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2019/10/3 21:00

隠れた実力派ミニバン「フォルクスワーゲン・シャラン」のクリーンディーゼルは、さらに実力派だった【コッテリインプレ】

クルマとしての総合力で判断するなら、これがシャランの大本命!

さて、ミニバンということでパッケージングの話が長くなってしまいましたが、今回のシャランにおけるトピックは晴れてクリーンディーゼル仕様のTDIが投入されたことです。搭載されるのは「パサート」から導入が始まった最新スペックの2Lターボで、シャラン用のパワー&トルクは177PSと380Nm。同時期に上陸した「ゴルフTDI」用を上回るアウトプットが与えられています。組み合わせるトランスミッションはVWお得意のDSG(一般呼称はDCT。ツインクラッチの新世代ATです)で、ギアはガソリン仕様(TSI)と同じく6速。なお、TDIでは日本向けシャランで唯一、XDS(電子制御デフロック)が装備されることも特徴のひとつといえるでしょう。

↑2Lディーゼルターボは、SCRシステムやDPF(ディーゼル・パティキュレート・フィルター)、2重のEGRシステムを駆使して高水準の環境性能を両立しています

 

↑排ガス浄化にSCRシステムを採用するシャランTDIでは、それ用のAdBlue(尿素水溶液)の注入口が荷室左サイドのカバー裏に設けられています

 

その走りは、特にクルージング時の安楽さが印象的です。同じ6速とはいっても、TSIよりすべてのギア比が高めであることや車重が80kg重くなること。そして、あえてレスポンスなどを穏やかにセッティングしたであろうことから発進加速が劇的に力強くなったわけではありません。しかしTSIより130Nmもトルクが増強された結果、ギアチェンジの頻度は格段に少なくなりました。それだけに、例えば高速走行時に少しアクセルを踏み増したい場面だと、TDIはシフトダウンすることなくジワジワと速度を上げるのでドライバーの速度管理が容易。なおかつ、TSIよりリラックスした感覚でクルージングが楽しめるのです。

 

また、絶対的な動力性能は向上しているので積極的に走らせるケースではドライビングそのものが楽しめる点もTDI仕様の魅力でしょう。先にシャランのボディはワイドと書きましたが、その恩恵は横方向の室内空間だけでなく操縦性にも貢献。いざワインディングに持ち込めばミニバンとは思えない自然な操縦性を披露するだけに、TDIであればその美点が一層強く実感できるはず。「ミニバンでそんなマネはしないよ」といわれてしまえばそれまでですが、“運転手”ではなく“ドライバー”でありたいユーザーにとって大きな魅力となり得ることはいうまでもありません。

↑走りは大トルクの恩恵が十二分といえる出来映え。静粛性に代表される快適性も満足できる仕上がりです

 

実のところ、絶対的な動力性能はこれまでの1.4Lガソリンターボでも特に不満を感じさせるものではありませんでした。1.8t超えの自重に150PSと250Nmという組み合わせですから、もちろんパワフルではありません。しかし、フル乗車や荷物満載という状況でもなければ小排気量のハンデを意識させないのもまた事実。その意味で、穏やかなドライビングを基本とするユーザーにとってのTDI仕様は「トゥーマッチ」かもしれません。ですがミニバンをそれらしく使い、走りも諦めたくない人には自信を持ってオススメできます。例の事件の余波でずいぶんと待たされてしまいましたが、このTDIがシャランらしさを満喫できる大本命であることは間違いありません。

 

SPEC【TDIハイライン】●全長×全幅×全高:4855×1910×1765㎜●車両重量:1900㎏●パワーユニット:1968㏄直列4気筒DOHCディーゼル+ターボ●最高出力:177PS/3500~4000rpm●最大トルク:380Nm/1750~3250rpm●WLTCモード燃費:14.0㎞/L

 

撮影/宮門秀行

 

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