【中国地方のおすすめローカル線】
JR西日本 木次線(宍道駅〜備後落合駅81.9km)
中国山地内の路線。名物は2段式スイッチバックの出雲坂根駅
木次線(きすきせん)の起点は島根県の宍道駅(しんじえき)で、同駅で山陰本線と連絡する。終点の駅は広島県の備後落合駅(びんごおちあいえき)で芸備線と連絡する。渓流に沿い、山あいの狭隘な平地をたどり、中国山地に深く分け入って走る。
県境区間は、山岳路線といった様相。30パーミル(1000m走る間に30m上る)という急勾配を登る。途中、出雲坂根駅では2段式スイッチバックが体験できる。列車はまずは駅に入線する。ここで方向転換し、登り坂を走る。その先にある折り返し線で、再び方向転換してさらに登る。こうした行きつ戻りつを繰り返して、急な坂を徐々に登っていくのである。
木次線は山陰地方と山陽地方を連絡するいわゆる陰陽連絡線として造られた。だが、曲がりくねった路線やスイッチバック路線が災いし、スピードが出せず時間がかかる。全線を乗車すると3時間前後かかるほどだ。こうした不便さもあり、全線を通して走る列車は1日に2往復。しかも区間運休日がある(代行輸送あり)。逆にのんびり走ることを利用した観光列車が「奥出雲おろち号」(現在は運転休止中)だ。週末のみ1往復する。
同線は1980年初頭に「第2次特定地方交通線」に指定された。その時は「沿線道路が未整備」という理由で廃止を免れている。同じように中国山地を貫いて走った三江線(さんこうせん)は、すでに2018年3月いっぱいで廃線となった。木次線の行く末が危ぶまれる。
一畑電車 北松江線(電鉄出雲市駅〜松江しんじ温泉駅33.9km)
大社線(川跡駅〜出雲大社前駅8.3km)
山陰地方で唯一の私鉄路線。出雲大社へ行く時にも便利
島根県の宍道湖北岸に沿い出雲市と松江市を結ぶ一畑電車。北松江線が山陰本線出雲市駅に隣接する電鉄出雲市駅を起点に松江しんじ湖温泉駅まで。途中、川跡駅(かわとえき)と出雲大社前駅の間を大社線が結ぶ。出雲市駅から出雲大社、そして松江温泉方面へ行く時に便利な電車でもある。
一畑電車はレトロな車両、デハニ50形が近年まで走っていたことで鉄道ファンの注目度が高かった。デハニ50形は映画「RAILWAYS」にも登場した名物車両で、現在も雲州平田駅構内で動態保存され、一般の人向け体験運転用に使われている。そんな一畑電車も、最近は新型7000系、また元東急の1000系が導入されるなど、電車の入れ換えが活発になっている。とはいえ、宍道湖沿いをのんびり走る一畑電車らしい情景は変わりない。
ちなみに鉄道会社の名前となった一畑とは、出雲市の一畑薬師(総本山一畑寺)が元になっている。一畑薬師を目指した鉄道だったことから名付けられた。一畑駅という駅が参詣用に設けられたがすでに廃駅となっている。今は3kmほど離れたところに一畑口駅がある。この一畑口駅は一畑駅があった当時と変わらず、今もスイッチバック構造となっていて、全列車がこの駅で方向転換を行う。このあたりの経緯も非常に興味をそそるところだ。