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2020/6/21 18:30

 今も各地で活躍する「譲渡車両」に迫る〈元JR電車の場合〉

【注目の譲渡車両③】富士山麓を走る富士急行で205系が大変身

◆JR東日本205系 → 富士急行6000系

↑富士山を背景に走る富士急行6000系。元JR205系ながら改造が施され、車体も一新。その姿は別車両のように見える

 

205系といえば、国鉄の最晩年、1985年に誕生した電車。山手線をはじめ、首都圏を中心に多くの路線で活躍してきた。JR東日本の路線では今も武蔵野線など一部の路線に残る。

 

この205系を導入するのが山梨県を走る富士急行。同社では6000系と形式名も変更、デザイナーの水戸岡鋭治氏により車内外のデザインを一新した。例えば床材などフローリング、座席は車両ごとに異なるデザインにするなど、おしゃれな造りに変更されている。

 

すでに3両編成×7編成が導入され、富士急行の主力車両となっている。外観はブルーを基調とした基本仕様だけでなく、マッターホルン号、リサとガスパールトレイン、トーマスランド20周年記念号など、とさまざまなラッピング塗装が施され、沿線を華やかに彩る。

↑富士急行開業90周年記念車両として走る6000系。中間車を先頭車用に改造した車両でこれまでの6000系とは先頭の形が異なる

 

元となった205系は当初、幹線の通勤電車用に造られた。その後、支線での運行が増えるに従って、多くの編成が必要になり、中間車を先頭車両用に改造した車両(205系3000番台)が登場した。既存の205系とは前照灯が付く場所が異なり、スリムな印象となっている。

 

この3000番台をベースとした6000系が富士急行開業90周年記念車両として、2019年に加わった。渋めの金色ベースに富士山のイラストが入るシックな姿で、富士急行6000系の新しい一面を魅せている。

 

◆JR東海371系 → 富士急行8500系

↑8500系「富士山ビュー特急」。元JR東海371系とは思えないほど大きく模様替えされた

 

富士急行にはもう1車両、忘れてはならないJRからの譲渡車両が働いている。富士急行では8500系「富士山ビュー特急」として走る。この車両、元はJR東海の371系だった。371系は、新宿駅〜沼津駅間の小田急小田原線とJR御殿場線の相互乗り入れを行う特急形電車として開発、主に特急「あさぎり」として運行された。景色がよく見えるようにハイデッカー構造とされ、中間車は2階建てだったが、バリアフリー化の時代の流れもあり、早々に引退した。誕生してから23年ばかり、と特急形電車としては、短命な車両だった。

 

引退したのが2014年秋だったが、翌年に譲渡されたのが富士急行だった。ほぼ1年をかけて大改造。水戸岡鋭治氏にデザインにより、「富士山ビュー特急」として生まれ変わった。水戸岡氏流の色付けがなされた車内、1号車の特別車両ではスイーツプランを楽しむこともできる。

 

富士急行線は、週末に連絡するJR中央本線からE353系特急「富士回遊」、211系普通列車、E233系中央線など多くの列車が乗入れる。JR車両に加えて、JRからの譲渡車両の種類も多くバラエティに富む。車両は多様でいつ訪れても楽しい路線である。

 

【注目の譲渡車両④】往時を彷彿させる長野電鉄の元253系

◆JR東日本253系 → 長野電鉄2100系

↑信州を走る元253系。現在は2100系スノーモンキーとして親しまれている。長野電鉄の特急は運賃+特急100円で乗車できておトクだ

 

長野駅と湯田中駅を結ぶ長野電鉄長野線。地方の私鉄としては珍しい有料の特急列車が走る。かつては2000系といった、当時の私鉄の特急形電車としては時代の先端を行く優秀な車両を走らせていた。その後は利用客の減少もあり、自力での車両開発は難しく、他社から車両を譲り受けて、列車を走らせている。

 

特急列車に使われる車両は1000系と2100系。1000系は元小田急電鉄のロマンスカーHiSE(10000形)で、2100系は元JR東日本253系である。253系といえば、初代の特急成田エクスプレスとして活躍した特急形電車で、今も一部がリメイクされ、JR東日本の特急「日光」「きぬがわ」として走る。

 

一方、長野電鉄に譲られた253系は3両×2編成、長野電鉄の2100系となり、「スノーモンキー」というニックネームが付けられた。この2100系、以前の成田エクスプレスのカラーに近い。首都圏を走った成田エクスプレスが信州を走るとは、鉄道ファンとしてうれしいところだ。

 

【注目の譲渡車両⑤】さらに注目が集まるしなの鉄道の115系

◆JR東日本115系 → しなの鉄道115系

↑「長野色(2代目)」の115系が浅間山の麓を走る。115系は勾配路線用に開発された車両で、首都圏では中央本線や上越線などで活躍した

長野新幹線、その後の北陸新幹線の開業とともに誕生した、しなの鉄道。在来線の信越本線を引き継ぎ、軽井沢駅〜篠ノ井駅間がしなの鉄道線、長野駅〜妙高高原駅を北しなの線として運行を続ける。

 

走る電車は元JR東日本の115系。計59両が譲渡された。えんじ色をベースにしたしなの鉄道塗装車両以外に、多彩な「懐かしのカラー・ラッピング列車」を走らせる。グリーンとオレンジの「湘南色」、元横須賀線の車体カラー「横須賀色」。信越本線を走った「初代長野色」、2代目の「長野色」など6種類のカラーリングを施した115系が走る。毎月、「車両運用行路表」で、各車両の運行時刻と行路表を公式HPで発表している。115系好きにはうれしいサービスである。

↑「初代長野色」のしなの鉄道115系。1989年に登場のカラーで、長野冬期五輪が開かれた1998年以降は2代目「長野色」に変更された

 

しなの鉄道にも新しい時代が訪れている。7月4日からSR1系という新車を導入、有料快速列車の運行が開始される。SR1系は将来、2両×26編成、計52両が増備される予定で、今後は普通列車にも使われる予定だ。

 

東日本の115系は、しなの鉄道と、JR越後線などの新潟地区の一部に残るのみとなった。これらの車両も、今後、どのぐらい走り続けるか気になるところ。新潟地区の115系も、しなの鉄道の115系も、新車が増備されるに従って、徐々に減っていくことになりそうだ。あと数年後には東日本の115系は消えていく運命なのかも知れない。

 

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