「TYPE R」はクルマを操る“楽しさ”を味わえる
6速MTのシフトを操作してクラッチをつなぐと、外観や排気音からすると拍子抜けするほどスムーズに走り出せます。街中を走らせていても乗り心地はかなり快適。マイナーチェンジ前のモデルよりもサスペンションのゴツゴツ感はやわらいでいる印象で、アダプティブ・ダンパー・システムの制御が緻密になっていることが、低速域での乗り心地にも効いているようです。
このマシンにはCOMFORT、SPORT、+Rの3つの走行モードがありますが、特にCOMFORTモードでの快適性が向上している印象でした。とはいえ、COMFORTといえども操作に対するダイレクトなレスポンスはスポーティーなクルマ並み。SPORTモードでは本気のスポーツカーになり、+Rモードではレーシングカーに変貌するという印象です。
混み合った街中を走っても、一昔前のスポーツカーのようにストレスを感じることがないのは、現代のスポーツマシンらしいところです。とはいえ、このマシン本来の性能の一端が感じられるのは高速道路やワインディングに足を伸ばしてから(“本領”を発揮するには、サーキットに持ち込まなければなりませんが)。とにかく操作に対してダイレクトにクルマが動いてくれるので、操るのが楽しくて仕方ありません。
高速道路を制限速度内で走っていても、アクセルやブレーキに対する反応が俊敏なので意のままに車体を動かすことができます。気持ち良く変速できる6MTの操作感もこれに一役買っていて、ついつい必要ない変速をしてしまうほど。コーナーではブレーキングからステアリングを切り込むと、スパッとノーズが入って思い描いたラインに乗ってくれます。そこからアクセルを踏み込んでも、ハイパワーなFF車にありがちなアンダーステアが顔を出すこともなく、むしろイン側に引っ張られるような感覚。荷重をかければかけるほどタイヤがしっかりと路面を掴んでくれるようで、ついついスピードを上げてしまいそうになります。
公道での試乗だったので、このマシン本来の性能を味わうことはできませんが、その一端を感じるだけでも十分に刺激的でした。ワインディングでの試乗後はうっすらと汗ばんでいたほどで、クルマを操るのがスポーツというか一種のアクティビティであると感じられたほど。マニュアルの変速操作はもちろんですが、ステアリングやアクセル操作に対してクルマがリニアに反応する楽しさ、そしてサスペンションやステアリングから伝わってくる情報が脳を刺激する気持ち良さを味わうことができました。
純粋にこのマシンの“速さ”に惹かれる人も多いのでしょうが、こうしたクルマを操る“楽しさ”を味わいたくて「TYPE R」を選んだ人も少なくないのではないでしょうか。実際にステアリングを握っている間は、パソコンやスマホに向かっているときとは違う脳の回路がつながっているような感覚があり、それこそがこの時代にスポーツマシンを選ぶ価値なのではないかと思います。
SPEC【TYPE R】●全長×全幅×全高:4560×1875×1435mm●車両重量:1390kg●パワーユニット:1995cc直列4気筒DOHC+ターボ●最高出力:235kW[320PS]/6500rpm●最大トルク:400N・m[40.8kgf・m]/2500〜4500rpm●WLTCモード燃費:13.0km/L
撮影/松川 忍
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