乗り物
2019/10/11 18:00

LTE搭載で家電に近づく「サイバーナビ」。カーライフはどう変わる?

カーナビ界のベンチマークとしてその存在を誇ってきたパイオニアのカロッツェリア「サイバーナビ」がこの秋、待望のフルモデルチェンジを遂げました。ボタンレスのフラットパネルを実現した高精細なHDディスプレイに加え、先進性あふれるインターフェイスの採用など、そのスタイルは一目見ただけで近未来を感じさせるデザインへと大きく変更されています。

 

これだけでも魅力たっぷりですが、新型サイバーナビが備えた最大の注目点は『オンデマンドカーナビ』を実現したこと。クルマをオンライン化することで、ナビ機能をはじめ動画や音楽など多彩なソースを車内で存分に楽しめる環境をサイバーナビにもたらしているのです。

↑新型サイバーナビは「DiXiM Play for carrozzeria」に対応することで、なんと出かけた先でレコーダー内のコンテンツを再生可能としました

 

パケット容量と回線速度を気にせず、“つなぎ放題”で楽しめる

その核となっているのが、新採用となった「ネットワークスティック」です。これはNTTドコモが提供する車載向け「In Car Connect」に対応した通信モジュールで、通信回線はドコモのLTE通信回線を利用。このサービスが持つ最大の特徴はパケット容量制限なしの“つなぎ放題”にしていることにあります。スマートフォンの契約のように利用状況によってパケット容量が頭打ちになることはなく、使い過ぎて回線速度が遅くなることもありません。新型サイバーナビではパケットの限度を気にすることなく存分にネット接続を楽しめるわけです。

↑9型ディスプレイを持つサイバーナビのフラッグシップモデル ラージサイズメインユニット 「AVIC-CQ910-DC」。11月発売予定で、予想実売価格は21万円前後

 

↑新型サイバーナビが備えた3つのポイントは、オンラインへの対応によってエンターテイメントの楽しみ方が広がった点です

 

しかも、ネットワークスティックを付属している新型サイバーナビを買うか、あるいはネットワークスティックを別売で買った場合でも最初の1年間はこの“つなぎ放題”が無料となる特典を用意しています。その1年経過後は、用意された1年間1万2000円、30日1500円、1日500円(いずれも税別)の3つのプランから自分に合ったものを選択可能。これにより、新型サイバーナビはネットワークを介して、ドライブ中に、見たい、聞きたい、知りたい、といったドライバーの要望にリアルタイムで応えてくれるものとなります。

↑料金プランは3タイプを用意。無料期間が終わった2年目以降、好みのプランを選択できます

 

この日の発表会の席上、挨拶に立ったパイオニアの常務執行役員モビリティプロダクトカンパニーCEO 髙島直人さんは、「クルマでのオンライン化が進み、コネクテッドカーが聞かれるようになってきました。そんな時代にカロッツェリアは何をすべきかを考えた時、出てきたのがエンターテイメントというキーワード。オンラインの力で新たなエンターテイメントを提供して車室内をもっと快適にします。それがカロッツェリアとしての結論でした」と述べました。つまり、パイオニアは新型「サイバーナビ」に“つなぎ放題”の通信モジュールをプラスすることで、車内を最高のエンターテイメント空間に変貌させる新時代のオンデマンドカーナビとして誕生させたというわけです。

↑発表会での登壇者。左からパイオニアモビリティプロダクトカンパニー商品企画部の橋本岳樹さん。パイオニアモビリティプロダクトカンパニーCEO高島直人さん。NTTドコモ コネクテッドカービジネス推進室の深井秀一さん

車内が移動するWi-Fiスポット化って……

では新型サイバーナビが“つなぎ放題”によってもたらされたエンターテイメント空間とはどんなものなのか? ひとつは動画や音楽などのストリーミングサービスへの対応。たとえば無料動画サービスで圧倒的人気の『YouTube』。新型サイバーナビではこの再生機能をカーナビとして初搭載しました。サイバーナビは9型モデルを筆頭に、8型モデルや7型モデルをラインナップしますが、スマホを上回る大画面で楽しめるから見やすいのは当然。しかも、サイバーナビの持つWebブラウザ機能を利用することにより、カーナビ画面に切り替えてもYouTubeをバックグラウンドで再生し続けることができるといいます。これはスマートフォンやPCであればYouTubeのプレミアムプランに入らないと利用不可能な機能でもあるのです。

 

さらにストリーミングサービスとして、自宅にあるレコーダーのリモート機能にも対応を果たしました。デジオンと共同開発した「DiXiM Play for carrozzeria」を利用することで実現できるもので、ネットワークを経由することでレコーダー内の録画済みコンテンツや、受信中のリアルタイムの放送を出掛けた先でいつでも楽しめるようになります。これまでのように、レコーダーに録り貯めた番組をディスクにコピーする手間はもはや不要となりました。しかも、この機能を使えばエリアを跨いで遠くまで出掛けた時でも、地デジ放送を自宅で視聴するのと同じように楽しめます。これはレコーダーで受信できているBS/CS放送も対象となるわけで、このメリットはかなり大きいと言っていいでしょう。

↑外出先からレコーダーのコントロールをするDiXiM Play for carrozzeriaでTV番組を視聴する方法の概念図

 

↑レコーダーアクセスに対応したメーカーの一覧。ソニー製レコーダーは残念ながら非対応となっています

 

↑新型サイバーナビでレコーダーアクセスを実現するには、その認証を受けたスマートフォンと常にBluetoothで一対の関係にある必要があります

 

↑新型サイバーナビとDiXiM Play for carrozzeriaアプリで連携した状態のスマートフォン

 

そして、車内Wi-Fiスポットの実現も見逃せません。これも“つなぎ放題”で利用できるため、同乗者が持ち込んだスマートフォンやタブレット、ゲーム機に至るまでパケット容量を気にする必要は一切なし。それぞれにインターネットに接続して思う存分楽しめます。これはクルマと一緒に移動する無料のWi-Fiスポットみたいなもの。同乗者にとっても間違いなくありがたいサービスとなるでしょう。また、この機能を備えたことで、HDMI端子に挿して多彩な映像コンテンツが楽しめる「Amazon Fire TV Stick」にも対応できることとなりました。こちらも移動中に通信料金を気にすることなくコンテンツが楽しめるようになるのは言うまでもありません。

↑新型サイバーナビには車内が移動するWi-Fiスポットとなる「アクセスポイントモード」を搭載しました

 

↑HDMI端子に挿すだけで多彩な映像コンテンツが楽しめる「Amazon Fire TV Stick」にも対応

 

さらに“つなぎ放題”はカーナビ機能にも活かされています。それがOTA(Over-The-Air)による地図データの更新です。新型サイバーナビには地図データのバージョンアップとして、最大3年分(最大年6回:2019年10月~2022年10月末まで)が無料で付いてきます。提供される更新用地図データは従来通り2か月単位となりますが、このネットワークスティックを活用することで更新用地図データのダウンロードがこの回線を使って行えるのです。

↑9型ディスプレイを持つAVIC-CQ910-DC。右にあるのがNTTドコモのIn Car Connectを組み込んだ、ネットワークスティック

 

これまではサイバーナビ上で認証を取ったSDカードをパソコンにセットした後にデータをダウンロードする必要があり、これが地図データ更新で煩わしさを感じさせる要因ともなっていました。データのダウンロード後はそれをインストールして展開する流れは今までと同じですが、今回の対応によって更新データが提供されたら更新ボタンを押すだけで地図は最新版へと自動更新されるようになりました。地図データ更新はグンと楽になったと言えるでしょう。しかも、2021年4月30日までに「MapFanスマートメンバーズ」に登録すれば無料バージョンアップ期間がさらに1年分延長となるのです。

 

もちろん、これまで通りスマートループによるプローブで取得した交通情報や天気予報、駐車場の満車・空車情報といったドライブに必要な情報取得にも対応。オンデマンドVICSを加えて、目的地までより高精度なルート探索を可能としています。地図はHDディスプレイに最適化された高精細なものへと一新され、その描画精度は一目見て美しさを実感できるもの。それでいて今までにないスムーズな動きも実現しています。

↑画像の処理速度も大幅にアップ。地図をスクロールさせてもほとんど引っかかりなしで動作できました

 

これまでもネットワークにつながるカーナビは存在していました。しかし、その多くはドライブに必要な情報を取得したり、あるいは音声コマンドをクラウドで認識させるために使うのにとどまっていました。新型サイバーナビのように車載機でストリーミング配信にまで対応させた例はこれが初。今や家電もネットワークにつながって機能を高める時代に入ったわけで、その意味で新型サイバーナビの対応は時代の流れに沿った対応とも言えます。新型サイバーナビはこれからのカーナビの新たなページを切り拓くことは間違いないでしょう。

 

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