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2019/7/21 17:00

夏こそ乗りたい! 秘境を走る「只見線」じっくり探訪記〈その2〉

 

【只見線を探訪する後編④】絵になる破間川を列車が渡る光景

薮神駅と越後広瀬駅の間で、始めて魚野川の支流である破間川(あぶるまがわ)を渡る。新潟県側で只見線は、この破間川にほぼ沿って走っている。山景色を背景に走る沿線には絵になる箇所も多い。

 

↑越後須原駅〜越後田中駅間にある橋梁。国道252号の大倉沢休憩所横で撮影できる。背景に破間川が流れるが、列車は川を渡らずかすめるように走っている。適度なカーブで、曇りの日でもそれなりに絵になる。写真は越後須原駅16時32分発の小出行き列車

 

上写真の越後須原駅〜越後田中駅間もそうしたポイントの一つだ。国道沿いに駐車スペースがあり、撮りやすいことから、訪れる鉄道ファンも多い。

 

さて、乗車した只見行き列車。上条駅を過ぎると山里の趣が急に増していく。上条はそれこそ里の端といった印象だ。周囲に棚田が見え始め、破間川とともに車窓にアクセントを添える。

 

 

【只見線を探訪する後編⑤】入広瀬駅から急に険しさが増していく

小出駅から30分ほど。入広瀬駅からはさらに山中の色合いが強まる。

 

民家が点在するのは入広瀬駅の近くまで。勾配が徐々にきつくなり、車窓から見えるのは棚田と木々のみとなっていく。キハ40系はディーゼルエンジン音を響かせ、ゆっくり坂道を登って行く。

 

小出駅の標高は92mほど。只見線の最高地点の田子倉付近は515mまで列車は登る。標高では400m以上も登っていくわけで、徐々にとはいえ傾斜もきつく感じるわけである。

 

↑只見線と平行して走る国道252号も入広瀬付近からは険しさを増していき、スノーシェッドと呼ばれる覆いでおおわれた区間が多くなっていく

 

入広瀬駅の次の駅は大白川駅だ。この1駅区間の間に只見線は、何と破間川を5つの橋梁で渡る。小出駅〜大白川駅間は1942(昭和17)年11月1日の開業している。かなりの難工事であったことがうかがえる。当時は太平洋戦争がはじまって間もないころのことだ。

 

軍需産業優先の時代に、この難路に鉄道を通すことにこだわったことを不思議に感じる。当時の国は、この先の只見を含めて、水力豊富なこの土地を電力供給の地にしたいと苦難の時代に工事を続けたのだろう。

 

しかし、大白川駅から先、只見への路線延伸は、30年近くの空白の時間を経ることになる。さらに、沿線の破間川ダムや、黒又川第一ダムといった発電用のダムの竣工は多くが太平洋戦争後のこととなった。路線開業を急いだものの、思うような成果は得られなかったわけだ。

 

【只見線を探訪する後編⑥】新潟県最後の駅となる大白川駅

さて大白川駅に列車が到着した。この駅が新潟県側の最後の駅となる。

 

乗車した日と別の日に大白川駅を訪ねてみた。駅舎内にそば店があるのだが、15時までの営業とあって店は閉まり、駅にひとけもなく寂しい状況だった。さらに駅周辺には駅舎以外の建物ははるか先まで見当たらず。よくこうした場所に駅を設けたなと感じた。

 

実は駅から破間川の上流に向かって約1.4km先に大白川の集落はある。歩くと20分ほどだろうか。この集落に住む人が使うこともあるのだろうが、列車を乗り降りする人は見かけなかった。ちなみに大白川の集落へのバス便はすでに2018年9月で廃止されている。こうした利用者が限られる地方の公共交通機関は、少しずつ消えていく現状がここでも見られた。

 

↑ホームひとつの大白川駅。横を破間川が流れる。駅舎は2階建ての近代的な建物(左上写真)。建物のすぐ前を国道252号が通る。駅の入口は1階部分にあるが駅名表示も小さく、ややわかり難い。駅舎内では「そば処平石亭」が土曜・日祝日のみ11〜15時に営業中
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