〜〜さまざまな理由で誕生したJRの希少車〜〜
首都圏でオレンジ色の電車といえば中央線。“あれれ?”この電車、ふだん乗る電車と姿形が違う。このあまり見かけない珍しい電車は209系1000番台で、元は常磐線を走っていた。わけあって20両のみが中央線へやってきた。
今回はこうしたJRの「希少車」に注目した。調べてみると形式数は意外に多い。理由があって生まれた希少車。引退が取りざたされる車両も含まれる。そんなレアな車両に注目した。
*事業用車両および特急形車両・観光列車、機関車、また増備中の新型車両は除外しました。紹介した車両数は令和2年4月現在の情報です。
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【希少車に注目①】なぜ209系が中央線を走っているのか?
◆JR東日本209系1000番台 計20両(豊田車両センター)
中央線の通勤電車といえば車両のほとんどがE233系0番台。ところが朝を中心に見慣れない電車に出会うことがある。その電車が209系1000番台だ。現在、10両×2編成が走っている。
209系1000番台は1999(平成11)年、常磐緩行線用に造られた車両だった。常磐線では緑の帯を巻き、東京メトロ千代田線にも乗り入れた。地下鉄乗り入れ用ということで、正面に非常時用の貫通扉を設けているところが他の209系とは異なる。
すでに常磐線を走っていた209系1000番台は2018年10月に引退した。なぜその電車が中央線へやってきたのだろう。中央線を走るE233系はグリーン車2両を組み込み12両化する改造工事と、車内にトイレを付設する改造工事を進めている。改造工事のために工場に入ることが必要となり、そのために編成数が足りなくなる。 “応援部隊”が必要となった。その応援役として引退する予定だった209系1000番台に白羽の矢がたった。
中央線のグリーン車増結は当初の2020年度の予定から2023年度末に延びている。一方でE233系0番台の12年ぶりに増備がこの夏に行われた。209系1000番台はお役ごめんとなり、数年後には引退ということになりそうだ。
【希少車に注目②】2階建ての珍しい215系の気になる今後
◆JR東日本215系 計40両(国府津車両センター)
215系は東海道貨物線を利用して走る「湘南ライナー」や「湘南新宿ライナー」といった着席サービスを提供するために造られた電車だ。10両編成の前後車両を除く車両のすべて2階建て。グリーン車を2両はさんで走る。1992(平成4)年から1993(平成5)年に4編成のみ製造された。40両という数字は多いものの、実質的にはあまり走っていない“珍しくなりつつある電車”、そして引退が予想される電車のため今回は取り上げた。
座席定員を増やすための2階建て仕様で、座席定員は普通車で最大120名となっている。215系は211系をベースにして造られたが、211系の座席定員が60名前後ということを考えれば、2階建て仕様が功を奏したと言えるだろう。ところが、バリアフリー化という時代の流れもあり、また215系と併用される185系の方が運用しやすいなどの理由があり、徐々に運用から外れていく。
現在は朝夕に走る湘南ライナーの一部列車と、多客期に運転される中央本線の「ホリデー快速ビューやまなし」といった列車に使われるのみ。日中は東海道線の茅ヶ崎駅などの留置線に停められている姿を見かけることが多い。
湘南ライナーの特急化などの話も出てきている。稼働率が低い215系は、湘南ライナーが消えるとともに、引退となりそうだ。JR東日本では希少となってきた形式名に「E」が付かない電車だけに、ちょっと残念でもある。
【希少車に注目③】仲間が他社へ移籍する中で残された4両
◆JR東日本E127系0番台 計4両(新潟車両センター)
新潟県内の普通列車には、長い間、急行形電車が利用されていた。ところが乗降口が前後2か所のため、朝夕のラッシュ時の乗降に時間がかかり不評だった。こうした古参車両に代わりに1995(平成7)年に登場したのが3扉仕様のE127系だった。計24両が造られ20年ほど新潟市と郊外を結ぶ列車を中心に活用されてきた。ところが今は4両のみしか残されていない。なぜだろう?
2015年に開業した第三セクター鉄道・えちごトキめき鉄道に2両×10編成が譲渡されたからである。2両×2編成のみがJR東日本に残され、同社内では希少車となった。またE129系という後継車両の増備が進んでいることもあり、追いやられるように弥彦線などを走るのみとなっている。
ちなみにE127系には1000番台もある。こちらは長野県内の路線用で、松本車両センターに配属、計24両が大糸線、篠ノ井線などの路線で活躍している。緑ベースの0番台と比べて、水色主体の車体、さらに正面の周囲にフチがあるデザインで、0番台とはかなり異なる“顔立ち”となっている。