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2019/4/6 18:00

鈴鹿山脈を眺めて走る三重のローカル私鉄−−10の新たな発見に胸ときめく

【三岐線で新発見⑨】貨物は日本で唯一のセメント輸送車両だった

旅客営業とともに三岐線で忘れてはいけないのが、貨物輸送だろう。日に7本の東藤原駅発、富田駅行きの貨物列車が走っている。セメント工場がメンテナンスなどで休業する日以外、変らずに走っているのだから、鉄道好きにはたまらない。

 

さて、この7本のうち大半が黒いタンク車を連結して走っている。このタンク車の中身は?

↑2両連結の電気機関車が黒いタンク車を牽引する。三岐線の貨物輸送は活発で、工場のメンテナンス休みを除きほぼ毎日、貨物列車が東藤原駅〜富田駅間を往復している

 

タンク車の中身はセメント。藤原工場で造られたセメントの粉体をタンクに載せて運んでいる。実は粉体で運ばれるセメント輸送はここだけ。

 

秩父鉄道や、岩手開発鉄道でもセメントに関わる輸送が行われている。だが、2社の輸送は、あくまでセメントの原材料となる石灰石を鉱山近くの中継基地から、工場へ運ぶ貨物列車だ。粉体で運ぶという姿は今や貴重というわけだ。

 

富田駅まで運ばれたセメント輸送列車はその後、JR貨物に引き継がれ、四日市港に運ばれる。港でも貴重なシーンをお目にかかれるので、後ほどお伝えしたい。

 

 

【三岐線で新発見⑩】不思議な形の貨車は何を運んでいるの?

黒いタンク列車とは異なる白い貨車を牽く列車にも出会うことがある。この貨車は三岐線を含め東海エリアでしか見ることができない貴重な車両だ。

↑三岐線内を走るフライアッシュ(石灰灰)の輸送列車。ホキ1000形というホッパ車で運ばれる。ホッパ車とは積載物を上から積み、下から降ろす構造をした貨車のこと

 

↑ホキ1000形を使った輸送は三岐線の富田駅からJRの路線を通り、衣浦臨海鉄道の碧南市(愛知県)まで運ばれている

 

貨車が運んでいるのは三岐線・東藤原駅からは炭酸カルシウム(炭カル)。そして、行った先で載せるのがフライアッシュ(石炭灰)だ。フライアッシュを載せて東藤原駅に戻ってくる。それぞれ何に使われるのかだろう。

 

炭酸カルシウムはセメントの材料となる石灰石を粉にしたもので、火力発電所で石炭を燃やす時に、公害防止用の資材として使われる。一方のフライアッシュは石炭を燃やした時にできる灰で、セメントを造る時に、混合剤として原料に混ぜて使われる。

 

片方向は空荷が多いという鉄道による貨物輸送。この輸送では空荷がない効率的な輸送で、非常に珍しい貨物輸送でもあるのだ。三岐線ではこのように旅客輸送だけでなく、貨物輸送も活発に行われていた。積み荷まで分かると、鉄道とともに資源の流れが見えてきておもしろい。

 

 

【三岐線おまけ】セメント輸送は貴重な橋を渡って行われていた

富田駅まで運ばれたセメント輸送列車はその後、どこまで行っているのだろう。ここからは三岐鉄道の手から離れるが、非常に珍しい輸送が見られるので、触れておきたい。

 

JR富田駅からJR貨物のDF200形式ディーゼル機関車がタンク貨車を牽引、四日市駅まで走る。四日市駅からは四日市港にある太平洋セメントの四日市出荷センターまで引込線を走る。

 

四日市港には日本で唯一、鉄道用の可動橋として残る末広橋梁を渡る。1931(昭和6)年に造られた橋で、「近代化産業遺産群」にも指定された貴重な橋だ。

↑末広橋梁をゆっくりと走るセメント輸送列車。この春からはDF200形式ディーゼル機関車が牽引に使われる。なお末広橋梁では輸送が無い時、中央部分が上がり、船が航行できるようになる

 

↑日本で唯一の鉄道可動橋・末広橋を別角度から見る。左は船を通すために中央部分をはね上げたところ。列車が通る時は右のように下がる

 

↑末広橋梁の先で太平洋セメントの入換機に引き継がれ、四日市出荷センターを目指す。左の機関車はJR貨物のDD51形式ディーゼル機関車。関西本線内でも減ってしまったが、この古参機関車の姿をわずかながらも見ることができる

 

富田駅発、四日市駅行き、セメント輸送列車の最新時刻をここに記しておこう。

 

①富田駅6時53分発→四日市駅7時3分着

②富田駅9時37分発→四日市駅9時47分着

③富田駅12時37分発→四日市駅12時47分着

④富田駅16時49分発→四日市駅16時59分着

⑤富田駅19時23分発→四日市駅19時33分着

 

上記5本が日に走っている。

 

四日市駅から四日市港への時刻は、駅構内の作業にあたるため、時刻は公表されていないが、末広橋梁へは四日市駅に到着したその約10分後にさしかかる。また帰りはその約15分後に末広橋梁を渡ると見ておけば良さそうだ。

 

三岐線から四日市港はそう遠くない。貴重な可動橋を渡るシーンにお目にかかるべく、訪ねてみてはいかがだろう。

 

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