【関東地方のおすすめローカル線】
わたらせ渓谷鐵道 わたらせ渓谷線(桐生駅〜間藤駅44.1km)
渡良瀬川の渓流を眺めて走るトロッコ列車が爽快
両毛線の桐生駅と間藤駅(まとうえき)間を走る、わたらせ渓谷鐵道。路線は群馬県と栃木県をまたいで走る。わたらせ渓谷線という路線名のとおり渡良瀬川の中・上流域に沿って走る。名物は2タイプのトロッコ列車。ディーゼル機関車が客車を牽く「トロッコわたらせ渓谷号」と、2両編成の気動車うち、1両がガラス窓が無いトロッコタイプの「トロッコわっしー号」が走り、共に人気となっている。
沿線は渡良瀬川以外にも見どころが多彩。今季はすでに季節が終了してしまったが、上神梅駅(かみかんばいえき)や神戸駅(ごうどえき)で桜、花桃が名物となっている。2駅のうち、上神梅駅は1912(大正元)年築、一部を昭和初期に増築した古い駅舎が残り、国の有形文化財に登録されている。水沼駅にはホーム横に温泉センターがあり、途中下車してひと風呂という楽しみ方ができる。全線完乗しても1時間30分、往復して一日楽しめるちょうど良い距離の路線だ。
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小湊鐵道 小湊鉄道線(五井駅〜上総中野駅39.1km)
乗ればつい懐かしさがつのる房総の非電化路線
房総半島には小湊鐵道、いすみ鉄道、JR久留里線と非電化路線が複数ある。中でも小湊鐵道は、起点が内房線の五井駅で、3線の中で最も東京都心や千葉市内に近い。
列車は五井駅〜上総中野駅間を所要1時間10分ほどで走る。とはいうものの起点から終点まで走る列車は少ない。五井駅〜上総牛久駅間は同じ市原市内ということもあり、通勤・通学客が多く、走る列車の本数も増える。
上総牛久駅から先へ向かう列車の半分は終点の一駅手前の養老渓谷駅止まりとなる。一方、終点の上総中野駅へまで行く列車は1日に4往復と少ない。上総中野駅はいすみ鉄道と共用しているが、接続が良い列車が限られている。両鉄道を使って房総半島の縦断旅行を楽しむ時には、時刻をよく確認して行動することが欠かせない。
車両、駅舎、踏切設備など、古風な施設が多く残ることも小湊鐵道の魅力となっている。車両は観光列車「房総里山トロッコ」をのぞき、みなキハ200形。国鉄のキハ20系とほぼ同形で、製造は1961(昭和36)年〜1977(昭和52)年と古め。駅舎は里見駅が1925(大正14)年築で国の有形文化財に登録されているなど、趣ある駅舎が残り、映画やCMの撮影地として使われることが多い。
乗れば懐かしさがそこかしこに感じられる小湊鐵道。レトロさが格別の路線だ。
銚子電気鉄道 銚子電気鉄道線(銚子駅〜外川駅6.4km)
鉄道好きがつい助けてあげたくなる健気なローカル線
銚子電気鉄道は千葉県の東端、銚子市内の銚子駅と外川駅(とかわえき)6.4kmを走る。路線がある銚子市の人口は2016年で6万4000人あまりと、そう大きな都市では無い。路線距離が短く、とても鉄道事業だけでは成り立たない。さらに2000年代に社長を務めた人物が業務上横領で逮捕されるなど、どたばたに巻き込まれた。
鉄道だけでは会社が成り立たないと、1995年から銚子産の醤油を使った「銚電ぬれ煎餅」を発売、今では名物「ぬれ煎餅」販売が本業を上回るとされる。
さらに最近は、おもしろいネーミングの商品を次々に発売している。例えば、「まずい棒」「鯖威張るカレー(サバイバルカレー)」「お先真っ暗セット」。究極は「売るものが無くなってきたので、音売ります」と、車内放送や、発車ベル、踏切音、ドア開閉音など音の販売を始めた。かなり自虐的な商品名が並ぶが、その努力を認めたくなる鉄道会社である。こんな姿勢がいじましく、多くの鉄道ファンが車庫のある本銚子駅(もとちょうしえき)や、物販店が併設された犬吠駅(いぬぼうえき)を訪れ、ついお土産を購入してしまうのである。
箱根登山鉄道 鉄道線(小田原駅〜強羅駅15.0km)
7月に復旧予定! 日本で唯一の本格登山鉄道
神奈川県の小田原駅と強羅駅を結ぶ箱根登山鉄道。路線の中でも箱根湯本駅〜強羅駅間は急勾配が続く。最急勾配はなんと80パーミル(1000m走る間に80m登る)で、これはアプト式などの補助システムを使わない通常の鉄道(粘着式鉄道と呼ばれる)では国内最急勾配となる。少しでも傾斜を緩めようと、3か所でスイッチバックを取り入れ、走る電車は行ったり来たりを繰り返す。
険しい傾斜地を走る造りだったことが災いし、昨年10月12日に箱根地区を襲った台風19号の豪雨被害を受け不通となってしまった。当初は復旧に1年かかると言われていたが、工事が順調に進み、すでに途中の大平台駅付近までは試運転も始められた。7月下旬には全線の運転再開を見込んでいる。