トーヨータイヤは2月7日、AIやデジタル技術を活用することで走行中のタイヤ状態情報を検知して、リアルタイムでタイヤの能力を可視化するタイヤセンシング技術を開発したと発表。都内でその説明会を開催しました。
タイヤに求められる新たな付加価値
タイヤは走行中、気象条件などの路面状況によって随時対応が変化していきますが、それを可視化することは難しく、これまでシミュレーションなどで判断するしかなかったのです。今回新たに開発したタイヤセンシング技術では、垂直荷重やGセンサーからのデータを集め、路面判別や荷重、摩耗、異常などを検知することを実現。これらのデータからAIを使ってその状況に見合うタイヤのグリップ能力が十分あるかどうかをCGで判定できます。同社ではこの技術を「“タイヤ力”の可視化」と呼びます。
動画で見る“タイヤ力”の可視化(表示)イメージ
タイヤにはすでにTPMS(タイヤ・プレッシャー・モニタリング・システム)と呼ばれる空気圧や温度を計測するセンサーがありますが、そうしたセンサーにこの機能をプラスします。具体的には、路面の曲がり具合やうねり、ウェット/ドライといった走行ルート情報に加え、タイヤの空気圧・荷重・摩耗・異常などを検知し、路面状況などを総合して判断。わかりやすいCGによって、時には注意喚起も行うなどしてドライバーへと伝える仕組みです。ただ、センサーをどこに取り付けるかはまだ検討中だといいます。
この日の説明で披露された摩擦円のCGからは、グリップ力の現状と限界を点で判断できるようになっており、滑りやすい状況になると摩擦円は小さくなり、点が円を超えると滑ることがわかります。この摩擦円の大きさはタイヤのグリップ力によっても変化しますので、様々なタイヤのポテンシャルが判別できるというわけです。
発表会で登壇したトーヨータイヤ執行役員技術統括部門管掌の守屋 学氏は、「CASE時代を迎え、タイヤに求められる新たな付加価値としてこのタイヤセンシング技術を開発した。カーシェアリングやレンタカーなどを利用した場合でも、このシステムを使えば安心して車両を利用できる。将来は自動運転での緊急時への対応も想定し、この技術は次世代車両に欠かせない要件をタイヤ側で満たすことにつながる」とそのメリットを紹介しました。
技術について解説した技術開発本部・先行技術開発部の担当リーダーの榊原一泰氏は、「テストコース上では試験車両によるタイヤ力の推定検知に成功しており、現在は実車装着・実路走行での試験を繰り返してタイヤ力データの収集を進めている段階にある。これが実現すれば移動中の安全や安心へ貢献するだけでなく、タイヤの使い方で新たな付加価値を広げることが可能になる。現状では市販車両へ装着するまでには達していないが、カーメーカーなどのパートナーが決まれば実際の運用は加速する」と実現に向けた将来への期待を込めてコメントしました。
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