航続距離が大幅にアップしたモデルが多く登場し、購入時に受けられる補助金制度も充実。2021年は改めてEVを見直す機会となりそうだ。おさえておきたいトピックを3つほど挙げて解説していこう。
【解説してくれた人】
カーITジャーナリスト・会田 肇さん
自動車雑誌編集職を経てフリーに。カーナビやドラレコのほか、自動運転やMaaSなど次世代モビリティにも詳しい。
【その1】航続可能距離 超アップ
EVで不可欠なのがバッテリーへの充電。だが航続距離が600㎞を超えるモデルも登場予定で、長距離ドライブでは必須だった“充電のための休憩”が不要になる。
新型EV「アリア」なら東京〜大阪間も無給電走行
世界中で進む電動化の波は、一気にEV普及を後押ししそうだ。これまでEVは走行中の環境負荷が低いとされる一方で、航続距離が課題となってファーストカーには使いにくいという一面を持っていた。その課題が航続可能距離の延長で解決される見込みとなってきたのだ。
なかでも注目なのが2021年夏に日産が発売するEVアリアで、航続可能距離はなんと最大で610㎞! 東京〜大阪間を途中の充電なしで走行可能としている。いままでEVの航続距離の短さゆえにPHEVにするか迷っていた人も、アリアの登場で踏ん切りがつくはずだ。
また、海外メーカーのEVも続々とデビューしているが、大容量駆動用バッテリーの搭載などで航続可能距離が増加。アウディのeトロン スポーツバックやメルセデス・ベンツのEQCはいずれも400㎞以上の航続距離を誇る。
それでも万が一の“電欠”に不安を抱く人もいると思うが、国内の充電スポットは急速/普通充電を合わせればいまや約3万基と、施設数だけを数えればガソリンスタンドと同等。アリアの航続距離をもってすれば、EVで長距離ドライブする不安はもはや解消されたと言っても良いだろう。“充電のための休憩もドライブのうち”と言い訳をしていたが、2021年はそれも過去の話となるのだ。
【ネクストヒットの理由】ハイブリッドも含む現実的な対応を目指す日本の電動化
一気に動き出したクルマの電動化の背景には、2050年までに温室効果排出ガスをゼロにするという政府目標がある。日本はハイブリッド車も含み、欧州とは違って完全な“脱エンジン車”とはしない。EVと共に現実に即して柔軟に電動化するのが日本ならではの考え方だ。
【その2】補助金制度が充実
EVの普及を推し進めるべく、国や地方自治体からの補助金制度が充実。上手に活用すれば、EVは高いクルマという認識は払拭される。また、リースモデルも充実しつつあり、法人向けの選択肢も増えそうだ。
EVはエコカー減税と補助金で大きなメリットあり!
マイカーをEVにすると「次世代自動車」として、特に金額面で大きなメリットが与えられる。それは補助金とエコカー減税だ。購入時には補助金が国や自治体から支給(原則4年間は売却できない縛りあり)。またエコカー減税は自動車税と重量税、環境性能割に適用されるほか、重量税に限っては初回車検時も免税となる。さらに電気を使うことで、53.8円/Lのガソリン税を支払うこともない。これは長い距離を走るほどメリットに繋がるはずだ。
企業などではリースを活用するという手法も!
昨今注目されているSDGsなど企業の社会的責任(CSR)のひとつとして、環境問題への取り組みが重要視されている。EVの導入に際しそのコストの負担軽減を図るべく、リース契約での利用が注目を集めている。
【日産 リーフ Sの場合の補助金例/車両本体価格:332万6400円】
■国からの補助金「42万円」
「クリーンエネルギー自動車導入事業費補助金」として補助を受けることが可能。車種によりその金額は異なるが、リーフの現行モデルなら最高額の42万円を支給。
■自治体からの補助金(都道府県など)「30万円」
EVなどの次世代環境対応車の普及を積極的に推し進める東京都の場合、最大で30万円を補助。その額は都道府県で異なるので調べてみるのが良い。
■自治体からの補助金(市区町村など)「10万円」
都道府県とは別に市区町村で独自に補助金制度を設けている場合もある。東京都江東区や足立区の場合、最高で10万円の補助を受けられる。
【最大82万円補助で、実質車両本体価格250万6400円に】
【ネクストヒットの理由】
再生可能エネルギーで充電すれば補助金が倍増!
2050年までの温室効果排出ガス排出ゼロを目指す政府が、EVの一層の普及を目指しその補助金を倍増する方針を固めた。太陽光発電など再生可能エネルギーによるEVへの充電が条件となるが、普及の加速が期待できる施策だ。
【その3】進化する充電インフラ
EVの普及には欠かせない充電設備。まずは充電のスピードアップ、そして普及への最大のネックと言える集合住宅への充電設備の設置が普及のカギを握る。
普及してきたいまこそ充電設備の進化と拡大が必要
EV普及のカギは、航続距離と補助金制度の充実に加え、充電設備の充実にある。EVが増えたいま、高速道路の充電スポットでは“充電待ち”の車列ができることも。そこで期待されるのが、より短時間で充電可能な充電器の普及だ。最近は日本国内で最大の100kwの出力を持つ充電器も登場。充電時間の短縮化が期待される。
都市部では6割を超える集合住宅での充電設備の設置普及が模索されるなか、充電設備の完備をウリにする新築マンションも増加。既設マンションへの設置を推進するサービスも増加している。
【ネクストヒットの理由】
充電設備の機能向上と拡大が一層のEV普及を後押しする
EVの充電スポットは2020年8月現在日本全国で約3万100基で、これからも当然増加予定。長距離ドライブ時にはより早く充電可能な充電器の普及と、居住形態に左右されない充電設備の拡充が、EVの普及を一層後押しする。
【コレがトレンドの兆し!】
既設の集合住宅での充電器設置も拡大していく
設置費用の負担や運用管理など、集合住宅への充電設備設置のネックを解消するサービスが開始されている。管理組合の承諾や住民の総意が必要で、既設住宅では困難な充電設備の設置が進む契機として期待される。