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2020/11/30 6:30

歴史好きは絶対行くべし!「近江鉄道本線」7つのお宝発見の旅【前編】

【お宝発見その⑤】鉄道史で欠かせない重要な試験電車を見ながら

今回は、途中駅のぜひ訪れてみたい歴史スポットを先に記述したが、ここから沿線のレポートをしていくことにしよう。特に沿線のお宝に注目したい。

 

近江鉄道本線の起点は米原駅である。米原は言わずもがなだが、交通の要衝の駅だ。東海道新幹線の滋賀県内唯一の駅、米原駅がある。東海中部・関西方面からは東海道線が、北陸方面から北陸線が合流する。よって、近江鉄道の電車だけでなく、JRの車両もJR東海、JR西日本、さらにJR貨物の電気機関車に牽かれた貨物列車が多く停車し、また出発していく。なかなか賑やかで、この様子も見ているだけでも楽しい。

 

近江鉄道のホームは一番、南側にあり、1・2番線ホームがある。面白いことにJR米原駅には1番・4番線がないが、これは近江鉄道のホームに1番を振り分けたわけでなく、あくまで1番は欠番で、貨物列車が通過する線路となっている。

↑近江鉄道本線の米原駅の2番線側から望む。すぐ横に米原湊跡の碑(左下)が立つ。鉄道開通までは琵琶湖への運河があり舟運で栄えた

 

近江鉄道の電車はJRに隣接する側の1番ホームから発車することが多い。下り列車は6時0分発〜22時51分発までで、平日は朝7時〜9時台1時間に2本、夕方17時台が1時間に3本。土・休日は7時〜8時台が1時間に2本、17時台が1時間に2本となる。行先は彦根行、近江八幡行、貴生川行と様々だが、割合として日中は貴生川駅行が、朝夕は彦根行、貴生川行が多めとなっている。

 

近江鉄道本線の全線で見ると列車は彦根駅〜近江八幡駅間が比較的、本数は多めだが、それでも日中は1時間に1本と少ない。そうしたパターンを考慮して、旅行する時は、行動予定を決めることが賢明と言えそうだ。

 

さて、米原駅を発車した電車はしばらく東海道線と並んで走る。右手には東海道線を走る貨物列車などが、発車待ちをする姿が見受けられる。そして左手には鉄道総合技術研究所の風洞技術センターがある。ここにはJRグループの歴史的な新幹線車両が静態保存されている。新車開発のために試作した試験車両たちで、近江鉄道の電車の中からも良く見える。通常はセンター内には立ち入ることができないが、秋の公開日には親子連れが賑わうところだ。

↑鉄道総合技術研究所・風洞技術センターに保存される試験車両。左からJR東海955形、JR東日本952形、JR西日本500系900番台が並ぶ

 

米原駅の次の駅はフジテック前駅で、駅名どおり企業の建物が近くに見える。電車は左手にほぼ国道8号に沿って走っている。この道こそ前述した中山道で、鳥居本駅のそばには鳥居本宿がある。

 

鳥居本駅を過ぎると、右カーブし、東海道新幹線の高架をくぐり、山中へ。そして佐和山トンネルと抜ける。トンネルを抜ければ彦根駅も近い。

 

【お宝発見その⑥】高宮駅、愛知川駅も中山道の宿場町そばの駅

彦根駅は左手に車両基地がある。ここには近江鉄道の事業用車を含めさまざまな車両が留置されている。かつては旧型電気機関車が保存され「近江鉄道ミュージアム」として週末を中心に公開されていたが、すでに2018年12月8日をもって閉館、保存されていた電気機関車も多くが残念ながら廃車となってしまった(詳細は次週に)。近江鉄道の彦根駅は1・2番線ホームがあり、彦根駅止まりの電車でも、対面するホームに、先へ向かう電車が停まっていることが多く、すぐに乗換えできて便利だ。

 

彦根駅を発車した電車は、しばらく東海道線と並走して走る。隣のひこね芹川駅(ひこねせりかわえき)は同線では最も新しい駅で2009(平成21)年に誕生した。次の彦根口駅で、東海道線から離れ左カーブ、高宮駅へ向かう。高宮駅は多賀線が分岐する駅だ。多賀線の紹介は、次週に行うとして、ここでは駅を降りてぶらぶらしてみよう。

↑高宮宿にある多賀大社の一の鳥居。1635年の建立で県指定文化財となっている。たもとには高さ6mの常夜灯があり13段の石段がある

 

高宮駅は降りたら200mも行かないところに旧中仙道が通る。そして駅に近いあたりが高宮宿にあたる。高宮宿は江戸から数え中山道の64番目の宿場町にあたる。高宮宿はなかなか盛況だったようで、19世紀中ごろには本陣1軒、脇本陣2軒、旅籠23軒があったとされる。特産品の麻織物、高宮布は近江商人によって商われ、出荷の拠点となっていた。同宿場町内には今も大鳥居が立つが、これは近江鉄道多賀線の終点駅、多賀大社前駅の近くにある多賀大社の一の鳥居だ。

 

さて高宮宿を散策した筆者。次の電車まで1時間をどう過ごそうか、悩んでしまった。駅で電車を待って過ごすよりも、昔の旅人と同じように、次の愛知川宿(えちがわじゅく)まで歩いてしまえと考えた。そして歩き始めたのだが。

 

近江鉄道本線の高宮駅から愛知川駅(えちがわえき)の間には途中に尼子駅(あまごえき)、と豊郷駅(とよさとえき)と2つの駅がある。距離はちょうど8kmあった。宿場町の距離もほぼ同じで、約2里にあたる。さて、簡単に8kmというものの、歩けど歩けど、次の宿場らしきものはない。まさに後悔先に立たず。だが、一つ勉強もできた。

 

旧中山道の途中にある豊郷町(とよさとちょう)でのこと。伊藤長兵衛屋敷跡という立派な石碑が立っていた。この碑文を読んでいると、伊藤忠兵衛という人物の実家だった。さらに読むと伊藤忠兵衛なる人物は、伊藤忠と丸紅という2つの大手総合商社の創業者だったのである。伊藤忠という会社名は伊藤忠兵衛が立ち上げた会社だったからだった。

 

地元の高宮も麻織物が特産とある。伊藤忠兵衛は、こうした麻布類や織物に注目して扱い、そして財をなしていった。無謀だと思えた宿場町歩きにより、近江の宿場と、中山道、伊藤忠が結びついていたことを知った。晩年、伊藤忠兵衛は故郷、現在の豊郷町(当時は豊郷村)の村長も務めた。旧中山道沿いには伊藤忠兵衛記念館もある。近江商人の一人が起業し、その意思を引き継いだ人たちによって世界的な企業に育てられていったわけである。

↑高宮駅の南から愛知川駅まではほぼ東海道新幹線と平行して走る。新幹線の車内からも眼下に近江鉄道本線の電車が良くみえる

 

高宮宿から65番目の中山道、愛知川宿までは約8kmの道のり。約2時間かけて歩き通したが、後で振り返れば実りある時間だった。ウォーキングの気分で歩いてみてはいかがだろう。

 

ただし、旧中山道は国道8号の裏道として、通行するクルマが多い。細い通りを制限以上のスピードで飛ばす車両もあって、このあたりだけがあまりの気持ちの良いものではなかった。通過するクルマには充分に注意して歩いていただきたい。

↑愛知川宿には写真のようなゲートがある。同宿場では「びん細工手まり」という愛知川宿独特の伝統工芸品が造られている

 

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