は10馬力、燃費も15%程度向上されています。実用性の高さは高レベルで、今後はこのエンジンが、プジョー率いるPSAグループの主力エンジンになるのだとか。

 

【注目パーツ08/給油口&尿素補充口】ブルーのキャップはエコの印

給油口のフタを開けると、給油キャップの横にブルーのキャップが並んでいます。これは、排気ガスをクリーン化するのに使用する尿素を補充するためのもので、メルセデス・ベンツなども同様のディーゼルシステムを採用しています。

 

【注目パーツ09/カップホルダー】ひとりで運転することが多いから?

カップホルダーが乗員分足りません。フロントはセンターコンソールに1箇所、リアはシートバックの肘掛けに2箇所のみ。運転中にエスプレッソを飲むであろうフランス人は、ひとりでドライブすることが多いのかもしれません。

 

【これぞ感動の細部だ/ACC(アクティブ・クルーズ・コントロール)操作部】見えない位置にあるのは狙いか偶然か

ACCを操作するためのレバーは、ステアリングの左奥からこっそりと生えています。運転中に操作する際、まったく見えないので手さぐりで操作することになりますが、慣れるまで大変です。もしかしたら、このように運転の自動化に反しているような部分が、いまだMT比率の高い欧州車らしさとも言えるのかもしれません。

 

撮影/我妻慶一