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2020/3/30 21:00

EVのメカ的デザインを生かしたジャガー「I-PACE」を分析。コンパクトなモーターで前後に収納スペースを確保

ベテラン自動車ライターの永福ランプとフリーエディターの安ドが、深いような浅いようなクルマ談義をするクルマ連載。今回は昨年から日本導入されているジャガーのEV(電気自動車)を取り上げ、その新たな世界観を確かめました!

 

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永福ランプ(清水草一)

日本中の貧乏フェラーリオーナーから絶大な人気を誇る大乗フェラーリ教の開祖。様々な自動車専門誌や一般誌、ウェブなどで、クルマを一刀両断しまくっています。2018年以降、ペンネームを「MJブロンディ」から「永福ランプ」へ変更しています。

 

安ド

元ゲットナビ編集部員で、現在はフリーエディター。永福ランプを慕い「殿」と呼んでいます。

 

【今月のクルマ】ジャガー/I-PACE

SPEC【HSE】●全長×全幅×全高:4695×1895×1565㎜●車両重量:2250㎏●パワーユニット:電気モーター(フロント&リア)●最高出力:400PS(294kW)/4250〜5000rpm●最大トルク:696Nm/1000〜4000rpm●WLTCモード航続距離:438㎞

976万円〜1183万円

 

さすがジャガーのデザインは本質を突いている」

安ド「殿! このクルマ、カッコいいですね!」

永福「うむ。EVのメカ的特徴を見事にデザインに生かしているな」

安ド「それはどのあたりです?」

永福「タイヤが四隅にあり、ボンネットが比較的短く、その分居住空間が前寄りになっているのだ」

安ド「それはEVだからなんですか?」

永福床下にリーフ2台ぶんのバッテリーを敷き詰めているからタイヤは四隅に追いやられ、ボンネットは下にエンジンがないから短い。結果的にスポーティでスタイリッシュなプロポーションになった。さすがジャガーのデザインは本質を突いている

安ド「僕はホイールがすごくデカいなぁと思ったんですが、それもEVならではですか?」

永福「いや、それは主にカッコつけのためだ」

安ド「ガクッ!」

永福「クルマというものは、ホイールがデカいだけでカッコよく見えるものなのだ」

安ド「じゃ、みんなもっとデカいホイールをつければいいんですかね?」

永福「ホイールがデカいと小回りが利かなくなるし、大径ホイール&低扁平タイヤは価格がぐんと高くなる。安くて便利なクルマには向かないゼイタク品なのだ」

安ド「I-PACEは約1000万円の高級車ですもんね!」

永福「うむ。これをわざわざ買う人はよほどのセレブだ」

安ド「ベンツのEQCやポルシェのタイカンだとデカ過ぎると言うお金持ちにとっては、I-PACEは扱いやすいサイズでいいんじゃないでしょうか?」

永福「EV同士での比較ではそうなるが、あえて高級EVを買う動機そのものが、ここ日本ではあまり盛り上がっていない」

安ド「そう言えばそうですね。なぜでしょう?」

永福「日本では、電力の9割近くが化石燃料から作られている。この状態では、EVはそれほどエコではないというのが大きいな」

安ド「そ、そうなんですか!」

永福「特にこういう高級EVは、デカいぶん電気を食うので、プリウスに乗っていたほうがずっと環境負荷は小さいぞ」

安ド「そ、そうなんですか!」

永福「それもあって、日本ではEVを買うときの補助金がほかの先進国に比べて少ないのだ」

安ド「そ、そうなんですか!」

永福「ヨーロッパでは、米テスラを追いかけるように、伝統ある高級車メーカーが次々と高級EVを発表している。ともあれ、ヨーロッパのように風力発電や原発がフル稼働していれば、EVの意味もあろうというものだ」

安ド「国の事情が違うんですね!」

永福「うむ。よって日本では、どんなに速くても、どんなに航続距離が長くても、EVはなかなかブレイクしないだろう」

安ド「ビックリするくらい速かったんですけどね……」

 

【その1/ステアリング&メーター】EVらしい未来感あふれる運転席からの風景

各種情報は、センターコンソールのディスプレイで確認できますが、ドライバー正面のデジタルメーターに映し出すことも可能です。ステアリングにも各種操作スイッチが付いていて、サイバーな世界が広がっています。

 

【その2/センターコンソール内ソケット】まるでデジタル機器! 各種メディアに対応

今回の試乗車両では、センターコンソールに設置されたアームレストの内部に様々な端子類が設置されていました。12Vのシガーライターソケットはもちろん、USBが2基、マイクロSIMやHDMIまで! 拡張性が広がります。

 

【その3/タイヤ&ホイール】迫力の大径サイズでスポーティかつワイルドに

ホイールは前後ともに245/50R20とかなりの大径サイズです。大径ホイールというのは見た目はいいのですが、乗り心地などを向上するためにコストがかかります。その点、セレブ向けとなるI-PACEは手ぬかりなしでした。

 

【その4/ドライビング関連スイッチ】ボタン式になったシフトセレクター

インパネ下部の2本の柱には、走行関連のスイッチが並びます。左側には各種走行モードや車高調整スイッチが配置されていますが、なんと右側にはボタン式のシフトセレクターが! 慣れるまでシフトノブを探してしまいます。

 

【その5/ヘッドライト】ジャガーらしさは表情にしっかり残す

薄く鋭利なライト形状は、大口径のフロントグリルとともにスポーティな雰囲気を演出しています。ジャガーのガソリンエンジン車と違ってボンネット部分は短いのですが、この表情(フロントデザイン)が“ジャガーらしさ”を強調しています。

 

【その6/給電口】ユーザーの充電環境に合わせて使い分けできる

ボディ右側には普通充電のソケット(上)が設置されており、左側には、国産EVでスタンダードのCHAdeMO(チャデモ)規格の50kW急速充電ソケット(下)が設置されています。後者は約85分で80%まで充電できるそうです。

 

【その7/リアデザイン】強く印象づけるためのカタチ

個性的なデザインという意味では、フロントだけでなくリアもどのクルマにも似ていません。このテイストが多くの人に受け入れられるかどうかは分かりませんが、イメージリーダーとしてのEVですからこれもアリではないでしょうか。

 

【その8/ドアノブ】走行中は平らになりドアに凹凸なし

ロックを解除すればボコッと出てきてつかめるのですが、通常時はドアノブがボディに埋め込まれています。これは走行中の空気抵抗を減らすことに貢献しているのです。テスラでも採用されていますが、未来的でイカす!

 

【その9/ボンネット】なんのために掘られた? 空気通行用のトンネル

まるでターボエンジン車のようにボンネットに穴が空いていますが、この穴、よく見るとフロントグリルから繋がっています。つまりボンネット下に空気を通すことが目的で、これによって走行中の空気抵抗を低減しているのです。

 

【感動の細部だ!/前後荷室】コンパクトなモーターのおかげで前後ともに収納スペースを確保

↑フロント

 

↑リア

 

ジャガー初の100%EVですから、注目はやはりモーター! と思いきや、ボンネットを開けてみても見つかりません。では、ボンネットの下に何があるかといえば、収納です。ミッドシップ車ならリアにエンジンがあるわけですが、I-PACEではリアもしっかり収納! ではモーターはどこか。さらに下の車軸の近くに前後2基搭載されているのでした。

 

撮影/池之平 昌信

 

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