【大村線の秘密③】次のハウステンボス駅までは希少な電化区間
ここから大村線の旅を少しずつ進めていこう。
早岐駅から、大村線の路線はひたすら南下していく。乗車したのはキハ66系だった。大村線では、国鉄時代に生まれたキハ66系と、JR九州が製造したキハ200系(キハ200形とキハ220形がある)の2タイプの気動車が走っている。その大半がブルーを基調とした「シーサイドライナー」色で塗装される。
さらに、特急「ハウステンボス」が次の駅のハウステンボス駅まで走る。特急列車には783系特急形電車が使われる。
ハウステンボスは1992(平成4)年に誕生したテーマパーク。オランダの街並みが再現されている。ハウステンボスが開園した同じ年に大村線のハウステンボス駅が開業した。この駅まで博多駅から直通の特急列車を走らせるために、早岐駅〜ハウステンボス駅間の一駅区間のみの電化工事が行われた。
【大村線の秘密④】特急ハウステンボスは前後で形が大きく異なる
特急「ハウステンボス」に使われる783系はJRグループとなって最初に造られた新型特急車両だった。783系は九州全域を走る複数の特急列車に使われているが、ハウステンボス用の車両はオレンジ色に塗られていて華やかだ。
ハウステンボスが開園25周年を迎えた2017年から、順次、オレンジベースの車体に、ゴールドのエンブレムなどを入れた塗装に変更、2018年度中に、すべての列車が同カラーに変更された。
さて特急「ハウステンボス」は、他の路線を走る783系と車体色だけでなく、異なるポイントがある。
早岐駅〜ハウステンボス駅間を走る4両編成は、前後の姿形が異なっているのだ。ハウステンボス駅側の先頭車は783系のオリジナルな姿の非貫通タイプ。一方、早岐駅側の先頭車は、平たい切妻タイプで、貫通扉が付いている。
早岐駅〜博多駅間は特急「ハウステンボス」と、佐世保駅着発の特急「みどり」と連結して計8両編成で走る。早岐駅で両特急を連結、または切り離し作業が行われる。連結して両列車の間を通り抜けできるように、片側が切妻タイプとなっている。早岐駅のホームでは、そうした連結、切り離し作業を見ることができる。
ちなみに特急「みどり」は、早岐駅〜博多駅間は「ハウステンボス」を連結せずに運転される列車もあり、平たい切妻タイプの正面のままで一部の列車は走っている。一方、ハウステンボスのみ単独で走るのは、ハウステンボス駅〜早岐駅間のみで、切妻タイプの姿もこの区間でしか見ることが出来ない(ごくまれに「ハウステンボス」単独で運転される臨時列車をのぞく)。
【大村線の秘密⑤】国鉄形気動車キハ66形の引退が近い?
車両の話が出たところで、キハ66系気動車の紹介もしておこう。
キハ66系は1974(昭和49)年から翌年にかけて製造された。山陽新幹線の博多駅開業に合わせ、乗継ぎ列車用に開発された。当初は筑豊、北九州地区の非電化路線で運用された。それまでの主力車両だった急行列車用キハ58系より優れた接客設備を備え、また冷房装置を当初から装備、高出力エンジンを搭載した。鉄道友の会が選ぶ第16回のローレル賞を受賞した優れた車両でもある。
しかし製造コスト高に苦しめられた。経営難に陥りつつあった国鉄には荷が重く、計30両のみで製造が打ち切られた。現在残る28両が大村線に集結、今も活躍している。
キハ66系を製造された後に、今も全国で多くが活躍するキハ40系が造られた。同時期に造られた車両だけに、姿形なども良く似ている。しかし、乗った印象は異なる。キハ66系は、実際に乗車してみると、キハ40系よりも重厚なイメージ。キハ40系のエンジンは誕生した当初、非力だった。その後に改造されパワーバップが図られたキハ40系が多くなっているものの、キハ66系の方がやはりパワーがあるなと感じる。乗り心地もキハ66系の方が良く感じられた。
優秀な車両だったとはいえ、国鉄時代に造られ、現在も稼働する旅客用気動車としては、最古参となっている。JR九州では後継車両としてYC1系ハイブリッド車をすでに開発しており、2020年春、大村線へ6両が投入される予定だ。
今後、YC1形は徐々に増車されることが予想される。数年後には大村線も大きく変って行くに違いない。消えていく前に、国鉄時代の趣が色濃く残るキハ66系の魅力を、ぜひ乗って確かめておきたい。