9月26日、LEXUSは同ブランドのラグジュアリークーペ「LC」に特別仕様車“PATINA Elegance”を、インテリジェントスポーツセダン「IS」に特別仕様車“I Blue”をそれぞれ設定・発表しました。この2台に採用したボディカラーはLEXUSならではのこだわりの塗装が生み出したものなのだそうです。今回はこの2台が並ぶ東京・日比谷の「LEXUS MEETS. . .」で、担当カラーデザイナーお二人に、LEXUSが考える色に対するこだわりや、色を決定して製品化するまでのお話を伺いました。
日本の美意識“わびさび”を感じずにはいられない
取材でお邪魔したLEXUS MEETS. . .に並んでいたのは、冒頭で紹介したLCとISの特別仕様車2台。LCは『PATINA Elegance』と呼ばれ、いわゆる“わびさび”をボディカラーに表現したもの。ISの方はスポーツセダンに相応しい搗色(かちいろ)という“勝負の色”を表現したものとなっています。この2台がLEXUS MEETS. . .で一堂に会しました。
その2台を前にしてご登場いただいたのは、LCの特別仕様車“PATINA Elegance”担当カラーデザイナーである宍戸恵子さんと、ISの特別仕様車“I Blue”担当カラーデザイナーである伊藤淳子さんのお二人。普段お会いすることが多い車両開発担当者とは異なる、カラーデザイナーとしてLEXUSのボディカラーに込めたこだわりをお話し下さいました。
新規設定したボディカラー“テレーンカーキマイカメタリック”
LCは言わずとも知れたLEXUSのフラッグシップクーペ。前後のボリュームたっぷりのフェンダーは一目見ただけで圧倒的な存在感を醸し出しています。そのLCの特別仕様車に採用されたカラーは新規設定した「テレーンカーキマイカメタリック」。宍戸さんは「今回は、使っていくほどに、お客様とクルマとの愛着が深まることをテーマに、それをエレガントな領域まで昇華させて日本文化固有の“わびさび”を感じさせるものとしました」と、LEXUSの従来とは異なる発想の下で生み出されたカラーリングであることを明かしてくれました。
宍戸さんはさらに「かといって、日本の“和”を特に意識したわけではありません。私たちの強みは日本で生まれ、日本で育んだ感性をデザインに表現できるということ。そういう感覚が根底にはあったのは確かだと思います」と採用したカラーへの思いを述べてくれました。そして、「今回のカラーでいうと、光の当たり方によって見え方が変化することも特徴の一つで、光が少ない時でもグリーンが発色したり、太陽光の下ではインパクトを強く出したりします。クルマは様々な環境の下で走るものですが、今回の特別仕様車で採用した“テレーンカーキマイカメタリック”は、そうした環境や、時とともに移ろう色合いをお楽しみいただけるカラーだと思っています」とも。
中でもこの色の見え方は従来の考え方にはないテクノロジーの下で生み出されていると宍戸さん。「実はこのカラーは色相自体は変化していません。光源によって色の印象が変わってくるようになっているのです。光輝材の一つひとつが緑に光るように設計しつつ、その緑の中でも黄味みを帯びた緑や、少しカーキ色がかった緑など、何種類かをミックスすることで見え方が変化します」。つまり、このカラーはLEXUSならではの塗装技術がフルに活かされた結果、生み出されたものなのです。
勝利に挑むカラー“ヒートブルーコントラストレイヤリング”
一方のIS特別仕様車”I Blue”。担当の伊藤さんは、「ISの“ヒートブルーコントラストレイヤリング”は“Fスポーツ”専用色として設定しているこだわりのあるブルーです。LEXUSの幅広い車種で採用している色ではありますが、FRのスポーツセダンであるISにこそ相応しいカラーであると思っています」と力強く語ってくれました。そのISを目の前にすると鮮やかな深みのあるブルーが眩しいほどに輝いています。これはタダの塗装ではないと思い、伊藤さんに質問するとその秘密を次のように答えてくれました。「この輝きは『4コート』という、同じ工程を2回繰り返すこだわりのある塗装によって生まれたもの。それによって動きを強調するようなブルー色を再現できていると思います」。
伊藤さんはさらに「光の当たり具合によって、ハイライトと陰となった部分の対比から造形の陰影が強調され、それがボディのボリューム感につながっています。特に夜の街中でスポットライト的に光が当たると、この色はさらにドラマチックに変化してくれます。そういう意味では同じブルーだとしても、ひと味もふた味も違うブルーだと思っています」と述べています。まさに勝利に挑む“ブルー”がここに再現されているというわけです。
日本文化が育て上げてきた“日本画”とも重なる色合い
こうして生み出されたLEXUSの様々なカラーですが、実現に至るまでには様々な苦労があるそうです。長い開発期間の間には、採用色の決定に至るまで、何度も実際に塗装を繰り返し、最適な色だけを選び出していることも教えてくれました。シミュレーターでは良いと思ったものの、実際に塗装してみたら不釣り合いであることがわかり、採用を見送ったこともあると言います。カラーにこだわるLEXUSならではの逸話ですね。
クルマを購入する時、最後まで悩むのがボディカラーですが、情けないことにこれまでは下取りに有利な黒や白を中心に選んでいました。しかし、今回のお話を聞いてカラーに対する考え方が大きく変わりました。車両開発の過程で選ばれたカラーは、デザイナーがクルマに対する思いを表現した結果であり、それを無視するわけにはいかないと。特にLEXUSが採用する重ね塗りの工程は、それによってもたらされる微妙な色合いの再現へとつながりました。これは日本文化が育て上げてきた日本画とも重なります。そんな日本発のこだわりがLEXUSならではの独自の世界観を生み出していたんですね。
撮影/我妻慶一
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