モビリティ・カンパニーへの変革の始まり
そもそもトヨタは、自動車メーカーからモビリティ・カンパニーへと変革しようとしています。現在、トヨタが考える移動とは、3つあります。人やモノが物理的に動く「リアルな移動」。アバターや映像を介して、自分の身体の一部やすべてが遠方に移動し、遠隔地の人と心を通わせたり、新たな体験を楽しむ「バーチャルの移動」。そして、新たな体験や経験することが生まれる『感動』も「移動」だと考えています。「これら3つの移動を通じて、全ての人を支援していきたい」と、トヨタ未来創生センター R-フロンティア部 2020ロボット開発室長の山内実さんは言います。
自律走行で陸上投てき競技をサポート。
「FSR:Field Support Robot(フィールド競技サポートロボット)」
「FSR」は、オリンピックスタジアムでの陸上投てき競技などの運営に、自律走行機能を有するロボットです。最適な経路を選択し自律で走行するとともに、運営スタッフの追従走行や障害物回避走行も実施しながら競技中の投てき物(槍やハンマーなど)の回収・運搬を行います。
車両前方に搭載した3台のカメラユニットで運営スタッフの認識と距離の検知を行い、2mほど離れて追従走行し、回収時間短縮と運営スタッフの労力低減に寄与します。今後東京2020組織委員会、国際陸上競技連盟と連携し、東京2020大会に向けた技術開発を行います。
ラストワンマイルの移動を助ける。
「大会専用開発モビリティ APM」
「APM」は、短距離・低速型EVです。大会関係者や選手のほか、高齢の方、身体の不自由な方、妊娠中や乳幼児を連れたユーザーなどアクセシビリティに配慮が必要な様々な来場者に対し、ラストワンマイルのソリューションを提供することで、より多くの方が快適に競技会場に足を運べるようサポート。また、一部車両は、夏季の大会における会場内の救護活動にも利用予定です。大会期間中は、約200台の「APM」が競技会場、選手村など、様々な大会施設内で来場者・大会関係者の移動をサポートします。
このようにトヨタは仮想現実の技術で、競技会場と遠隔地をつなぐなど、多彩なロボットで大会の盛り上げを図ります。東京2020オリンピック開催まで、残すところ1年となりました。今後、他企業などがどのような施策を東京オリンピックで行おうとしているのか、その発表が楽しみです。
撮影/我妻慶一