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2020/7/12 18:40

2022年開業に向けて準備が進む「芳賀・宇都宮LRT」――新路線に沿って歩いてみた

【進むLRT事業③】なぜLRT導入が検討されたのか?

宇都宮市でLRT導入が、なぜ検討されたのか。そこには日本の国全体が抱える問題と、宇都宮市特有の問題が上げられる。ポイントを見ておこう。

 

全国で進む問題とは「少子・超高齢化」。国内では人口減少問題が避けられない。宇都宮市も2018(平成30)年度の52万245人をピークに微減に転じつつある。このままいけば、30年後には45万人まで市内の人口が減るという調査もある。

 

さらに高齢者が運転することによる事故も問題視されている。運転免許の返納率が高まっているものの、一方で高齢者が不便さから出かけづらくなり、家への「引きこもり」をもたらす可能性も指摘されている。

↑宇都宮市も全国の主要都市と同じようにクルマの利用者が多い。写真はLRTが通る予定の鬼怒通り(県道64号線)の陽東3丁目交差点

 

次に宇都宮市と隣接の芳賀町が抱える問題を見ておこう。

 

宇都宮市は東北新幹線・東北本線の線路を境に、東側と西側では街の様子が大きく異なる。西側には東武宇都宮駅があり、JR宇都宮駅と東武駅の間、約1.8kmの間に繁華街が連なる。西側はバス便も多く便利だ。

 

一方、今回の路線が通る駅の東側は、公共交通機関といえば路線バスのみで、不便だ。しかもバスの本数が少ない。そのため、東側に住む人たちはマイカーに頼らざるをえない。栃木県の自動車保有率は、全国で群馬県に次ぎ、2位という数字があるほどで、クルマ社会そのものだ。

 

さらに宇都宮市の東側には清原工業団地、隣接する芳賀町には芳賀工業団地、芳賀・高根沢工業団地といった工場群がある。学校も点在している。現在、JR宇都宮駅から工業団地への足は、企業が朝夕に走らせている貸切の通勤バスに頼っている状況だ。本数が限られ、朝夕しかバスが走らないために不便だ。工業団地への行き来はマイカー頼みという通勤者も多くなっている。

 

LRTの開業は、まず、高齢化しつつある街の活力を維持させるという大きな意味がある。さらにLRTが走れば、新たな公共交通機関が生まれるわけで、かなり便利になることが予想される。マイカーの自粛にも結びつく。高齢者の移動もしやすくなる。利点はさまざまで、その効果も大きい。

 

平日の利用者は1万6318人と見込まれており、こうした人たちが住まいから駅へ向かう一方で、駅から郊外の工業団地へ多くの人たちが使うことが予想される。

 

今回の概算事業費は2022年に完成する区間のみ全体で458億円、宇都宮市区間は412億円と試算されている。ちなみに国土交通省の「LRTの整備等に対する支援」では施設の整備等に対しては2分の1の国費が交付金として地方公共団体等に支給される。

 

【進むLRT事業④】LRTの新路線が走るルートは?

事業は「公設型上下分離方式」で進められる。レールや停留場などの諸施設の整備は宇都宮市、芳賀町が行う。

 

レール上を走る車両の運行、管理は宇都宮ライトレール株式会社の手により行われる。宇都宮ライトレールは第三セクター方式で経営される。

 

レールが敷設される予定路線をざっと紹介しておこう。起点となる「JR宇都宮駅東口」停留場は、JR宇都宮駅の東口に位置する。駅の東西自由通路の東側にほぼ直結するために便利だ。電車は駅の東側にある鬼怒通り(一部は県道64号線)へ入り、道路上を東側へ向かう。

 

商業施設の「ベルモール前」停留場付近までは県道上を走る。この先で、県道を逸れて、LRV(LRT用の車両)の専用区間を走行する。国道4号の新バイパスをくぐり、東進。鬼怒川を越える。越えた先には宇都宮清陵高校や、作新大学、清原工業団地などがある。この清原地区で、北へ向きを変える。

 

清原地区内には栃木県グリーンスタジアムもある。全国規模の大会の開催も可能なサッカー・ラグビー場である。最寄り停留場は清原工業団地北だ。

 

さらに北進、野高谷町交差点で、右折。ゆいの杜と呼ばれる地区を東へ走る。芳賀町に入ると芳賀工業団地が広がり、中核となるのがホンダの工場がある。管理センター前を北へ走ると芳賀・高根沢工業団地の本田技研工業の北門付近までをLRTが走る予定だ。所要時間は宇都宮駅から約44分、快速に乗れば約38分で到着する(一部の停留場を通過)。運賃は大人150円〜400円の予定だ(詳細は国の認可等を得て決定)。

 

【進むLRT事業⑤】LRT導入のお手本とした都市とされたのは?

LRT事業は、計画化するにあたって、LRTを上手く活かしている都市をお手本とした。そのお手本とされたのは、富山市などだ。

 

ここで若干、寄り道となるがLRTを活かしている富山市の例を見てみよう。富山市の人口は41万4705人(令和2年6月末現在)と、宇都宮市よりも少ない。同市内には、既存の路面電車網がすでにあった。富山地方鉄道の軌道線(市内電車)である。歴史は古い。創始は1913(大正2)年のことだった。

 

富山市内の路面電車は一時期、自動車の増加で、路線の廃止など、衰退を余儀なくされたが、近年になって路線の延伸を図るなど、路線網の充実が図られた。さらにJR富山駅の高架化工事に合わせ、駅の地上部分を南北に電車が通過できるように手直し。駅の北側を走っていた富山ライトレールの路線と軌道線の線路を結びつけた。今年の2月22日には富山地方鉄道が富山ライトレールを吸収合併、3月21日からは富山地方鉄道の電車と元富山ライトレールの電車が南北相互に乗り入れを行い、走りだしている。より便利になり富山市民にとってLRTは、日々欠かせない足となっている。

 

富山市では市が取りまとめ役となって整備が進められた。老舗民鉄に電車の運行を任せてしまうという、思いきった策を取り入れるなど、それこそ全国のLRT路線のお手本と言って良いかもしれない。

↑富山城趾を背景に走る富山地方鉄道富山都心線の電車。車両は9000形でセントラムという愛称が付く。2009年に導入された

 

福井市の例も興味深い。市内には福井鉄道の併用軌道線が走っている。その路線をたどると、南は専用軌道が越前市まで延びる。近年、低床の新型電車を導入した。2016年には福井駅停留場まで路線を延長、さらに北の田原町駅でえちぜん鉄道と接続、相互に電車の乗り入れを行う。えちぜん鉄道も併用軌道用の車両を開発するといったように、積極的なLRT化政策を進めている。

↑福井鉄道のF1000形FUKURAM(フクラム)。2013年からの導入でえちぜん鉄道の三国芦原線への相互乗入れにも使われている

 

北陸地方ではJR氷見線といった既存の鉄道路線のLRT化が取り沙汰されている。それだけLRTは利点が大きいということなのだろう。

 

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