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2021/7/18 10:30

首都圏の大手私鉄で増えている!? レア&リバイバル塗装車両を徹底ガイド【後編】

【レア塗装車その⑥】気になるレトロ塗装車が3路線を走る

◆東急電鉄・東横線5000系“青ガエルラッピング”

↑東急東横線の名物電車5000系“青ガエルラッピング”。当初は90周年のヘッドマークを付けて運行、その後に外されたものの今も運行を続ける

 

東急電鉄も、レア&リバイバル塗装の宝庫だ。東横線と、池上線・多摩川線をレア塗装車両が走る。東急東横線が5000系と5050系、東急池上線・多摩川線では1000系にラッピング塗装が施されている。

 

まずここでは東横線を見ていこう。東急電鉄では5000系が東急の“標準車両”とも言える電車だが、路線ごとに形式名が異なる。まず基本となった田園都市線用が5000系、東横線が5050系、そして目黒線用が5080系となっている。ここには例外があり田園都市線用の5000系は一部が東横線へ転用されている。この転用された5000系5122編成が通称“青ガエルラッピング”塗装車となった。

 

緑色で独特な姿形から“青ガエル” と呼ばれた初代5000系を起源とする塗装色だ。“青ガエルラッピング”塗装車は東横線が開業90周年を記念して2017(平成29)年9月から走り始めた。当初は1年の予定だったものの、好評につき期限は徐々に伸びていき、すでに4年目となる。人気なだけにあえて変更する必要もないということなのだろう。

 

◆東急電鉄・東横線5000系「Shibuya Hikarie号」

↑ゴールドをベースにしたラッピング車「渋谷ヒカリエ号」。すでに走り始めて8年を迎えている。写真は西武池袋線での運用シーン

 

東横線の青ガエルラッピングとともに名物車両となっているのが「Shibuya Hikarie号」。渋谷駅近くにある商業施設の「渋谷ヒカリエ」の1周年記念プロモーション用に5050系4000番台(4010編成)が“特別車両”として新造された。2013(平成25)年4月からの運行で、ゴールドをメインカラーでラッピングされている。

 

車内にもひと工夫が見られる。シートの色分け、天井部の色づかい、吊り手に8色を採用するなど、賑やかな造りとなっている。さらに編成に1箇所のみ「キラリと光るハートマーク」を手すりに刻印。“見つけると幸せになれるかもしれない”というメッセージ性を持たせている。

 

このラッピング編成は、各社のレア&リバイバル塗装車と比べて、かなり手の込んだ造りにしている。すでに8年目となり、長生きなレア車両となっている。東横線内だけでなく、東京メトロ副都心線、東武東上線、西武池袋線、また横浜高速みなとみらい線へ乗り入れていて、そのPR効果は絶大なようだ。

 

◆東急電鉄 池上線・多摩川線1000系「緑の電車」

↑東急多摩川線を走る1000系「緑の電車」。この1000系は、他の車両と異なり中央に貫通扉が設けられている。その理由は?

 

東横線とならび、レア&リバイバル塗装が目立つのが池上線・多摩川線系列だ。同路線には2編成のリバイバル塗装車が走る。

 

まずは1000系の緑一色の3両編成で「緑の電車」と呼ばれている。「池上線活性化プロジェクト」の一環として、この編成は2019(平成31)年11月25日から走り始めた。“なつかしさ”を感じる旧3000系「緑の電車」にちなみ、1013編成が緑一色のラッピング塗装に変更された。旧3000系は1989(平成元)年まで走り続けていた緑色の名物車両である。

 

この編成、同線を走る1000系とやや異なっている。通常の1000系の正面を見ると、貫通扉が中央からややずれたところにあるが1013編成の前後両側の車両、クハ1013号とデハ1312号車とも、中央に貫通扉がある。なぜなのだろう。

 

同車は当初、東横・目蒲両線用に8両編成として造られた。4両×2編成に分割できるように、クハ1013号とデハ1312号の中央部に貫通扉を設けて連結が可能にしていた。その後、池上線・多摩川線用に3両編成化した際に、中央に貫通扉がある車両同士を前後にするために組み換えを行った。そのためにこの編成のみ、貫通扉が中央となった。ほかの1000系と組み合わせなかったのは、運転士の操作ミスを防ぐため。貫通扉の位置により、運転室の機器の配置が異なるそうである。

 

同編成をよく見ると中央に貫通扉を持つとともに、通常は中間車側の連結器部分に白ペンキで書かれる「形式」「自重」「定員数」などの表記が、先頭車側にある。以前は中間車だったのですよ、という整備スタッフからのメッセージであるようにも受け取れておもしろい。レア塗装であるとともに、車両の造りや塗り方にもこだわりが感じられる。

 

◆東急電鉄 池上線・多摩川線1000系「きになる電車」

↑池上線・多摩川線を走る1000系「きになる電車」。濃紺と黄色のツートンカラー、側面には「T.K.K」のロゴが入る

 

池上線・多摩川線にはもう1編成、リバイバル塗装車が走る。名前は「きになる電車」。それこそ気になる電車だ。濃紺と黄色のツートンカラーのボディ。側面には「T.K.K」のロゴが入る。T.K.Kとは、東急電鉄の前の会社名、東京急行電鉄株式会社(Tokyo Kyuko Kabushikigaisha)の略称で、ひと時代前の東急の電車には、この略称が車体に入っていた。また濃紺と黄色のカラーは1951(昭和26)年から1966(昭和41)年まで池上線と旧目蒲線を走っていた電車色なのである。

 

同列車は内装も凝っていて室内は木目調、吊り手も木製で職人が手作業でつくったもの。室内のライトも電球色のLED照明となっている。

 

◆東急電鉄 世田谷線300系「幸福の招き猫電車」

↑世田谷区内を走る東急世田谷線は沿線の花が美しい路線でもある。レアな「幸福の招き猫電車」が花の中を走る

 

世田谷線は、東急電鉄の路線の中でも異色の路線だ。元は路面電車の玉川線で、他線は廃止されたものの、三軒茶屋〜下高井戸間のみが残った。走る車両は路面電車タイプで、300系のみ。2両連結の10編成が走る。すべて車体色が異なり、みなレア塗装と言えるだろう。

 

ここでさらにレアなのが招き猫電車だろう。正式名称は「幸福の招き猫電車」。沿線にある豪徳寺が招き猫発祥の地で、2017(平成29)年9月25日から玉電開通110周年を記念して生まれた電車だ。ちょうど1年後の2018(平成30)年3月までの限定で運転された。

 

この「幸福の招き猫電車」が、今度は世田谷線50周年記念企画の一貫として2019(平成31)年5月から運行再開されている。新たな「幸福の招き猫電車」は、前回に比べてさらにパワーアップして、正面部分には耳が付けられた。もちろん車内の床面には猫の足あとが、吊り手も招き猫にちなむ形に。今回は1年のみならず、現在も走っている。どうも世田谷線に欠くことができない名物車両となってしまったようだ。

 

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