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2019/10/13 18:00

世界初の線路を走るバス•DMV導入へ!「阿佐海岸鉄道」の新車両と取り巻く現状に迫った

おもしろローカル線の旅54〈特別編〉 〜〜阿佐海岸鉄道(徳島県・高知県)〜〜

 

四国の東南部、太平洋に沿って阿佐海岸鉄道という鉄道路線が走っている。駅はわずかに3つ。路線の距離は8.5kmと短い。

 

この小さな鉄道会社がにわかに注目を集めている。世界初の線路を走るバス・DMV(デュアル・モード・ビークル)を導入したからだ。赤緑青と3色揃う新車のお披露目イベントも開かれた。同路線は今、どのように変わっていこうとしているのか。同地域が抱える実情とともに、DMVの未来に迫ってみた。

 

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↑阿佐海岸鉄道が導入したDMV。青と緑、ほか赤色の3両がお披露目された。DMVの形はかつて走っていたボンネットバスの形に近い

 

 

【DMV導入へ①】阿佐海岸鉄道とはどのような鉄道なのだろう

DMVの話題に触れる前に、阿佐海岸鉄道(あさかいがんてつどう)の概要を見ておきたい。

路線と距離阿佐海岸鉄道・阿佐東線(あさとうせん)/海部駅(かいふえき)〜甲浦駅(かんのうらえき)8.5km
開業1992(平成4)年3月26日、海部駅〜甲浦駅間が開業
駅数3駅(起終点駅を含む)

 

阿佐海岸鉄道の路線は、牟岐線(むぎせん)の牟岐駅(徳島県)と、後免駅(ごめんえき/高知県)を結ぶ国鉄阿佐線の一部区間として計画された。

 

1970年代に日本鉄道建設公団が建設を始めたものの、1980年の国鉄再建法施行により、工事が凍結されてしまう。すでに大半の工事が完了していたことから、その後に、新たに創設された阿佐海岸鉄道が同区間を引き継いで、阿佐東線を開業させた。

 

ちなみに高知県側の後免駅〜奈半利駅(なはりえき)間は土佐くろしお鉄道に引き継がれ、同社のごめん・なはり線として開業している。国鉄阿佐線として計画された奈半利駅〜室戸〜甲浦駅の区間は結局、着工されずに鉄道が走らない空白区間となっている。

 

↑開業当初から走るASA-100形。愛称は「しおかぜ」。正面の丸めの屋根の形が特徴で、景色が楽しめるように、側面の一部のガラス窓が大きく造られている

 

阿佐海岸鉄道は同線が走る徳島県と高知県、そして地元の海陽町、東洋町などが出資する第三セクター方式の鉄道として運営されている。

 

所有する車両は2両、ASA-100形とASA-300形の2形式で、現在は自社線のみ往復しているが、今年の3月15日までは、JR牟岐駅まで乗り入れる列車が、朝のみ2往復運転されていた。

 

↑ASA-300形は九州の高千穂鉄道を走っていた車両で、同鉄道が災害の影響で廃止になった後に譲り受けた。そのために愛称は今も「たかちほ」と呼ばれ親しまれている

 

路線は高架区間、盛り土区間、トンネルが多く、平行する道路と平面交差する箇所はない。トンネルが途切れる区間では、車窓から太平洋の眺めが楽しめる。

 

↑阿佐海岸鉄道の起点、海部駅。JR四国の到着列車に接続(手前)、阿佐海岸鉄道の列車が発車する

 

【DMV導入へ②】3色のDMVのお披露目イベントが開かれる

2016年5月26日、「第一回 阿佐東線DMV導入協議会」が開かれ、DMV導入に向けた取組みが開始された。2019年3月9日に、まず1台目の車両が誕生し、公開された。そして10月5日に、ほか2台も誕生したことから、3台揃ってお披露目された。

 

お披露目イベントの様子をお届けしよう。

 

まず、牟岐線の阿波海南駅に近い、阿波海南文化村へ向けて3台のDMVが道路の上を走ってきた。この車両が線路も走ると思うと、ちょっと不思議だ。

 

駐車場内に赤、青、緑の華やかなDMVが並び、訪れていた人たちの目を引きつける。形は通常のマイクロバスのノーズ部分がやや出た、それこそかつて多くが走っていたボンネットバスの現代版といったスタイルだ。

 

↑今回、導入された3台のDMVが阿波海南文化村で並んだ。一般公募に寄せられたデザイン案を採用、それぞれに愛称が付けられた

 

3台の車両には、一般公募に寄せられたデザインのアイデアが生かされ、さらに愛称が付けられた。緑の車両のデザインは、阿波産の「すだち」と徳島県の鳥「白鷺」、愛称は「すだちの風」と名付けられた。

 

青い車両は、宍喰駅(ししくいえき)の名物“伊勢えび駅長”がサーフィンに挑戦しているデザインで、愛称は「未来への波乗り」。赤い車両は高知の英雄、坂本龍馬と、南国土佐に降り注ぐ太陽がデザインされ、愛称は「阿佐海岸維新」とされた。

 

↑イベント会場にはDMVを導入した阿佐海岸鉄道のほか、地元の観光ブースが設けられPRにつとめた。さらに地元小中学生のダンスやパフォーマンスでイベントを盛り上げた(右上写真)。DMVへの注目度と、期待が大きいことをうかがわせた

 

 

【DMVを導入へ③】JR北海道で開発・導入を目指したが

DMVとはどのような車両なのか、ここで改めて見ていくことにしょう。

 

DMVを開発、実験を最初に行ったのはJR北海道だった。2004(平成16)年にマイクロバスを改造した第1次試作車により、実験が始められた。その後、開発が進められ、2008年には釧網本線(せんもうほんせん)を利用、試験的な営業運行まで行われ、技術が煮詰められていった。

 

2008年にはトヨタ自動車も参加して、DMVを開発。2009年には岐阜県の明知鉄道で試験走行が行われている。

 

JR北海道では2015年の導入を目指すとしていたが、既存の特急車両の事故や、線路トラブルなどが相次いだ。こうしたトラブル解消と、北海道新幹線の開業などに専念するとして、2014年には、DMVの試験運転を凍結してしまった。

 

↑阿佐海岸鉄道が導入したDMVの元の車両はトヨタ・コースター。トヨタ自動車が改造、日野エンジニアリングアネックスが車軸の交換や車台の強化を行った。さらにNICHIJOが鉄道車両として改造を手がけ、京三製作所の信号システムが取り付けられた

 

JR北海道では導入されなかったものの、国土交通省とJR北海道では事業化に向けて「DMVに関する技術評価委員会の中間とりまとめ」を2015年10月30日にまとめている。阿佐海岸鉄道の取り組みは、このまとめを元にしており、さらにJR北海道のDMV推進センターから技術データの提供を受けた。北の大地で実現しなかった技術が、南の徳島県、高知県で実用化されることになり、始めて実を結んだのである。

 

さて、マイクロバスがどのように“変身”するのか、見ていこう。

 

車両の正面、ボンネット部分の中に線路走行用の前輪が隠されている。運転席に付いたスイッチの操作で、この前輪が“ぐわーっ”といった具合に出てくる。その時間は10〜15秒と、あっという間だ。一緒に後輪も出てくる。

 

かつて実験が始められた当初は、時間もだいぶかかったそうだが、今はあっという間。この時間ならば、実用化にはまったく支障がないと感じた。

 

↑出てきた線路走行用の前輪。車輪の前に小さな排障器と呼ばれる、線路上の障害物を除去する装置が取り付けられている。バスモードから鉄道モードへの切り替えは10〜15秒ほど。見ていてあっという間に変ってしまったので、逆にびっくりさせられた

 

「バスモード」の時はこの鉄輪の前輪と後輪は隠された状態で道路を走る。「鉄道モード」へ「モードチェンジ」で、前後の鉄輪が出てくる。後輪は下の写真のような出方で、ゴムタイヤの後輪に比べてやや浮き気味だ。

 

DMVはゴムタイヤの後輪が駆動輪となっている。いわば後輪駆動車だ。線路上でも、このゴムタイヤが力を線路に伝えることによって車両が動く。この機能は、保線用に使われる鉄道会社の事業用車などと同じ仕組みだ。

 

↑鉄輪の後輪(後鉄車輪)を降ろすと、舗装路面では写真のように、やや浮き気味になっている。線路を走る時は、道路上と同じく、ゴムタイヤの後輪が駆動輪となっていて線路に駆動力を伝える

 

↑鉄道用の車輪は、ゴムタイヤと異なり中側にフランジという出っ張りが設けられている。このフランジによって、車両が線路から外れることを避けている

【DMVを導入へ④】DMVの車内外を細く観察していくと

DMVの車内はどのようになっているのだろう。トヨタ自動車のマイクロバスをベースにしているだけに、車内の造りはマイクロバスそのものだった。とはいえ、細いところは手を加えられている。

 

例えばマイクロバスの助手席部分を鉄道運行用に変更している(運転保安システムや鉄車輪の制御器が付く)。助手席はないために、通常の車両よりも座席数が少なく18席。立ち席を含めても23席が定員となりそうだ。

 

写真で車内外のポイントを見ていこう。

 

↑前輪が出ると、車両はかなり前側が持ち上がっていることが分かる。後輪のゴムタイヤと後鉄車輪は、常に荷重配分を変えながら走る。今回、線路の上での公開はなかったものの、将来どのような形で走るのか、ぜひ乗り心地を味わいたいものだ

 

↑2列+1列の座席が並ぶ。通路の途中にはタテ手すり(スタンションポール)が設けられている。そのポールには押しボタンもつけられている。まだ営業前ということもあり通路には汚れ防止用のシートがかぶせられていた

 

↑運転席には通常の路線バス用の装備に加えて鉄道の信号設備や鉄車輪を上下する装備などが付く。線路の上を走る時には、ハンドル操作はすることなく、運転士はアクセルとブレーキ操作により車両を走らせる

 

DMVは路線バスよりも小型で、また入口のドアの大きさはマイクロバスそのもの。バリアフリーおよび、車椅子での利用については、今後の課題と言うことができそうだ。

 

↑通常のマイクロバスよりも1段下に踏み台が設けられた。少しでもラクに乗り降りできるように配慮されている

 

↑乗降口には整理券の発行器が付いている。運転席の後ろの空きスペースには料金箱などが設置される予定

 

 

【DMVを導入へ⑤】沿線はどのように変わっていくのだろう?

DMVの運行に備えて、沿線も変りつつある。

 

現在、阿佐海岸鉄道の阿佐東線は海部駅〜甲浦駅間で運転されている。この路線区間がDMVの運行後には、一つ北側にある牟岐線の阿波海南駅まで延ばされる予定だ。

 

海部駅は高架上の駅で、DMVが地上に降りるアクセス路の建設が容易では無い。対して、阿波海南駅は地上駅のため、アクセス路が造りやすく、すぐ横を国道55号が走る利点もある。DMV運行後には、阿佐東線の起点が阿波海南駅となるため、現在、駅構内の改良工事を含め、JR四国との調整が続けられている。

 

↑DMV運行後は現在の阿波海南駅がJR牟岐線と阿佐海岸鉄道の接続駅となる予定。それに合わせてDMVのモードチェンジスペースなどが整備される

 

↑現在、海部駅がJR牟岐線の終着駅となっている。DMV導入後は、阿佐海岸鉄道の途中駅となる

 

海部駅〜阿波海南駅区間が延びることにより阿佐東線は計10kmの距離となる。さらに終点の甲浦駅が大きく変る。甲浦駅は高架駅となっている。この高架上にある線路からDMVが地上へおりることができるように、現在、アクセス路の工事が進められている。

 

2年後を目指して現在、工事真っ盛りの状況だった。単なるアクセス路ではなく、一般車が入れないように遮断機を設ける必要があるなど、DMVの運行に必要な装置の取り付けも行われる。現在使用している高架上のホームは使われなくなり、地上部に乗降場所が設けられる。

 

また途中駅となる海部駅と宍喰駅では、現在使われる鉄道車両が走らなくなるため、ホームが不要となる。高さが低いDMV用のホームが造られる予定だ。

 

↑工事をする以前の阿佐海岸鉄道の終点・甲浦駅の様子。時計付きの木造駅舎が目印となっていた。階段を上がった高架上にホームが設けられている

 

↑現在、工事真っ盛りの甲浦駅。高架を通る線路上で、鉄道モードからバスモードに変換。そしてアクセス路を降りて地上へ降りることができるように工事が進む

【DMVを導入へ⑥】これまでの車両はどうなるのだろう?

DMVの導入にあたり、国からは「通常車両と混在して走らせてはだめ」という条件が示された。つまり、DMVを走らせるならば、現在の車両は使えないことになる。阿佐海岸鉄道はDMV専用路線にすることが求められたのである。

 

現状の車両はどうするのだろうか。残念ながら廃車となる。現在、走る車両を見たり、乗ったりしたいという方は、DMVが導入されるまで、あと2年のうちに(現時点で、DMVの運行開始日は未定)、訪れておきたい。

 

↑高千穂鉄道からやってきたASA-300形(高千穂鉄道時代はTR-201)が走るのもあと2年となった。ASA-100形とともに引き取り手を探している状況だ

 

 

【DMVを導入へ⑦】阿佐海岸鉄道に接続するJR牟岐線の状況は

ここからは阿佐海岸鉄道を取り巻く鉄道とバスの話題に触れておこう。

 

現在は、JR牟岐線と海部駅で接続している。この牟岐線、徳島県の中心駅・徳島駅と牟岐駅を結ぶ。路線距離は79.3km、普通列車で2時間20分前後かかる。

 

実は阿佐海岸鉄道が開業したころには、高徳線を走る特急「うずしお」が甲浦駅まで乗り入れていた。その後には徳島線を走る特急「剣山(つるぎさん)」が乗り入れ、「うずしお」に代わり特急「むろと」が阿佐海岸鉄道に乗り入れていた。ところが、2001(平成13)年3月13日で阿佐海岸鉄道へ特急「むろと」の乗り入れが廃止されてしまった。さらに……。

 

↑牟岐線を走る特急「むろと」。2019年3月のダイヤ改正では、「むろと」の運行は日に1往復と大幅に減便、厳しい状況になっている。ちなみに特急「むろと」にはJR四国のキハ185系が使われている

 

牟岐線の徳島駅〜牟岐駅間を走る特急「むろと」は2019年3月のダイヤ改正までは1日に3往復走っていたが、改正後は1往復に減便されてしまった(徳島駅〜牟岐駅間の乗車時間は1時間15分)。

 

牟岐線の区間別平均通過人員を見てみると。徳島駅〜阿南駅(あなんえき)間の平均通過人員が4809人(2018年度=以下同)に対して、阿南駅〜牟岐駅間は690人と極端に減る。さらに牟岐駅〜海部駅は212人と減ってしまう。

 

この212人という数字は、JR四国の全路線の中で最悪となっている(ワースト2位は予土線の312人)。経営状況が厳しいJR四国にとってはつらい現実だ。JR四国とって運営が厳しい線区ながらも、徳島県南部地域にとっては、今も欠かせない重要な交通機関である。

 

この地域は道路事情があまり良くない。筆者は今回、クルマで徳島市を目指したが、国道55号などの行程は、道が細めで片側一車線の区間がほとんど。カーブも多い。途中の一部が高規格道路(日和佐道路/9.3km)となっているが、片道2時間の、ややきついドライブだった。

 

DMVを導入する徳島県としても、こうした県南地域の実情を考慮し、何らかの手を早めに打たないと、という思いが強かったのだろう。

 

 

【DMVを導入へ⑧】同鉄道沿線の既存のバス交通を見ておこう

鉄道に対して、バスはどうなのだろうか。

 

実は、同地域には関西と直接に結ぶ高速バスが走っている。徳島バスにより運行される室戸(高知県)〜南海なんば(大阪府)間の高速バスだ。甲浦〜南海なんば間には、上り5便、下り6便の高速バスが走る。ちなみに同区間は約5時間30分かかる。

 

JR牟岐線は徳島駅〜阿南駅間の列車本数は多めだが、阿南駅〜海部駅の列車本数は大幅に減る。

 

2019年3月16日からは、この少ない列車本数を補完する役割を高速バスが担っている。牟岐線と阿佐海岸鉄道が平行して走る阿南〜甲浦間では、高速バスが利用でき、さらに途中下車できるように変更されたのである(空席がある場合のみ)。長距離を走る高速バスで、このように地域内での移動に利用できるよう変更されたケースは非常に珍しい。

 

路線バスはどうなのだろうか。

↑土佐くろしお鉄道の奈半利駅前に停車する高知東部バス。阿佐海岸鉄道の甲浦駅からは同社のバスに乗車すれば、途中での乗継ぎが必要となるが、奈半利駅まで行くことが可能だ

 

調べてみると2社の路線バスが走っていた。

 

牟岐線の牟岐駅と甲浦駅間を路線バスが結ぶ(徳島バス南部が運行)。途中の鉄道駅に立ち寄るバスに加えて、旧道経由や複数の病院を経由するバスなどがあり、往復13便が走っている。同バスは徳島県と高知県の県境をまたいで走る路線バスとしては珍しい運行スタイルだ。

 

さらに高知県側には甲浦岸壁(次のバス停が甲浦駅)と室戸営業所を結ぶ高知東部バスが1日に7往復が走っている。室戸世界ジオパークセンターバス停で乗継ぎすれば、土佐くろしお鉄道の奈半利駅や安芸駅へ行くこともできる。

 

DMVの運行開始後、阿波海南駅と甲浦駅から先、バスとしての運行区間は未定のこと。既存の路線バスとバッティングする部分も出てくるわけで、それぞれがバス事業者との調整が欠かせない。県と町が中心となって、こうした調整が進められている。

【DMVを導入へ⑨】地元の期待を背負って“出発進行”!

2年後には線路を走ることにより、その機能が活かされるDMV。導入はどのような長所があるのだろうか。

 

長所にまずあげられるのが、車両代が大幅に圧縮できること。ベースとなるトヨタ自動車のコースターは車両価格が700万円ちょっと。DMV用に大きく改良を施しているものの、鉄道車両コストに比べれば、整備を含めて大幅なコスト削減につながる。鉄道車両が定員100名に対して、23名と小さくなる短所はあるが、このコスト削減の効果は魅力大だろう。

 

↑DMVは2ナンバーを取得している。よって道路の走行ももちろんOKとなった。今回のお披露目イベントでは、鉄道ファンよりも、導入後に利用者となる地元の人たちが目立った。女性や子どもたちのDMVへの注目ぶりには驚かされた

 

鉄道路線に沿って既存の路線バスが走っているが、そのあたり両者併存の問題はないのだろうか?

 

こちらは、徳島・高知両県にとって、いざという時のために交通インフラを維持しておきたいという意図が大きいようだ。四国の沿岸は、将来に起こることが懸念されている「南海トラフ地震」では震度6クラスの揺れ、そして10m前後の津波が予測されている。特に高架区間が多い阿佐海岸鉄道を維持して、そうしたいざという時のために備えておくという役割は大きい。

 

もちろん利用者が少ないから廃線へ、という選択肢もあったことだろう。だが、廃線にして駅が消えれば、鉄道という地方にとっての骨組み、そして駅という核が消えてしまう。さらに一度、廃線にしてしまえば、路線の復活は難しい。

 

DMVは徳島県と高知県にとって新たな“観光要素”として魅力にもなる。路線バスとして両終着駅から道路を走ることはもちろん、週末は臨時列車の運行も可能となり、その先にある観光スポットを巡ることもできる。DMVならではの柔軟な対応ができることも、メリットとして大きい。

 

線路を走り始めるのは、2年後のこと。この先、DMV導入によって、この地域にどのような未来が訪れるのか、これからも注目していきたい。

 

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