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2021/2/25 20:30

2021年これから消えていく? 気になる車両を追った【後編】

〜〜2021年に消滅が予定されている車両特集その2〜〜

 

前編で紹介したように2021年は多くの車両が消え、また消えていきそうな気配である。

 

残念なことに、鉄道会社は「さよなら運転」はもちろん、騒動を避けるために引退日を発表しない傾向が強まっている。知らないうち、気付かないうちに消えていく車両が多くなってきた。後編では東日本の車両、そして貨物用機関車の中で消えていきそうな車両を追っていきたい。

 

【消える車両その⑥】JR東日本最後の国鉄型気動車になる?

◆JR東日本キハ40系気動車

↑日本海を見ながら走るキハ40系。長年親しまれてきた風景もこの春からは見られなくなりそうだ

 

JR東日本から長年親しまれてきた国鉄形気動車が消えていく。形式名はキハ40系。国鉄が1977(昭和52)年から5年にわたり計888両を製造した、いわば非電化区間の標準車両というべき気動車だった。全国の非電化区間で40年にわたり活躍し続けてきた。JR化後も各社に引き継がれ走ってきたが、すでにJR東海からは全車が消え、この春で、JR東日本からも消滅することとなった。

 

◆東日本最後の活躍の場となった五能線・男鹿線

JR東日本では日本海沿いの路線を中心に、多くのキハ40系を使ってきた。ところが、新型GV-E400系気動車を開発し、まずは新潟地区のキハ40系が引退となった。さらに秋田車両センターに配置されていたJR東日本最後のキハ40系に代わり、GV-E400系と蓄電池電車HB-E301系の増備を進めている。

 

この増備により、五能線、男鹿線、一部奥羽本線を走ってきたキハ40系はこの春で消えることになる。ただ、JR東日本のキハ40系全車が消えるわけではない。JR東日本の観光列車「越乃Shu*Kura」、「リゾートしらかみ(くまげら編成)」としてキハ40系が使われている。こちらはしばらくの間は走り続けそうだ。またJR北海道、JR西日本、JR九州、JR四国(20両と少量)のキハ40系はかなりの車両数が残っており、こちらを含めて完全引退はまだ先となりそうだ。

 

【消える車両その⑦】客車を気動車に改造した珍しい車両

◆JR北海道キハ141系(キハ143形)気動車

↑苫小牧駅構内に停車するキハ143形。50系客車を気動車化したユニークな生い立ち。現在は室蘭本線の普通列車として運行されている

 

国鉄からJRとなるちょうど同じ時期、ローカル線の輸送は、まだ機関車が牽引する客車列車が走っていた。晩年の客車列車用に50系客車という軽量タイプの客車が大量に使われていた。この50系客車に運転席を設け、エンジン、制動機器などを積み、気動車化し、生まれたのがキハ141系だった。1990(平成2)年のことである。北海道の札沼線の輸送力増強のために設けられた形式だった。

 

さらに1994(平成6)年には、キハ150系と同様の駆動システムを搭載して強化したキハ141系の一形式、キハ143形が生まれた。このキハ143系が今も苫小牧運転所に配置され、室蘭本線の普通列車に利用されている。

 

◆この春に消えるのはキハ40系かキハ143形か

長年、走り続けてきたキハ143形だが、この春に室蘭本線に大きな動きがある。新型H100形気動車が導入されるのだ。室蘭本線では苫小牧駅〜室蘭駅間、東室蘭駅〜長万部駅間を走ることが発表されており、時間短縮の効果があるとされる。

 

この導入に合わせて室蘭本線を走る既存車両の置き換えが行われることになる。置き換えされるのがキハ40系なのか、キハ143形なのだろうか。キハ143形はすでに10両まで減っている。苫小牧運転所にはキハ40系が24両(車両数はともに2020年4月1日現在)残るが、どちらの形式に影響が及ぶのか気になるところだ。

 

ちなみにキハ143形とは同形のキハ141系がJR北海道からJR東日本に4両譲渡されている。「SL銀河」用の客車として活かされており、もしJR北海道のキハ143形が引退となったとしても、同形式がわずかだがJR東日本に残ることになる。

 

【消える車両その⑧】高性能すぎて小所帯となった国鉄形気動車

◆JR九州キハ66・67系気動車

↑大村湾に面した千綿駅に到着するキハ66・67系。写真のシーサイドライナー色など3通りの車体色で親しまれてきた

 

山陽新幹線が博多駅まで延伸されるのに合わせて開発された気動車がキハ66・67系。小倉駅や博多駅から筑豊方面への連絡する列車を、より快適化するために開発された。それまでにない意欲的な設計思想が認められ、鉄道友の会からローレル賞を受賞している。とはいえ、車両が生まれた当時、国鉄の財政事情は悪化しつつあり、車両費が高価なこと、また車両自体の自重が過多で、ローカル線での運用が難しいことなど、マイナス面がありわずかに2両×15編成、計30両のみの製造に終わった。

 

筑豊本線、篠栗線で運用された後に、長崎へ移動。長崎駅〜佐世保駅間の大村線、長崎本線の列車に約20年にわたり使われ続けた。

 

◆YC1形の増備に合わせて徐々に消えていくことに

現在、長崎駅〜佐世保駅間の列車、とくに大村線内での運用が多い。JR九州では、大村線のキハ66・67系をYC1系ハイブリッド型気動車へ、徐々に置き換えを進めている。2020年12月末現在で9編成がすでに引退になっている。まだ正式なキハ66・67系の引退はアナウンスされていないが、新車両の増備に従い、順次置き換えということになりそうだ。

 

【消える車両その⑨】ライナーの仕事も消え危うい2階建て電車

◆JR東日本215系電車

↑早朝に湘南ライナーとして東海道貨物線を走る215系。2階建て仕様がずらり連なる迫力ある姿でおなじみとなっている

 

2021年春のダイヤ改正で消える予定の東海道本線を走る「湘南ライナー」。1986(昭和61)年11月1日のダイヤ改正時から走り始めた列車である。座席定員制の有料快速列車で、座って通勤ができることから、登場後たちまち人気の列車となった。その後に湘南新宿ライナー(現在のおはようライナー)、ホームライナーが生み出されるなど好調な運行を続けてきた。誕生当初は185系のみの運用で、なかなかチケットが購入できないまでの人気となっていた。

 

そこで座席定員を増やすために1992(平成4)年に生まれたのが215系だった。東海道本線の普通列車として走っていた211系の2階建てグリーン車をベースに利用し、前後先頭車を除く中間車すべてが2階建てという“画期的”な構造の電車でもあった。

 

◆3月13日のダイヤ改正で運用終了に?

215系は10両×4編成、計40両のみが造られた。2階建てという造りが好評で、一時期は、快速アクティーにも使われた。しかし、2扉のみで乗降時間がかかることから、現在は朝晩のライナーのみの運用となっている。東海道本線の列車以外にはホリデー快速やまなしとして中央本線を走る臨時列車としても活用された。

 

湘南ライナーやおはようライナー、ホームライナーは、すべて3月12日までの運転となる。3月13日からはライナーという列車は消え、特急「湘南」として朝晩に運行される。利用される車両はすべてE257系に変更となる。そのためほぼライナー専門で活用されていた215系は、“職場”がなくなってしまう。3月13日以降、215系の運命は? JR東日本からの発表はないものの、この春で消えることになりそうだ。30年近い車歴をもつものの、稼働率が低かったため、まだまだ老朽化したとはいいがたい。何らかの形で活かせないのだろうか、というのが筆者の切ない思いである。

 

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【消える車両その⑩】いよいよ2階建てMax新幹線が消えていく?

◆JR東日本E4系新幹線電車

↑新幹線最後のオール2階建て車両となりそうなE4系。2編成連ねた姿は迫力そのもの

 

E4系は国内で唯一の2階建て新幹線である。生まれたのは1997(平成9)年10月のこと。当時、新幹線を利用しての通勤需要が高まっていた。JR東日本ではそれまでE1系という2階建て新幹線を走らせていた。このE1系には、高速走行時の騒音などに問題があり、そのためにロングノーズのE4系が生み出された。

 

全車2階建て車両で、8両編成ながら、2編成を連結した16両で走る時の定員数は1634人となる。高速列車で世界一の定員数としても話題となった。列車名に「Max」と付け「Maxたにがわ」「Maxとき」の名前でも親しまれてきた。

 

そんなE4系だが、最高運転速度は240km/hと他の新幹線車両に比べると遅い。高速化を進める時代背景もあり、そのためまずは東北新幹線の運用から外れ、近年は上越新幹線のみの運用となっている。JR東日本としては上越新幹線の高速化を図るためE4系の早期引退を計画していた。上越新幹線向けにE7系の導入も進められていた。

 

◆水害の影響で多少の延命がなったものの、この秋に引退に?

2012年度から順次、E4系を廃車するという計画があり、当初は2016年度で全廃になるとされた。しかし、廃車計画は延びて2020年度末までとなった。

 

ところが、2019年10月に起きた令和元年東日本台風により、長野新幹線車両センターに停めてあったE7系とW7系の12両×10編成が水没してしまう。この計120両全車が廃車となってしまった。

 

減車を余儀なくされたE7系だが、補充は順調に進み北陸新幹線の分はすでにまかなえ、また上越新幹線用のE7系の増備分の製造も順調に進んでいるとされる。E4系の当初の廃車計画はわずかに延びたものの、2021年の秋には本当の引退となりそうである。廃止が、1度ならずとも2度にわたり延びたという、いわばE4系は“幸運”な車両となったようだ。

 

【消える車両その⑪】非電化区間のエースだったディーゼル機関車

◆JR貨物DD51形式ディーゼル機関車

↑関西本線を走るDD51形式ディーゼル機関車857号機。JR貨物に最後まで残った車両のうち唯一100番台のナンバーを持つ車両となった

 

DD51形式ディーゼル機関車の歴史は古い。最初の車両は1962(昭和37)年の製造で今から約60年前のことになる。DD51が誕生するまでに、複数のディーゼル機関車が「無煙化」のため生み出されたが、非力なうえ、整備にも手間がかかった。

 

対してDD51は幹線用主力機として生み出されたディーゼル機関車で、性能面でも問題が少なく走行も安定していた。中央に運転室がある凸形の車体というユニークな姿で、本線での運用、さらに駅での入換えが可能など、非常に使いやすい機関車だった。16年にわたり製造が続き、計649両が造られた。国鉄からJRへ移る時にも259両が引き継がれた。

 

◆愛知機関区の最後のDD51が運用終了に

259両のうちJR貨物に引き継がれたのは137両だった。その後、DF200形式などのディーゼル機関車が新造され、徐々に両数が減っていく。ちょうど10年前の2011年2月末の車両数を見ると56両までになっていた。いま稼動している車両はすべてが愛知機関区への配置される車両で、最新の運用状況を見ると857号機、1028号機、1801号機の3両しか稼動していない。その運用も一部がすでにDF200形式が代行するなど、DD51形式の運用は減りつつある。さらにDD200形式が6両増備される予定で、DD51の仕事はDF200やDD200に引き継がれる。

 

残るDD51はJR東日本とJR西日本のみとなる。無煙化に貢献した名機も終焉が近づいているといって良さそうだ。

 

【消える車両その⑫】鉄道ファンがやきもきEF64形0番台の動き

◆JR東日本EF64形電気機関車

↑レール輸送を行うチキ車両を牽引するEF64形37号機。渋い茶色の塗装で国鉄形らしい重厚な趣を保っている車両として人気がある

 

最後は、引退かまた現役続行かで、情報が錯綜している電気機関車の情報に触れておこう。ある鉄道関連ニュースで2021年2月4日に「EF64形電気機関車37号機」がラストランを迎えたという情報が流れた。追随する形で、複数のニュースサイトで情報が流された。その後に同ニュースがJR東日本の高崎支社に問い合わせをしたところ、まだ引退は決定していないとして訂正記事が配信されている。

 

国鉄形直流電気機関車の代表的な存在でもあるEF64形。後期タイプの1000番台はJR貨物を含めて今も多くが残存している。だが、基本番台と呼ばれる初期タイプはJR東日本に残る37号機のみだ。それだけに注目度が高い。

 

鉄道ファンが特に注目しているのが、EF64形37号機が所属する高崎車両センター高崎支所の機関車たちの動向であろう。ここにはEF65形直流電気機関車の501号機という「P形」と呼ばれる500番台唯一の車両が残っている。希少な機関車が配置される機関区なのである。同機関区の機関車は、旅客列車で使われるのは「ぐんまよこかわ」といった一部の列車のみ。主要な仕事は事業用車両として、レール運搬やバラスト輸送、そして新車を牽引する配給輸送などに限られている。

 

◆新型事業用車の導入で残る機関車たちはどうなる?

注目される高崎車両センター高崎支所の機関車はすべて国鉄時代に生まれた車両ばかりだ。そのためにJR東日本でも後継用の車両の導入を始めている。

 

レール輸送、バラスト輸送などの保線用としてJR東日本では、定尺レール輸送用、ロングレール輸送用それぞれ用のキヤE195系の導入を進めている。

 

さらに砕石輸送用電気式気動車のGV-E197系の導入もこの春に始まった。さらに交直流電化区間に対応したE493系を導入も行う。このE493系は回送列車の牽引用として使われる予定だ。GV-E197系は高崎エリアへの導入される予定で、この導入により、機関車・貨車特有のメンテナンス方法や運転操縦を廃し、効率的なメンテナンスが可能になるとしている。こうした車両は現在、事業用車両として働く国鉄形機関車の入換え用にほかならない。

 

一応、2月の引退はないとされたEF64形37号機ながら、EF65形501号機を含めて、今後の新事業用車両の増備次第では、危ういことは確かなようである。