【近畿地方のおすすめローカル線】
近江鉄道 本線(米原駅〜貴生川駅47.7km)
元西武の「ガチャコン電車」が走る近江路は見どころいっぱい
近江鉄道は西武グループの一員ということもあり、西武鉄道から譲渡された車両が揃う。地元の人たちは「ガチャコン電車」、また「ガチャ」と呼び、近江路を走る電車に愛着を持っている。車歴が古い車両が多いせいなのか、走行音はそれこそガチャコン・ガチャコンなのだ。
近江鉄道の路線は米原駅〜貴生川駅(きぶかわえき)間を走る本線、高宮駅と多賀大社前駅間を走る多賀線、近江八幡駅と八日市駅を結ぶ八日市線の3本がある。そのうち、八日市線は利用者が多く、郊外路線の趣がある。ローカル色が強いのが本線と多賀線だ。
本線が走る地域は、ちょうど京都へ向かう旧街道ぞいにあたり、旧東海道の水口宿、旧中山道の愛知川宿(えちがわしゅく)、高宮宿、鳥居本宿(とりいもとじゅく)の4つの宿場が連なる。さらに豊臣政権の五奉行を務めた長束正家(なつかまさいえ)が城主だった水口岡山城趾、石田三成が築城した佐和山城趾も路線のすぐそばだ。ほかにも観光スポットが多いことも、この路線の魅力となっている。
ところが、滋賀県内ではクルマで移動する人が多い。近江鉄道もその影響を受けて、赤字経営が長年にわたって続く。存続か廃止かもたびたび取り沙汰されてきた。2020年3月に地元自治体と鉄道会社間の協議の結果が出て、自治体の支援を受けつつ存続することが決定している。観光利用を含め乗客を増やす有効策がないか、会社も自治体も苦悩しているのが現状だ。
叡山電鉄 叡山本線(出町柳駅〜八瀬比叡山口駅5.6km)
鞍馬線(宝ケ池駅〜鞍馬駅8.8km)
車両の中から京都近郊の美しい新緑や紅葉風景が楽しめる
「叡山電車」の名前で親しまれる叡山電鉄。起点の駅は京都市内、鴨川沿いにある出町柳駅(でまちやなぎえき)である。京阪電気鉄道の出町柳駅が地下にあるのに対して、叡山電鉄の駅は地上にある。叡山電鉄の車両は1〜2両と編成が短めで、それに合わせてホームが短い。駅舎もコンパクトだ。京都に市電が走っていたころには、同鉄道線に路面電車が乗入れていた、そうした名残が車両の大きさや短い車両編成として残っている。
路線は出町柳駅〜八瀬比叡山口駅(やせひえいざんぐちえき)間が叡山本線、宝ケ池駅(たからがいけえき)〜鞍馬駅間が鞍馬線と分けられる。とはいうものの両線の電車ともすべて出町柳駅の発着となる。異なるのは車両数で、八瀬比叡山口駅まで走るのは1両編成の電車のみ、鞍馬駅へは2両編成の電車が走る。
電車は通勤・通学の足として市民に活かされる一方で、鞍馬と比叡山口へ向かう観光客の利用も目立つ。ガラス窓が大きく眺望が楽しめる900系「きらら」や、700系732号「ひえい」といった個性的な電車も走り、乗る楽しさを加えている。新緑とともに紅葉時期は利用者が増える。特に鞍馬線の市原駅〜二ノ瀬駅間の「もみじのトンネル」が名高い。紅葉時期には同区間でライトアップが行われ、車内から染まるもみじを楽しむことができる。
JR西日本 和田岬線(兵庫駅〜和田岬駅2.7km)
オリジナルの姿を残した103系が朝夕走る名物路線
山陽本線の兵庫駅と和田岬駅を結ぶ和田岬線。正式には山陽本線の支線で、和田岬線はあくまで通称の路線名だ。途中駅はなく、乗車時間はわずか4分と短い。
存在すら忘れられそうな路線だが、鉄道ファンの注目度は高い。その理由は、103系が今も走っているから。103系といえば、国電として親しまれた国鉄形通勤電車の代表的な車両。関西圏、首都圏など、多くの路線を走り、日本の高度成長期を支えた。今はJR西日本の路線でわずかに走るのみとなっている。和田岬線を走る103系の車体色はスカイブルーで、初期タイプの姿を色濃く残している。
和田岬線はベイエリアにある工場へ通う通勤客が大半を占める。そのため日中は乗る人がいない。そのために朝夕のみの運行となる。平日は7時〜9時台に7往復、17時〜21時台に10往復する。土曜日は本数が減少、日曜・祝日は朝夕にそれぞれ1往復と、“わりきった”ダイヤだ。訪れるとしたら平日か土曜日の朝夕がおすすめとなる。なお103系の検査時には207系が使われるので注意したい。ちなみに沿線には川崎重工業の兵庫工場があり、和田岬線を使って新造車両の輸送が行われる。新旧、鉄道ファンにとって気になる車両が多く見られる路線なのである。