ベテラン自動車ライターの永福ランプとフリーエディターの安ドが、深いような浅いようなクルマ談義をするクルマ連載。今回は、ダイハツの売れ筋モデルにして新世代技術が搭載された軽トールワゴン、新型タントを分析していきます!
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永福ランプ(清水草一)
日本中の貧乏フェラーリオーナーから絶大な人気を誇る大乗フェラーリ教の開祖。様々な自動車専門誌や一般誌、Webなどで、クルマを一刀両断しまくっています。2018年以降、ペンネームを「MJブロンディ」から「永福ランプ」へ変更しています。
安ド
元ゲットナビ編集部員で、現在ではフリーエディター。永福ランプを慕い「殿」と呼んでいます。
【今月のクルマ】ダイハツ/タント
SPEC【カスタムRS・2WD】●全長×全幅×全高:3395×1475×1755㎜●車両重量:920kg●パワーユニット:658cc直列3気筒ターボエンジン●最高出力:64PS(47kW)/6400rpm●最大トルク:100Nm/3600rpm●WLTCモード燃費:20.0㎞/ℓ●122万400円〜187万3800円
「このクルマ、高齢者の介護に最適なのだ。なにしろ福祉仕様が3種類も用意されている」
安ド「殿!! 我が子も3歳になりました!」
永福「大きくなったな」
安ド「それでも3歳ですから、まだまだ我が家は子育て奮闘中です!」
永福「さもありなん」
安ド「子どもが生まれるまでは、タントのようなクルマにはまったく興味なかったんですが、いまは輝いて見えます!」
永福「なるほど」
安ド「小物入れの数や位置、シートアレンジ、乗り降りのしやすさ、そして奥さんでも運転しやすいボディサイズ、お財布に優しい価格と維持費、考えれば考えるほど、すべての子育て家庭におすすめしたくなります!」
永福「価格は安くはないぞ。今回試乗したタントカスタムRSは、オプションを含めると220万円を超える」
安ド「えっ、そうなんですか!?」
永福「いまどきの軽のフル装備はそれくらいだ。そのかわり、後席はレクサスLSより広い」
安ド「確かに、足元に畳が一枚敷けそうです! それに、シートをロングスライドできて、運転席から車内のどこへでも手が届きそうですよ! 子育てファミリーには最高です!」
永福「俺は反対の意味で最高だと思ったぞ。このクルマ、高齢者の介護に最適なのだ。なにしろ福祉仕様が3種類も用意されている」
安ド「そっちですか!」
永福「特に、助手席が手動で反時計回りに30度だけ回転する福祉仕様にビビビと来た。まだ自力で歩けるが、クルマの乗り降りはつらいという高齢者にピッタリ。実に考え抜かれた設計だ。“30度だけ”というのは、それ以上回ると、高齢者が右手でつかまるところがなくなってしまうからだという」
安ド「なるほど!」
永福「福祉車両というと、リアゲートに車いすスロープを備えたヘビー介護タイプが思い浮かぶが、本車にそこまでの切迫感はない。しかし助手席がちょっと回転するくらいなら、非常に身近だ」
安ド「殿は親御さん想いなんですね!」
永福「それもあるが、自分自身の足腰も弱りつつあるからな」
安ド「えっ! さすがにそれはちょっと早くないですか?」
永福「いまはまだ大丈夫だが、俺も13年後には70歳。そう遠い将来の話ではない」
安ド「確かに……」
永福「しかし、こんなクルマがあれば、年を取るのも安心だ」
安ド「そういえば、自動ブレーキも標準装備ですよね!」
永福「踏み間違い防止装置やその他もろもろの安全装備も標準だ」
安ド「タントは子育て世帯向けだけじゃなかったんですね!」
永福「もはや子育て世帯よりも、高齢者世帯のほうがはるかに多いのだからな」
安ド「言われてみれば!」
永福「そこを充実させたダイハツは、さすがと言わねばなるまい」
【その1/ヘッドライトまわりとモール】オリジナルの顔でまるで別のクルマ
ベースの「タント」とこの「タントカスタム」では顔の印象が大きく異なります。タントは横長ヘッドライトですが、カスタムはこのようにツリ目気味で、左右下端には黒いモールが付くなど、存在感を主張しています。
【その2/カラーマルチインフォメーションディスプレイ】視界を邪魔せずにより見やすく
メーターディスプレイはインパネ上部の左右に広く展開されていますが、高さが抑えられていて視界を邪魔しません。左右端の三角形サインはアクセルの踏み方で色が変わるので、エコ運転を心掛けられます。
【その3/助手席ターンシート】シートが回転するので乗り降りしやすい
乗り降りしやすいよう助手席が30度だけ回転するモデルのほか、2種類も福祉車両が設定されています。ダイハツとしては「標準車と福祉車両の垣根をなくす」という狙いがあるそうで、高齢化社会に向けて真摯に取り組んでいることがうかがえます。
【その4/パワースライドドア操作スイッチ】ドアが自動で開くので荷物を持っていても大丈夫
いまやファミリーカーにスライドドアは当たり前ですが、タントには、「パワースライドドアウェルカムオープン機能」という、近づくだけでドアが自動で開く機能も搭載されています。降車時にハンドル横のスイッチで予約します。
【その5/スマートアシスト】軽自動車だからといって侮るなかれ
車線逸脱抑制制御機能や全車速追従機能付きACCが採用されるなど、ダイハツの予防安全機能「スマートアシスト」はさらに充実しました。メーカー間の競争により、いまや軽自動車でも安全技術は高いレベルにあります。
【その6/ DNGA】タントからはじまるダイハツの新基準
車体の骨格部分にあたるプラットフォームが新設計されたことで、カーブで踏ん張れるようになるなど、走りが格段に良くなりました。この「DNGA」と呼ばれる新世代のクルマづくりは、今後出るモデルにも採用されることになります。
【その7/Aピラー】さらに細くなって視界が広がる
先代型同様、普通のクルマだと1本で構成されるAピラー(フロントウインドウと前席横の窓間の柱)を二本にして視界を広くしていますが、新型ではこの柱がさらに細くなり、より周囲を見やすくなっています。
【その8/シートバックスイッチ&レバー】便利機構は安全面にも配慮
運転席はなんと最大で540㎜ものロングスライドが可能となっていますが、シート裏のレバーでもスライド操作ができて便利です。安全面にも考慮されていて、シフトをPに入れて、レバー横のスイッチを押さないと動かせません。
【その9/サイドガーニッシュ】平らなサイド面にアクセント
タント「カスタム」のボディカラーには、基本の全8色以外に、2トーンカラー3色が設定されています。この2トーンを選択した時のみ、写真のサイドガーニッシュが装着されます。デザインのアクセントが欲しい人向けです。
【これぞ感動の細部だ!/ミラクルウォークスルーパッケージ】タントの代名詞「ミラクルオープンドア」がさらに進化!
従来からあるBピラー(前後席間の柱)をドアに取り込んだ巨大な開口部の「ミラクルオープンドア」に加え、運転席と助手席のロングスライドも可能です。写真のように運転席を後ろへ、助手席を前へスライドさせれば、クルマから出ずに運転席から後席へ移動できるほか、運転席に座ったまま後席シートへ手を伸ばすことも可能です。
撮影/我妻慶一
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